トム・ヤム・クン!

トム・ヤム・クン!』鑑賞。

タイトルだけで喰わず嫌いしてるなら絶対に観ろ!

これはハリウッドのアクションを墓石送りにするだけじゃなく、

ジャッキーのアクション映画をも越える脅威の傑作!

「もうMTVの猿真似をして、格闘アクションを細切れにしてりするのはうんざりだ!」

と思ってた私にとって、『マッハ!!!!』という映画は嬉しかった。それだけじゃなくジャッキーのスタントアクションをついに越えるヤツが現れたと思った。『マッハ!!!!』は映画的に緩い部分もあるが、アクションシーンの撮り方は古き良き香港映画のそれと一緒で ,ゴードン・チャンなどがスタンダード化させた「上半身だけ映して細切れにするアクション」という悪しき風習をぶっ飛ばして、ちゃんと全体を映して、ワンテイクが長いアクションがたっぷりの秀作。

トム・ヤム・クン!』はそんな『マッハ!!!!』の監督&主演コンビが作り上げた作品だ。私は『マッハ!!!!』っぽい作品になってると思いハッキリ言って喰わず嫌いしてた。

でも…

これはホントに無茶苦茶おもしれー!!!!

つーか『マッハ!』を観てるくせに『トム・ヤム・クン!』を観てないとはどういう事だ!!

トム・ヤム・クン!』がとにもかくにもすごいのはそのアクションの撮り方。

デ・パルマばりのクレーンショット&長回しに超絶なアクションを取り入れる

という画期的な撮り方で、両方ともそれだけで大変なのに、2つやっちゃったよ!という超絶な映像。むしろ、何故それを今まで誰もやらなかったのだろうという目からウロコの撮影方法だ。

デ・パルマフィンチャーのようにカメラは縦横無尽に動き回り、しかもかなりの長回し。狭い所もカメラは入り込み、広く映すところはちゃんとワイドに撮るという、映像だけでもクオリティ高いのに、そこにジャッキーのスタントアクションと切れ味鋭いムエタイアクションが組み合わさってるもんだから、誰が観ても驚異的だし、それだけで鳥肌立ちまくりだ。というか、こんな映画今まで観た事ない。

特に驚異的なのが中盤の4分間の長回しだ。

敵のアジトに乗り込んだ主人公が1階から4階まで、階段を昇りながらボスのいる場所を目指すシーンがあるが、ここの長回しは今までに観た長回しはすべて墓石送りにされるほどすさまじい。『トゥモロー・ワールド』もCG無しの驚異的な長回しにチャレンジしたが、迫力や衝撃、興奮度は明らかに『トム・ヤム・クン!』の方が上である。

同じように敵を倒しながらビルの階段をかけあがっていく長回しと言えば、『最も危険な遊戯』が思いつくし、恐らくそれにインスパイアされたのだろうと思うが、『トム・ヤム・クン!』の長回しはそれをも霞ませる程すさまじい!!!

ハッキリ言って何の情報もなく観たので、いつカットが切れるのかドキドキしながら観たが、トニー・ジャーは高いところを駆け上がり、バク宙をし、物を破壊し、敵をなぎ倒し、階段に突き落とし、高いところから落下させたりするというアクションを全てワンショットでやっている。実際、主人公は階段を昇っていく途中に疲れがたまってるのだが、映画の設定とトニー・ジャーの演技の疲れがリンクし、ものすごい感動と興奮を生む。ステディカムでずっと追いかけ続けるのだが、そのアクションはすべて計算され、カメラの動きも考慮してあるので、ただ単に人が倒されていくというものではなく、アクション映画の演出として、様々な動きがおさめられている。

メイキングを観ると、実際の動きとカメラが映した映像を同時に見せてるが、カメラに映ってない部分でのスタッフの動きが主人公のそれに近いくらいすごかったりして驚く。実際トニーはあのシーンで30人くらい倒すが、その間に高いところから落下する人のためのマットを敷いたり、4階から覗くカットのためにそのマットを片付けて、トニーが壊した物を敷き詰めたりして、とても大変だ。この4分間の長回しはリハーサルに1週間、8テイクもやりなおし、4日間もかけて撮影されたらしいが、これぞ映画にしか出来ない芸術、これぞ誰もがやらなかった脅威のアクションだ。

もちろん長回しだけじゃない。『トム・ヤム・クン!』のアクションはほとんどカットが長く、そのすべてが驚異的なのだ。1番の見せ場はクライマックスなのだけれど、それ以外でも中盤にすさまじい長回しが1つあって、まずそれに驚かされる。これ観ると、これから細かく割った格闘アクションは全部ウソっぱちに見える。恐らく『トム・ヤム・クン!』にたどり着ける映画はそうないと思う。

もちろん、それもさることながら『マッハ!!!!』で緩かった部分も一気に解消され、ストーリー自体はハッキリ言って『ドラゴン怒りの鉄拳』である。主人公は大事にしていた象を誘拐され、大事な家族を殺され、復讐に燃える。『トム・ヤム・クン!』にはタイ人のアイデンティティと、どうでもいい強欲達のせいで世界から象が消えてるというタイ人の怒りが詰まっている。その復讐もシンプルイズベストだ。『ドラゴン怒りの鉄拳』と同じく主人公は終始怒りまくっている。
なんつったって、主人公で印象に残っているセリフは「象は何処だ?」だけ(笑)出て来る悪役も今の映画には珍しく極悪非道。人間のクズ中のクズ。生きてる価値もないようなカス。んでもって、それを徹底的に叩きのめすから最高過ぎる!

最初から最後まで復讐がたっぷりつまっていて、主人公には難関に次ぐ難関が訪れる。中盤から後半にかけての盛り上がりと見せ場の畳みかけはこれまでどんな映画にもなかった興奮の連続!これでもか!これでもか!と見せ場が連発されるため、一体いつこの映画は終わるんだ?と別な意味で心配してしまった。全編がクライマックスとも呼べる中で1番の見せ場である長回しを中盤に持って来た事もすごいのだが、それを越える見せ場!見せ場!見せ場の連発で息が詰まる!

トム・ヤム・クン!』はどのアクション映画にも無かった興奮と感動があり、

誰もがやらなかったアクションの撮り方があり、何よりもトニー・ジャー自身のアクションが新しい。

とにかく『トム・ヤム・クン!』は最高だ!DVDを買ってよかった!正解だ!

歴史に残るであろう超大作!と銘打ってるがそれはウソじゃない。

燃えよドラゴン』がカンフーを世界にアピールしたように

トム・ヤム・クン!』は世界にムエタイをアピールし、タイ人の怒りをアピールした!

ハリウッドのクソ映画なんて全部忘れた!『トム・ヤム・クン!』すげぇ!最高!

とにかく今までどの映画でも体験出来なかった世界が待っている!絶対に必見だ!