『エクソシスト』を鑑賞。やっぱり傑作だと思う。ウイリアム・フリードキンはとてつもない作品を作り上げたもんだ。とにかくあのザラザラした映像は『フレンチ・コネクション』とかわらないわけだが、それよりもなによりも、細かい部分での演出が素晴しい。リアリズムにこだわった演出が実にリアルで、ドキュメンタリーを観てるというよりも、その現場に居合わせた人達の行動を第三者の目で見てるような感じがある。ドキュメンタリーと呼べないのは、カメラワークやカット割りが映画的であるからだ。『フレンチ・コネクション』はそれとは逆で、手持ちカメラを多様してるが、『エクソシスト』はもっともっと映画的なカメラワークである。
『シャイニング』って絶対に『エクソシスト』の影響を受けてると思った。『エクソシスト』はオカルトホラーであるにもかかわらず、昨今のホラー映画に比べると演出が骨太で地味だ。心霊現象とか、悪霊とかの存在を否定するかのように(もしくは、本当にあったらどうなるか?というように)撮ってる。だからこそ傑作だし、それこそ『2001年宇宙の旅』のようにホラー映画の定義を変えたんだと思う。怖がらせるだけの見世物小屋的なもんから芸術作品に昇華させたというか、それは『悪魔のいけにえ』も同じなんだけど。音楽もまったく鳴らないし、それこそ、あの名スコアをあまり聞けなくて残念に思うくらい。『エクソシスト』をもっともっとド派手にしたのが『コンスタンティン』なわけだな。きっと。
それにしても役者陣がとにかく素晴しい。全員が極限の演技。これは監督の演出力によるものだろう。実際ウイリアム・フリードキンは銃をぶっ放したり、役者をいじめぬいてカメラを回したという。そうやって、役者の限界の顔を引き出したわけだ。それは演出力とは違う気もするが、フィルムに刻み込まれた役者の演技はホントに映画史に残るくらい強烈である。こういったところも『シャイニング』に共通するところなんじゃないかと。
そもそも神とか霊の存在を信じてないキューブリックにとって、悪魔に取り憑かれた女の子の母親が、周りから「あり得ない」と否定される演出に力を注いだ『エクソシスト』にはやっぱりやられたんじゃないだろうか?
ちなみにマイミクさんの話によると『エクソシスト』というのは、悪魔に取り憑かれた少女の話だが、あれは全部科学的に説明出来る事らしい。多重人格って疑うシーンもあるくらいだし。最後のシーンに至っては神父2人と少女しか居ないので、いくらでも空想出来るとかなんとか。これまた『ブレードランナー』のように、あれは取り憑かれてたのか、取り憑かれてないのかという説がありそうだ。もちろんカラス神父の目線でもお母さんの目線でも、少女の目線でも観れるわけで、ウイリアム・フリードキンは確信犯的に『エクソシスト』を多面体で観れるように作ったんだな。
徐々に悪魔に乗っ取られていく様子がホントにリアルで、やっぱりあの少女のセリフが衝撃的。
「Let Jesus fuck you! 」
「Lick me,Lick me!」
「Stick your cock up her ass, you mother-fucking worthless cock sucker! 」
「Your mother sucks cocks in hell,Karras! You faithless slime! 」
「Shove it up your ass, you faggot!」
「Fuck Him, Karras! Fuck Him! 」
『エクソシスト』は『ブレードランナー』とか『2001年宇宙の旅』のように語るべき要素がいっぱいある。神や悪魔、家族、信仰心、神に対する冒涜、反キリスト、精神病、アメリカ、エミリー・ローズ、これらに造詣が深いともっともっと芯を捉える事が出来るわけで、とりあえず今は普通の感想にとどめておく事にする。
これからディレクターズカット版もドキュメンタリーも観るよって。あういぇ。
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