ドリーマーズ

1時頃起きる。ダラダラネットして、風呂入って、カップラーメンを喰らい、ベルトルッチの新作である『ドリーマーズ』鑑賞。映画はけっこう前のヤツだけど、何気に借りられてて、観れなかった。んで、観たわけなんだけども…

エロを期待して観たのだが、これが見事にベルトルッチらしい映画になってて、感動してしまった。

ベルトルッチは元々映画評論家だった。これは『ウエスタン』のメイキングで知った事だが、この『ドリーマーズ』は68年のフランスを舞台にしており、ほとんどのシーンで過去の映画のオマージュをやっている。

だから『ドリーマーズ』は68年以前の映画や音楽に精通していて、元ネタがすべて分かってると絶対に楽しめる映画だ。主人公はアメリカからフランスに来た映画オタクでシネマテークに足繁く通っている。そこで双子の兄妹と仲良くなり、退廃的な暮らしをし始めるというストーリー。パッケージに書いてある通り、性とか愛とかについて深く切り込んでいて、映画は『ラスト・タンゴ・イン・パリ』の若者版といった感じ。なによりもファーストシーンのカットが、マーロン・ブランドの登場するシーンに似ていて、監督自身も意識して撮ってるのかもしれない。

映画の中のセリフやシーンに過去の名作をぎっちり詰め込んでいて、なおかつ、その映画のシークエンスまでカットインするという荒技までやってのけている。さらに音楽はジャニス・ジョプリンからジミヘンまで飛び出す始末。言えば、hackerさんのためにあるような映画だと思う(笑)

そのセリフ回しだがタランティーノのそれよりもモロである。

「サミュエルフラーの『ショック集団』に衝撃を受けた」
キートンは座ってるだけで笑える、ゴダールに似た映像作家だ」
「ニューヨークヘラルドトリビューン!」
ゴダールの言葉を?“ニコラス・レイこそ映画だ”」
バツ印の上で死ぬ映画は?『暗黒街の顔役』だ」
グレタ・ガルボジョン・ギルバートの部屋と別れるシーン」
「ジミヘンこそ本物だ、ベトナムに行った兵士はクラプトンを聞かない」
「タップダンスで人をイラつかせる映画は?『トップハット』だ!」

などなど、全てのセリフが映画好きやあの当時を生きてた人のためにあるようなもの。

私がすごく感動したのは『はなればなれに』のルーブル美術館ダッシュを同じカメラワークでやるところ、9分42秒の世界記録をオレらも破ろう!と言って、実際にルーブルダッシュする。んで、カメラワークもまったく同じにして、さらに編集で『はなればなれに』の映像も混ぜ込む。やっぱりみんな『はなればなれに』のシークエンスにはヤラれたんだろうなぁ。

まぁ。ベルトルッチはいつまで経ってもゴダールシンドロームから抜け出せないな!という映画とも言える(実際、ベルトルッチは『勝手にしやがれ』に衝撃を受け、人生のベスト作にも未だにいれてる)

映画の後半になると、ホントに『ラスト・タンゴ・イン・パリ』になっていって、バスタブのシーンやセックスシーンなど、新しい世代に向けたもんとして作りなおしてるような気さえする。

ベルトルッチと言えば、映画ファン以外だと『ラスト・エンペラー』や『シャルタリング・スカイ』で有名だと思うが、個人的には『暗殺の森』と『ラスト・タンゴ・イン・パリ』がめちゃ好きで、hackerさんもレビューに書いてたが、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』のカメラワークは何度観てもゾクゾクする。

この『ドリーマーズ』でもあのカメラワークは健在だ。というか『魅せられて』以来、ベルトルッチの映画観てなかっただけなんだけど(汗)

全編に出て来るクレーンを使った長回しはホントに見事だ。ワンカットが長い映画って最近無くなったけど、こういう映画を観ると安心する。部屋の中で映画は進んで行くので、クローズアップも多いのだが、基本的には映像を作り込んでるタイプの映画だ。

エロのキワモノ映画かと思ったが、実は正統な映画好きのための映画『ドリーマーズ』オススメです。