ボーン・スプレマシー

起きて『ボーン・スプレマシー』鑑賞。まさにタイトル通り最高!おもろい!いやぁ、期待してない分、驚いた。ホントにめちゃくちゃおもしろかった。すごいよ。確かに派手な爆破とかは無いけど、すごくハラハラするし、音楽の使い方から、ロケ地から、全て完璧に機能してる。私はよく、『人が死にまくれば、あとはどうでもいい』とか言ってるけど、こういう映画も必要だよ。海賊が大ダコとどうのこうのとか、短髪や長髪になるトム・クルーズのヤツとかも映画界には必要だけどね。

アクション映画って派手なアクションがあって、見せ場はそこだけになってしまうでしょう。さらに続編を作るとなると、前作を上回らなければいけないし、展開とかも決まってくる。そうすると、1つの見せ場をメインに脚本を組み立てたり、予告編もそういうシーンで構成されるから、決まりきってて、観に行く気が失せるんだけど、『ボーン・スプレマシー』は、

ハリウッドとはこうならなければならないという定型からグッと飛躍する事に成功した作品。

『ボーン・アイデンティティ』は記憶喪失になったヤツが政府絡みの組織から追われるっていう、お決まりのヤツに、マット・デイモンという個性、ヒッチハイクした娘、普通のハリウッド映画では地味過ぎる見せ場などをうまく使って、まったく新しい映画に仕上げた。領事館からロープ無しで逃げるとか、ボロいミニクーパーで逃げるとか、全部地味なアイテムだったからすごい。っていうか、そりゃそうだよね、リアルに撮るとしたらそうなる。これが他の監督だったらば、地味過ぎるからと言ってもっと派手にするんだけど、ダグ・リーマンはそこを分かってた。『ボーン・アイデンティティ』がよかったのはあえて地味にして、逃げるシーンなどすべてにリアリティを持たせた事。その意図が読み取れなかった人にとっては物足りないという作品になってしまったんでしょう。しかも、組織はボーンが記憶を失ってる事を知らないから、ボーンの目的がわからない。ボーンも自分が何をやってたかが分からないから、互いを探り合う行動がおもしろくて、そういうのも新しかった。しかもこういうプロの映画がヒットした事もすごいんだな。まだまだ今の客も捨てたもんじゃない。

さて、続編になるとそういう「記憶喪失の男が組織に狙われる」っていうプロットが使えなくなるでしょう。使えたとしても前作ほどのインパクトがなくなる。だからどう持っていくのかが気になったけど、さすがだった。記憶がまだ完全に戻ってない事で、濡れ衣を着せられて、さらに復讐が絡むというのがいい。ボーンの行動、そして組織の行動、どっちもスレスレでニアミスするから、ただ早足で歩くシーンだけでもドキドキする。こういうのは映画じゃないと出来ないし、映画にしてこそ意味がある作品だよ。特に電車から電車、さらに船にまで飛び降りるシーンなんかはドッキドキしたし、タクシーのカーチェイスもホントにすごい迫力で、地味な映画のテンションを一気に上げる。音楽の使い方が秀逸で場面が緊迫していくにしたがって、音楽も盛り上がるという、そういうのもうまかった。

ただ、1つ文句があるとすれば手持ちカメラ。ちょっと多過ぎる。手持ちカメラは迫力を出すにはいいけど、短いカットでパッパッとやられると何が起こってるのか分からなくなるからね。監督が変わった事で、自分のカラーを出したい気持ちは分かるけど、それが映画に合ってるかどうかは別問題だからさ、『ボーン』シリーズは『エイリアン』シリーズみたいに、劇的に変えれないでしょう。だからもっと弁えて欲しかった。格闘シーンも細切れのカットと手持ちカメラのせいで台無し。それくらいかな。文句があるとするならば。

新聞記事とジョギングのカットバックもうまいと思ったし、手持ちカメラが活きてるシーンもあったし、何よりも素晴しいのは『ボーン・スプレマシー』は1時間40分で終わる!もうたらたらと2時間30分だとか、ましてや『パイカリエンド』みたいに3時間もやるような映画はこりごりだ!とりあえず、ハリウッドの連中や無駄に説明が多くて長い映画ばっかり作ってるヤツらはこれを観ろ!バカたれ!

というか、『スパイダーマン』とか『パイカリ』とかは、映画をまったく観ない人も観に行くでしょう。だからさ、映画ばっかり観てる人がそういう映画をあえて勧めるのは、もういいよね。確かに『ボーン』シリーズはヒットしたかもしれないけど、『スパイダーマン』とか『踊る大捜査線』とかを観に行く人は映画館にまで行って観ないはず、だから私はこういう映画を積極的に勧めていきたい。あえてね。これはオススメです!