やっぱりレオーネってすごかったんだ!

『用心棒』の完コピ作品であった『荒野の用心棒』にさほど思い入れもなく、レオーネの世界を爆発させた『夕陽のガンマン』も普通におもしろいと思うだけで、これが何故語り継がれるほどの傑作と呼ばれてるのか分からなかった。

だが、この『続・夕陽のガンマン』は文句無しにおもしろい。これをつまらないというヤツがいるのかと思うほど完璧だ。これがマカロニウエスタンの傑作として語り継がれるのは当然だと思う。とにかく観るしかない!という傑作中の傑作。多分この作品だけ真の傑作と感じたのは金のかけ方とレオーネの映像哲学がバッチリ噛み合ったからだろう。

スタイリッシュで切れ味のあるオープニング、完璧な映像美にスケール感たっぷりの演出、隅々までリアルに構築された美術と衣装、娯楽映画の要素だけでなく、男の生き様や人間の汚い部分を全面に押し出し、ラストには決闘の美学を見せつけ、スカッとさせる。もっと短くしてもいいんじゃないかと思うシーンもあるが、2時間40分の中に映画でしか体験出来ない幸福感がバッチリ詰まった文句無しの娯楽作。

超がつくほどのクローズアップと広大な大地を映すためのロングショット。この両極端の絵を巧みに使い、映像を作り上げていくレオーネ演出は独特で唯一無二。眠気を誘うほどの長回しは『夕陽のガンマン』でも出て来たが、『続・夕陽のガンマン』は一枚絵の完成度が高いので、まったく退屈する事はない。とにかくこの作品は金がとてつもなくかかっているのが映像から伝わってくる。

すべてのシーンが美しく、残虐なのに詩的で、映画でしか体験出来ない世界がそこには広がっている。戦争シーンの迫力、クライマックスの目まぐるしい編集、リアリティを重視したメイク、美術、衣装。亜流とも言われたマカロニウエスタンの底力を見せつけるようにセルジオレオーネは己の魂を2時間40分に込めた。そんなパワーと職人魂を感じる映像である。

映画を観れば分かる事だが、この作品にサムペキンパーは絶対影響を受けているはずだ。『ワイルドバンチ』や『ガルシアの首』にはこの作品のリアリズムがしっかりと継承されている。

もちろんそれだけでなく、何が正義で何が悪なのかという人間の根源に迫ったテーマも素晴しい。これをもっとメッセージ性豊かにしたのが『許されざる者』なのだろうが、それを薄めて娯楽映画に寄せたのが見事だ。イーストウッドは善玉として描かれているが、かなりの極悪人で、何処が善人なのか分からない。それは登場人物の3人に共通して現れる。人間というのは複雑で悪い部分と良い部分がバランス良くあるからおもしろいのであって、それを3人にしっかりバランス良く振り分けたのがいい。これはハリウッドでは絶対に出て来ない演出だろうし、この作品の主役達に影響を受けた西部劇もたくさんあるはずである。

語り継がれるクライマックスは大興奮。ハラハラしたシーンを抜けても映画は終わらず、気が抜けない。緩急織り交ぜてるはずなのに、すべてのシーンにドキドキするのは演出がうまいから。とにかく見終わってここまで興奮するとは思わなかった。西部劇の中でもベストの1本と言っていいだろう。