深海

奥田民生『ひとり股旅』観賞。このDVDはすごく見てる。広島市民球場のヤツよりも、ごゆるりとしていて好き。向こうはかなり緊迫した雰囲気があったけども、こっちは酒を飲みながら、たばこを吸いながらやってるからね。やはりロックというヤツはすこしルーズな方がいい。もちろんナンバガとか見たいにギチギチに緊迫したヤツも好きだけど、ストーンズフェイセズビートルズもビートはダラダラしておりますし、奥田民生はその先人達のダラダラ感を受け継いでると思うから。

続いて、ミスチルのライブDVD観賞。こちらは『深海』のヤツ。東京ドームでやったんですけども、この時ミスチルはかなりストイックに音楽を作ってました。ある種、ファンを突き放して、ロックバンドとして、次のステージに進もうとあがいてました。それはライブを封印して『サージェントペパー』を作り上げたビートルズの様に…

当時、小学生か中学にあがるくらいだったと思いますが、この『深海』はすごくショックだったんですよ。なんだよ!もっとシングル入れてくれよ!って思ったもんです、当時やっぱりなけなしの小遣いで買うわけですから、お特感がアルバムには欲しかったわけでね『名もなき詩』と『花』だけですもん。『マシンガンをぶっ放せ』はシングルカットされますが、やはり元々アルバムの毛色が強い。そんな事を言いながらもミスチル好きでしたから、聞いてみようと思って買うんですよ。

んで、すごくビックリしましたね、めちゃくちゃかっこいいと、私は『アトミックハート』はいいバランスのアルバムだと思うし、好きなアルバムの定義から行くとまんま当てはまるんですけども、世間で言う程好きじゃないんですよね。もちろん聞いてはいましたし、好きな曲も多いんですけどもね。

多分ユニコーンが好きだったから、音質自体に何かしらの違和感を感じてたんですかねぇ、だからみんなが『アトミックハート』いいぜ、って言ってる時は多分、スピッツ派だったんですよ。『深海』はまず音がすごくよかったですねぇ、アメリカでレコーディングする意味が当時はわからなかったんですけど、後々にアメリカで得た音だと言う事を知ってさらにびびりましたね、この音は日本じゃ録れないらしいです。

どの曲も音が自分好みのものでしたね『ありふれたLove story』とか、まだ『サージェントペパー』も『ペットサウンズ』も『アゲイン』も聞いてないわけで、トータルアルバムとかコンセプトアルバムとか知らないんですよ。まだ青臭いガキでしたからね、海に潜って行く感じのアルバムなんだなぁくらいにしか思ってなくて、いろいろ音楽を聞いて行く内に『深海』が持つ、『深層心理に深く潜って行く』というコンセプトが衝撃的になっていくんですよ。ジャケットのアートワークも含めて、んで、『サージェントペパー』とかピンクフロイドを聞いても、やっぱり一発目が『深海』だったんで、雰囲気がかぶっていくんですよね、そうやってコンセプトものを聞いて行く内に、ミスチルがあの時代にやった事の勇気と怖さをだんだん知る事になっていって、今では一番好きなアルバムです。
まぁ『サージェントペパー』の方が好きですけどね、単純に良い曲がいっぱいあるという意味で、でもアルバム単品で考えると『深海』は日本でも指折りの大名盤である事は間違いないでしょう、

私はアルバムって10曲くらいで、良い曲がいっぱい入ってればいいっていう考え方なんですけども、このミスチルの『深海』はそんな事を言ってられないくらいの名盤ですねぇ、

話を元に戻すと、この東京ドームのライブDVDは『深海』をまるごとライブで再現してしまうというテーマなんですね、ブライアンウィルソンが『ペットサウンズ』を全曲生演奏するのと一緒なんですよ、あのアルバムって当時、賛否両論で(多分、ミスチルのイメージと真逆のものを持って来たからだと思うが)そんな中で『深海』ライブですからね、DVDを観ると『BOLERO』の曲も入ってるから、活動休止が決まってたのかな、いやぁこのライブは圧巻!この一言に尽きる、一曲目に『旅人』が来るんですけども、これが4人だけで演奏するんですね、この選曲からしてロックバンドである事を自覚していくようになったんですね、まぁこの演奏はスッカスカですけども、あえて、こうしたとしか思えない、丸裸のサウンドです。

シーラカンス』のライブバージョンはやっぱりすごい、だいたいこの曲はすごすぎる。プチプログレとも言えばいいでしょうか、アコギのストローク部分だけでも美しくて1つの武器なのに、その後のディストーションの効いたギターから放たれる、パワーコードのDm、B♭、F、C…そして『あぁぁぁぁる人は言うぅぅ』の絶唱、この曲はどうやって出来たのでしょうか?桜井和寿が優れたソングライターである事が明確に分かる楽曲ですな。彼はメロディメーカーであると同時に、実験的な楽曲がすべて成功してるんですよ。

このライブ、そして『深海』の出来にミスチルはとても満足し、ロックバンドとして自覚していったんでしょう、この後に『Q』というバンドの最高傑作がもう1枚飛び出しますが、また『深海』の様なアルバムを作って欲しいもんですね。