『ディセント』は傑作だ!

THE DESCENT [DVD]

THE DESCENT [DVD]

2005年最大の拾い物。ニール・マーシャルという名前はこれから覚えていて損は無い。

ちょっとした冒険を趣味としているサラ。その日も女友達と川下りを楽しんでいて、迎えに来てくれた夫の車に乗り込んだ。娘と誕生会の事で話していると対向車がつっこんで来て…気づいたらサラは病院に居た。夫と娘は死んでいた。悲しみにくれ、発狂するサラ…1年後、彼女を元気づけようと、サラの友達5人が、サラをまた冒険に誘った。国立公園内の洞窟探検。いつものようにちょっとしたスリルを味わうはずだったのだが…

ネタバレをしてしまうとおもしろさが半減してしまうが、2005年度最大の拾い物と言っていい傑作ホラー。暗闇が自然な設定になる洞窟探検を下敷きに『マタンゴ』+『プレデター』+『レザボア・ドッグス』で味付け。前半は疑心暗鬼サバイバルで後半はスプラッタホラーになるという一粒で二度美味しい作品となっている。

娘を亡くした事で精神を病んでいるという設定が隠し味。洞窟で迷って極限状態になり、女6人が罵り合うというのもよくあるのだが、洞窟に迷い込んだというのが新鮮で、低予算である事を逆手にとった設定の妙。絶妙な照明と次から次に襲いかかる難関が恐怖とハラハラ感を演出。狭苦しいところを縦横無尽に荒々しく動くカメラがB級感を醸し出すが、この荒々しさこそ、『ディセント』にあっている。まったく無名の役者を使ったのも見事。ハッキリ言って書けるのはここまでだ。後半はそれこそまったく違う映画になってしまうが、こここそが映画の本編で素晴しく、例えるならば『28日後』のような展開になるのだ。

正統なホラー映画とはちょっと違うが使っているアイテム自体はホラー映画によく観られるものばかりで、主人公の造形は『キャリー』だし、『プレデター』と同じ様なカットも出てくるし、『死霊のはらわた』と同じシーンもあるし、緑や赤といった映像は『マタンゴ』だ、『レザボア・ドッグス』と書いたが、どちらかというと『遊星からの物体X』にも似ている。暗闇や人間という恐怖になるアイテムを最大限に使い、ここまで独自の物に仕上げた監督の手腕は見事。完成されてはいないがやろうとしている方向性が見える「分かってるでしょ?」的な作品。

出てくる役者は無名だし、イギリス製作という事でまったくのノーマークだろうが、これは近年のホラー映画の中でも傑作の部類。ニール・マーシャルは『ディセント』でハリウッドでも引っ張りだこになるはず。ただし、『スネーク・フライト』や『ホステル』、『ゴースト・オブ・マーズ』っぽい雰囲気が漂っているので、肩の力を抜いて観るべし。