wake up! wake up! wake up!

今回のThe Pillowsのアルバムは『wake up! wake up! wake up!』

タイトルにはよろっと世間はThe Pillowsの音楽に目覚めた方がいいという意味が込められている。確かに巷にはどうでもいい音楽が溢れ、どうでもいい客を騙し、本当に音楽に目覚めれるはずの人を眠らせてしまっている。ものすごい意味だが、17年変わらないかっこいい音楽(正確に言うと10年かな?)を作り続けている、The Pillowsだからこそ言える事だ。

つまり今回のアルバムは良くも悪くも今までのThe Pillowsらしさに溢れたアルバムであり、飛び抜けた大名曲はないが、ある種、とてつもない安定感に包まれたアルバムになっている。現に、彼らの今までの楽曲群に似たテイストの曲が並び、このアルバムを好きになれば、The Pillowsが好きになれるだろうと思う。

1曲目の「Wake up! dodo」から全開。The Pillowsのアルバムの1曲目はいつも変化球だが、こちらは直球のメロに変拍子が出てくるというひねたポップロック。LとRで全然ギターフレーズが違うのに、違和感を感じさせないのはさすがである。

2曲目の「YOUNGSTER(Kent Arrow)」は『MY FOOT』で言う所の「ROCK'N'ROLL SINNERS」に当たるポジション。単純に「RUNNERS HIGH」の姉妹版、手拍子あり、かけ声ありで、ライブ仕様の曲だ。

3曲目の「プロポーズ」はアメリカで披露された新曲。こちらも『MY FOOT』の『空中レジスター』ポジション。

4曲目に控えるのはシングル「スケアクロウ」こちらは神曲。最強。言う事無し。

5曲目は「アナザー・モーニング」や「パトリシア」に連なる佳曲「BOAT HOUSE」。オアシスの『シーズエレクトリック』が元ネタなんだろうが、サビメロの後半がミスチルっぽい。

6曲目の「プレジャー・ソング」は出だし一発でThe Pillowsと分かる曲。The Pillowsは始めの1歩を唄った歌が多いが、こちらもそれ系の歌詞。『暗闇に怯えるけど』とか『怖くて不安なんだ』と言いつつ、『勝負を挑んだ事を一度たりとも後悔しないぜ』と言い聞かせる。私はThe Pillowsのこういう歌に癒され、共感する。サビメロが尖っていてかっこいい。

7曲目の「シリアス・プラン」は軽い「ノンフィクション」という感じ。個人的に「ノンフィクション」はイマイチなので、こちらもそういう扱い。アルバムの箸休め。

8曲目の「Skinny Blues」はミッシェルっぽいロックンロールナンバー。「ビスケットハンマー」や「巴里の女性マリー」を彷彿とさせる。こういうギターリフはどういう風に考えるんだろう?

9曲目の「プライベート・キングダム」は「Sad Sad Kiddie」をもっと分かりやすくした感じ。サビメロが凝ってるので、出だしが変化球でも型くずれしないのが特徴。

10曲目の「Century Creepers(Voice of the Proteus)」は個人的にベストトラック。超が付くほどのロックンロールナンバー。「プレジャー・ソング」で『暗闇に怯えるけど』と唄いつつ、この曲では『暗闇に慣れてるけど いつかは抜け出してみたいんだよ』と唄う。サビのシャウトがかっこいい。

そしてアルバムのラストを飾る「Sweet Baggy Days」はさすがの1曲。「MY FOOT」のようなパワーポップだが、 全部のメロが泣き虫な感じなので、ラストにふさわしい楽曲。

と、今までのThe Pillowsとなんら変わりないが、これこそファンが求めている物であり、こういうちょいとひねた事をしてるから売れないだと心底思ったアルバムである。あえて傑作とは言わない、だが、聞いててまったく飽きさせないし、何回でも聞けるようなシンプルな作りになってるのも特徴。みなさんこれがThe Pillowsです。