THE WORLD IS MINE

THE WORLD IS MINE

THE WORLD IS MINE

ホントのホントに思いつきでくるりの『THE WORLD IS MINE』を聴く。なんでだろう。なんか、the pillowsを聴いて、やっぱり日本のバンドもいいなぁと思い、さらに『ワルツを踊れ』を聴いて、なんとなくくるりを聴きたくなったからかもしれない。

実は『THE WORLD IS MINE』はくるりの中でも一番聴いてないアルバムで、最初聴いたときあんまり好きじゃなかった。多分、『青い空』とか『ばらの花』を期待したからかもしれない。もちろんすげぇ好きな曲もある。『GO BACK TO CHINA』は恐ろしくカッコいいし、『WORLD'S END SUPERNOVA』は奇跡の名曲だと思うし、『THANK YOU MY GIRL』なんかは何回も聴いたし、『男の子と女の子』なんかは別れた時にすごく良く聴いた。でもそれ以外の実験的な曲がよくわからんかったのが本音。

でね、このアルバムを今更聞くと…

すげぇいい!何だ!このアルバムは!

ぶっちゃけオレの中で邦楽のNo.1はミスチルの『深海』だけど、ハッキリ言ってそれに並ぶアルバムだと思った。本気で驚いた。コーネリアスの『ファンタズマ』にも並ぶかもしれない、この多彩さ、音の楽しさ、これ1枚あったら無人島に言っても全然退屈しないだろうとも思ったし、これからもずっと聴き続けてられると思った。多分、私の中で『KID A』とかピンクフロウドを通過したからだと思う。

この音の良さに、完成度の高い楽曲群。なによりも音楽を聞く事の喜びが全身を貫き、様々な感情が渦巻く。iPodが出た時にシャッフルのおもしろさに惹かれた。それは自分の好きな音楽がぐちゃぐちゃに並んでるだけなのだが、たまに1つのストーリーや感情、風景を奏でてくれて、改めて自分が音楽を好きな事に気づかされる。それはたくさんのアルバムやアーティストを入れてないと出来ない楽しさだし、iPodが無いと不可能にも思える。ましてやそれが1つのアルバム、1つのアーティストで体験出来るわけが無いと思っていた。だが、そういう楽しさが体験出来るアルバムがこの日本に1枚だけあったのだ。ホントに5000曲の中からシャッフルして、バラバラな楽曲が奇跡的な曲順で13曲再生されたようなアルバム。それがくるりの『THE WORLD IS MINE』である。

この『THE WORLD IS MINE』1つのアルバムの中に様々な音が詰め込まれている。オアシス、ピンクフロウド、レディオヘッドビートルズティーンエイジファンクラブ、アンダーワールドゴダイゴ、ロック、フォーク、ダンス、アンビエント、サイケ、プログレ、クラシック、ダンス、ワルツ、沖縄音楽、民族音楽。これは捉え方にもよるだろうが、中途半端だとか、焦点がぶれてるとか、1本芯が通ってないとか感じる人もいるだろうが、逆に言えば、それだけ様々な振り幅があり、アルバム1枚でいろんな音の世界が広がっている。個々の楽曲で言えば、別に名曲と言えないような曲もあるんだけど、アルバム1枚で考えると素晴らしい音の世界だ。1曲目から13曲目まで一分の隙がない。特に『水中モーター』のギターが無茶苦茶かっこいい。打ち込み主体のアルバムと言われてるが、基本的にはロックなアルバムである事は間違いない。

『THE WORLD IS MINE』からは『KID A』も『ペットサウンズ』も『狂気』も『モーニンググローリー』も感じる事が出来る。だから聞き方によっては最強の1枚になり得るはず。もし良い音楽がこの世にはないと嘆いてるあなた。さらに『KID A』がたまらなく好きだというあなた。このアルバムを是非聞いてみて欲しい。発売された時から5年。今更傑作になってしまったが、そういうアルバムってこれからどんどん増えるんだろうなぁ、よく考えたら、これ発売された時って多分青春パンクがちょっとブームだったんだよね。だから、きっと私の感性もまだ若かったんだと思う。今更ピンクフロイドとか聞くといいのかも。