フレディVSジェイソン

ホラー映画界のビッグネームが対決するというタイトルだけで映画の方向性が決まってしまった作品だが、これがどうして!そのタイトルに喰われない大傑作に仕上がった。ただ単にフレディとジェイソンが出てくるだけの映画ではなく、『エルム街の悪夢』と『13日の金曜日』のお決まりをしっかりと出し、後半にはロニーユーが監督した意味があるアクションも登場。97分の中に悲鳴と血しぶきと人体切断だけを盛り込んだ強烈な作品。

しっかりとオープニングから『エルム街の悪夢』と『13日の金曜日』の旋律を流し、さらに両者のダイジェストでテンションを上げる。いかにもな女の裸やセックスするヤツが死ぬというクリシェも登場し、『エルム街の悪夢』であった「夢の中で死ぬ」というコンセプトもしっかり受け継がれている。番外編かと思い気や本編にも迫る両者のいいとこ取りで映画は進む。そしてタイトルバックだが、人の皮膚が全面に写り、それがズタズタに引き裂かれ肉編が飛び散り、血しぶきが上がった所でタイトルが出るという凝りよう。ハッキリ言ってこの時点で傑作だと確信した。

そこからは殺戮ショーの始まり。人の死に方ってこんなに多彩か?と思うほどにいろんな死に方をし、人体がすぽんすぽん飛ぶのはメジャー作品では『キル・ビル』以来。鼻を吹っ飛ばすところなんかはCGで撮られているが、あとは出来る限りアナログで撮影しようとしたところも高感度高し。余計な思想はいっさいなく、バカな若者がひたすら殺されるだけという前半はホントに素晴しい。単純にジェイソンとフレディを置いただけでなく、ホラー映画として、しっかりした映画にしようと言うロニーユーの本気度が見える。もう怖がらせ方はベタだが、本家の2作品に負けないくらいホラー映画として出来がいい。

そして、後半であるが、ロニーユーが監督しているだけあって完全に香港映画仕様の殴り合い。ちゃんとしたアクションを見せる上に、2人とも不死身だから、血は飛ぶ、腕は飛ぶの大騒ぎ(笑)さらに殴り合った2人が『ドラゴンボール』のごとく吹っ飛んで行くなどのバカバカしさもあり。ガスボンベの魚雷や建設中のアスレチックで取っ組み合いをするなど、見せ場もたっぷりある。

もちろんそれだけじゃない。CGで脳味噌の中を突き抜けて行ったり、妙な生き物が出て来たり、映像的にもおもしろい。赤いフィルターをかけ、バトルさせたかと思うと、その後に緑色に変化させるという技も出している。細かい所の演出も抜かりない。

ハッキリ言えば中身はない。しかも『エルム街の悪夢』と『13日の金曜日』という作品の予備知識がいるのはマイナス要因だが、今の時代に97分殺戮だらけの映画が作れるだろうか?しかもそれを監督しているのがロニーユーだというからさらに驚く。とにかく最初から最後までまったく緩い部分がない傑作。DVDだと残虐描写が全部入った完全版らしいので、そちらでお楽しみ下さい。限りなく満点に近い作品。

サントラも最高です。

フレディVSジェイソン オリジナル・サウンド・トラック

フレディVSジェイソン オリジナル・サウンド・トラック