エリカ様のせいで観れなかった『デス・プルーフ』を観た

ビデオ1へ。今日は『デス・プルーフ』のレンタル開始の日。『グラインドハウス』はDVDのボックスを予約したが、『デス・プルーフ』は観たくて観たくてたまらなかったので、借りて来た。新作はすぐに借りられるからどうかなと思ったが、しっかりと残ってた。『グラインドハウス』は2本セットでフェイク予告編のバージョンが観たかったので買ったからね。

さて『デス・プルーフ』ですが…

マジで感動して、興奮して、泣いた。これぞ映画だ!

タランティーノは実にシンプルで直球の映画を提示して来た。私はラズベリー賞に輝いたヴァーホーベンの『ショーガール』という映画が好きで、その理由は2時間の間に素っ裸の女と暴力とセックスとドロドロしたショービジネスの裏側が詰め込まれてるからだ。実は、映画というのはそういうものだけを詰め込んでも成立する娯楽である。

『ヤング・マスター』のクライマックスはただカンフーの使い手が普通の平野で殴り合うだけだが、実はそれをパンさせてロングショットで撮って、スクリーンに映せば立派に映画として成立する。『子連れ狼/三途の川の乳母車』もそうだ。80分の間に殺陣を詰め込んでも映画になってしまうのだ。

デス・プルーフ』も上記の映画と同様に、女のケツと脚とデカイ車とかっこいい音楽だけが詰め込まれた映画だ。さらにクライマックスはアメリカのバカでかい車が猛スピードでぶつけ合うだけである。上記の映画がそうであるようにタランティーノもシンプルで単純な設定で比類無い映画的興奮を表現した。

デス・プルーフ』はハッキリ言って映画としては緩いし、決して傑作とは言えないが、映画的な興奮が詰まっており、映画への愛に溢れており、何よりも映画を観ている事が幸せに思える作品だ。

グラインドハウス的という前フリもバッチリ効いてて、キレイなネーちゃんたちのケツと脚が縦横無尽に画面に映し出され、そいつらが気持ちよくぶっ殺され、ド迫力のカースタントが映画の後半を彩る。まさにこの3点だけに金をかけたような映画。

そもそもカーアクションやスラッシャームービー、大写しにされるキレイなねーちゃん、バイオレンスというのは、エクスプロイテーションには必要不可欠な題材であって、『キル・ビル』はグラインドハウス的な映画のシークエンスを散りばめたタランティーノのおもちゃ箱という感じだが、『デス・プルーフ』はこれ見よがしな引用も少なく、まったくオリジナルな映画になっている。『バニシング・ポイント』がキーワードとして出て来るが、じゃあ『バニシング・ポイント』のような映画か?と言われると違うし、スラッシャームービーとタランティーノは言ってるが、『13日の金曜日』的なホラーではない。

見せ場だけだと時間が持たないからどうでもいいシーンを散りばめて上映時間を引き延ばしてる感じ。この感じも見事再現。その再現の仕方もタランティーノがもっとも得意とするリアルダイアローグだ。後半の会話シーンはそれをさらに脅威の長回しで撮るなど、凝りに凝っていて飽きさせない工夫がある。まぁ、それでも緩くてむずむずするんだけど(笑)

冒頭、傷だらけのフィルムに大写しされる女の脚。70年代の映画のフィルムの質感と音楽とクレジットの字体。このこだわりは『プラネット・テラー』の比じゃない。いかにも切れそうですよというジャンプカットやガタガタした感じも見事再現。現代の話であるはずなのに、そのムードはまさしく70年代だ。

ジュークボックスの中に一瞬だけ映るミザルーの文字やカフナバーガー、親子の保安官など、タランティーノ映画に出て来たアイテムもあり、さらにタランティーノも主演しており、熱の入れようがハンパじゃない。

後半のカーアクションだが、思わず声が出たし、出来の良さに涙が出た。今の映画はCGを使ってるが昔はちゃんとスタントマンがいてこういう迫力のあるシーンをマジに演じてた。そういったセリフも映画の中で登場するが、タランティーノはそういった想いをこの後半にぶちこんだ。

それにしてもラストにはマジで大笑いした。女3人が執拗に追い回して、ギャーギャー言いながら車をぶっ飛ばすのは町山智浩さんが指摘してるように『ファスタープッシーキャットキルキル』だが、ラストのあのシーンはラス・メイヤー以上の衝撃!呆気に取られた!

ただ最高だったんだけど『デス・プルーフ』には1つだけ疑問があって、『デス・プルーフ』の後半になると、急に映画がモノクロになって、フィルムの傷とかが一切なくなって、映像は普通の感じにある。んで、モノクロのシーンが終わるとカラーになって、一切傷とか無くなって普通の映像になる。だから『デス・プルーフ』の後半は映像だけ観るとグラインドハウスで上映されるような発色じゃなくなるのだ。あれはなんだったんだろう?誰か元ネタを知ってる人マジレス求む。

あともう1つだけ『デス・プルーフ』はやっぱり長い。だから『in グラインドハウス』じゃなくて、2本立てのフェイク予告編付き『グラインドハウス』として観たい。もっと短くなって、去年のベスト2にした『プラネット・テラー』との2本立てならば、『グラインドハウス』は間違いなく、今年のベスト1になるだろう(2本立てバージョンは東京でしかやってなかったし)

つーわけで、これから『デス・プルーフ』をもう1回観ようと思う。あういぇ。