女囚701号 さそり

女囚701号さそり [DVD]

女囚701号さそり [DVD]

鈴木清順さながらのシュールな様式美、石井輝男も真っ青のエロと血しぶき、ラス・メイヤーを彷彿とさせるポップでサイケな映像、これらが渾然一体となって梶芽衣子の存在感を引き立たせる事に成功。全体的にスピード感たっぷりの展開と、梶芽衣子自身が歌う“怨み節”の迫力、レイプ、レズ、バイオレンス、復讐、血しぶき、リンチ、裏切り、友情と書いてて映画の方向性が見えてしまうが、これを今公開したら間違いなくクレームが来る(笑)梶芽衣子のイメージを決定づけた大ヒットシリーズ第一弾。

ロジャー・コーマンが作り出したであろう、女囚映画というジャンル。だが、この『さそり』はまさに唯一無二の女囚映画。愛した男(刑事)に裏切られ、刑務所に収監された松島ナミの復讐劇だが、1時間27分の上映時間を見事に使い切っている。冒頭から脱走シーンがあり、そこで引き込んだと思いきや、さらにオーバーラップで、彼女の怨みと眼力を融合させるシャープな演出。あきらかに低予算なシーンもあるが、それを青一色にして、様式美として昇華させた事も見事。セットが裏返ったり、ガラスを敷いて下から撮ったり、映像のおもしろさがこちらの予想を裏切っていく。

そして、『さそり』を一躍有名にしたリンチシーンだが、これが凄まじい、殴る蹴るは当たり前、顔面を靴で踏まれ、熱々のみそ汁をかけられ、ぶっ倒れる寸前まで穴堀りさせられたりするのだが、これを梶芽衣子は無表情、少ないセリフで演じきる。この表情の冷たさが彼女の精神力や復讐に対する執念を感じさせる。血しぶき飛び散ったり、目ん玉にガラスを突き刺したりとバイオレンスもぬるくなく、こういう作品が何故大ヒットしたのか不明だが、ちょうど反体制を謳ってた時代とマッチしたのだろう。必ず陵辱されるシーンでは服を破かれるのだが、その度に裸が飛び出し、全編を女の裸で覆っている。梶芽衣子はまったく脱がないと思っていたが、作品の方向性や質を彼女はわかっていたのだろう。しっかりと脱いでいるので、梶芽衣子の熱の入れようもハンパじゃないのだ。後半の復讐シーンでは全身黒ずくめで登場し、もう、ツッコミどころ満載なのだが、映画がおもしろすぎるので、ラストまで一気に見れてしまう。

超がつくほどの怨み、復讐、血なまぐさい映画かと思いきや、映画ならではの様式美と梶芽衣子のカリスマ的な存在感、ただのプログラムピクチャーとあなどるなかれ、日本が世界に誇る唯一無二の強力作である。