初恋

初恋 プレミアム・エディション [DVD]

初恋 プレミアム・エディション [DVD]

宮崎あおいという女優はいつも暗い顔をし、喋る事なく表情だけで映画を見せきるユニークなタイプの女優である。『ユリイカ』も『害虫』もそうだ。こんな特殊な演技を得意とする女優が何故ここまで人気があるのか不明であるが、『NANA』で見せたハイテンションな演技も違和感がないので、かなり腕はたしかな女優さんである事は間違いない。彼女が濡れ場が多いからと降板した『NANA2』だが、やっぱり彼女自身あの役には違和感があったのだろう。この『初恋』という作品はいかにも宮崎あおいが好みそうな作品である。宮崎あおいがあの演技を出来るからという理由なのかもしれない。バイクの免許まで取って撮影に挑んだというから、かなり本人的にも気合いが入っていたと思われる。ただ、そういう宮崎あおいにはかなり期待出来ても、作品の出来はまるで空回りだったと言うのが本音。

あの時代を見事に再現した美術は素晴らしいがセット丸出しなのがバレバレ。CGで作り上げたシーンもあったようだが、正直かなり無理してるのもバレバレである。個人的な意見としては全編モノクロ撮影にするべき作品だったのだと思う。車やハイライトなど衣装などの小道具にはかなり気を配って撮ってるのだが、そこでモノクロでやっちゃえという勇気はなかったのだろうか?惜しい。残念でならない。一応ざらついた映像にはしてあるものの、映像はウエルメイド止まりになっているようである。

さて、そのストーリーはかなり単純であるが、この作品。主要人物のほとんどが描き込まれてないため、しばし、混乱する事も。宮崎あおい小嶺麗奈おひょいさんとセットに金をかけすぎたのか、あとのキャストは全然分からん奴らばっかりだった。宮崎の兄ですら。スタッフロールで気づいたくらいである。有名キャストにしてしまえば、顔で覚えられるため、そのバックグラウンドを描かなくても観れてしまう。そんな力技が出来ないのならば、せめて2時間もある中にそのくらいの繊細な演出が欲しかった。主人公の動機もそのバックにある家庭もすべてカット。全然意味が分からないところが多々あったのもダメ。小嶺麗奈が唯一の有名どころだが、無駄に脱いで終わってしまった所が悲しい。細かい部分ではすごくリアルであるが、どうも作品全体はキャスティングも含め、いびつな出来である。

三億円事件のプロセスはかなりリアルだ。実行するシーンもしっかりと描いていて、そこに映画ならではの興奮を盛り込んだのも見事。だが、その後がかなり長く。2時間も要らなかったんじゃないか?と思うくらいの竜頭蛇尾。結果。映画としては何も残らなかった。