ふがいないなんて自分を責めんな

GREAT SPLASH

GREAT SPLASH

BUMP OF CHICKEN以降、有象無象にウジャウジャと沸いて出てきたギターロック勢のなかで、ぼくはCUNEというバンドが飛び抜けて好きだった。彼ら以外では音楽的にいちばんメジャーっぽさがあったバンドで、GOING UNDER GROUNDと同じグループに入れれたかもしれないが、CUNEのメロディはかなり練り込まれており、スピッツGRAPEVINEを彷彿とさせるものがあった。

元々、hitomiの『Samurai Drive』という曲がとてもかっこいいと思っていて、シングルを買ってしまったほどだが、その『Samurai Drive』を野郎が歌ってるのを有線で耳にし、すわ何事???と調べたら、楽曲自体、CUNEというバンドのカバーだったことを知った。

『Samurai Drive』はホントに凄まじい楽曲だと思う。人を喰ったようなタイトルもさることながら、イントロの2コードはとてもへんちくりんだ。それをそのまんまAメロまで持っていき、そこに「このまま遠くへ〜」という美メロが被さる。さらにいちばん盛り上がるのがBメロというのも変だ。最後のリフレインは「責めるな」という言葉を「責めんな」とはめこんだり、「愛すべき者」を「愛すべきもん」と歌ったりして、ミスチルっぽいメロのツイストをしたと思えば「何だかなぁ」とか「ふがいないなんて」とか、J-POPであまり耳にしないフレーズもあっておもしろい。これを聞いたときに様々なロックやJ-POPが渾然一体になった曲がついに出てきたと、個人的には狂喜乱舞したもんだった。

CUNEを知った時、すでに彼らは佐久間正英プロデュースでメジャーデビューしていた。これをたまたまラジオで聞いて、ドンピシャだったのですぐに買いに行き、その後の作品はほとんど買ってたくらいのファンだった。アルバム『GREAT SPLASH』は捨て曲なしで、さらにシングル『青空』は有線でかかってるのを聞いたバイトの娘が「これすごく良い曲!誰の曲だろう」と言ってたくらいの神曲であり、藍坊主が好きな知り合いの車の中で藍坊主がかかってた時は、声があまりにCUNEに似てたので、「お前CUNE聞くんだ!?」って言ってしまったほどだ(ぼく自身そのときは藍坊主をまったく知らず、その娘はCUNE知らなかったので、教えてあげたらすごくいいと言ってた)

評論家も「今後大ヒットを連発する予感がある」と言ってたくらいなのだが、今ひとつパッとせずに活動を停止した。

CUNEというバンド名の通り、胸キュンになる曲が多いのも特徴で、基本的に彼らはポップなグループでもある。その楽曲の振り幅の広さのせいか、どういうバンドなのかよくわからなかったというのも事実だ。彼らが売れなかった理由はゆったりとした曲の完成度があまり高くなかったからだと思う。『リフレイン』や『カノン』『青空』なんかはCUNEっぽく、メロも曲展開も凝っててかっこいいが、『そばにいてよ』だとか『様々サマー』はそれらにくらべるとやっぱり完成度が低い。『Butterfly』や『クローバー』(後者はドラマの主題歌になった)という名曲もあるけど、それがすくなすぎた。

Mr.Childrenなんかはどの曲をやっても、ミスチルっぽいと言われるし、くるりも音楽性が分からないが、どのジャンルをやっても完成度が高かった。CUNEにはそれが無かったということである。

音楽と髭にCUNEがゲストで出た時、棚橋さんは『ちょっと楽曲の幅が広過ぎる気がするけどね』と言ってたが、その意見には完全同意する。まぁ小林亮三自身がヴィジュアル系→弾き語り→cuneだからというのもあるのだろうが。

あと「い行」をメロの一番高い部分に置くのも特徴的で『カノン』という曲では「月に涙を 星に願いを」の「きになみだを」と「しにねがいを」の「い行」がメチャクチャ高い。『Samurai Drive』だったら「I don't Know the way of truthが何だかなぁ」の「way」が死ぬほど高い。これは洋楽に多くて(もちろん言語体系が違うからだけど)私はそれがすごく好きな部分だったのだが、日本人はこれをあまり好まないというのもある。逆にB'zは「あ行」を一番高い部分に置く、日本人には1番これが耳に馴染むようだ(たけしの万物創世記でやってた)。故にそこまで浸透しなかったのだろう。

CUNEはつい最近までまったく聞いてなかったが、久しぶりにカラオケで歌ったのをきっかけに引っぱり出してみた。今はベスト盤も出てる様なので、ひねたJポップが聞きたいという方はもし良かったら聞いてみてほしい。あういぇ。

BEST 1999-2004

BEST 1999-2004