エロ将軍と二十一人の愛妾

「傑作というだけのことであれば、彼は『エロ将軍と二十一人の愛妾』という途方もない傑作を何年も前にすでに撮りあげてしまっており、この映画史に残る一本の作品を今後の鈴木が超えられまいことは当の本人がよく知っている」
―――蓮實重彦(映画評論家)

『エロ将軍と二十一人の愛妾』鑑賞。

私は蓮實重彦という人の評論を1文も読んだ事がないので、どういう評論をする人なのかは分からないが、いうなれば、ロジャー・エバートラス・メイヤーを評価したと同じ感じなのだろうか。*1

監督も撮ってるのを観ると、娯楽の職人監督だと言う事がわかるしね。まぁ見たわけなんだけども。

やばい!すごい!何がすごいって、開始5分。笑いっぱなしで1回停止した

ストーリーは生まれながらにしてセックス狂の角助が徳川将軍の替え玉になった事から、男子禁制の大奥でヤリまくるという話*2

いきなり、角助って子供が生まれて、そこから角助の成長をへったくそなイラストで見せて、んで、その子はね、生まれながらにして女体に興味があって、いきなり8歳で女体すべてを知り尽くす(笑)その時のイラストがホントにバカバカしく、文章では表現が出来ないんだけど……

んで、成長して、セックスにしか興味なくなってしまう、角助。

見た目は明らかにおっさんなんだけど、

いきなり字幕で、

角助15歳って出る!!!!

しかも、そのカットも水かけられて、間抜けにこけてるカット!!昔から無茶な設定は多々あれど、あんなにバカバカしい字幕もない。絶対狙ってるだろう。お前は『けんかえれじい』の高橋英樹か!

さらにすごいのが、その後、ローアングルのワンカットで真面目な会合のシーンを撮って、ナレーションで「会議は深夜にまで及び、それぞれの思惑が交錯し、結論は…」

と言った後、次のカットで、殿様がおっぱいしゃぶってたりしてフリ、オチもしっかりと出来てる。さらにそのシーンでは手前で真面目に家来が口論してるのに、奥の方では殿様がおっぱいいじくってるという映像表現。加藤泰の手法をここで使ってしまうとは!

内容はバカバカしいが、映像はすさまじい。光と影を使ってるし、構図もシネスコを意識しているために大胆だし、短いカット割りでスムーズに展開していくし、美術もとても凝ってるし、風呂場のシーンでは固定カメラで奥の奥まで映像を作り込んでいて、ウェルズっぽく、飯屋でのシーンなんかは山中貞雄を彷彿とさせる。

エロ大奥コメディなんだけど、殺陣のシーンもホントにホントに素晴しく。構図と撮り方とカット割りと全てが完璧だ。長回しなんだけど、ヘタなアクション映画よりも美しい。怪談だと思って見てたら、殺陣がかっこよかった『東海道四谷怪談』を思わせる。

クライマックスのそれなんて『パフューム』よりも強烈だし、ラストの360度パンも笑うしかない。とにかく最強の娯楽映画の1本。ここまで良く出来てるとは思わなかったぜ。あういぇ。

*1:ロジャーエバートは『ワイルドパーティー』の脚本を書いており、消したい過去だと噂されていたが、その後のインタビューにも登場して、さらにDVDの副音声もしてるから、ガンになってから考え方が変わったかもしれない。脱線

*2:将軍は入る事を許されてるらしい