エイプリルの七面鳥

エイプリルの七面鳥 [DVD]

エイプリルの七面鳥 [DVD]

9時に起きて『エイプリルの七面鳥』鑑賞。エイプリルという女の子が仲違いした家族のために感謝祭用の七面鳥を作るだけという映画。トム・クルーズと結婚するまえのケイティ・ホームズが出演している。

バイト先の同僚に「大好きな映画だからオススメする」と言われて借りたんだけども、もし、普通に生活してたら絶対に観ないであろう部類の作品。だって、七面鳥を焼くだけの映画でっせ!(笑)

料理も出来ないボンクラ娘が感謝祭の七面鳥を焼くだけの実にシンプルなプロットだが、その娘と家族の背景やカットバックの使い方が上手いので、ちゃんと映画として魅せてくれる。

彼女の家族は田舎に住んでいるが、彼女は家を飛び出したようなので(ニューヨークかな)その家族が家に来るまでに仕上げなければいけない。料理に不慣れなうえにいきなりオーブンが故障する!感謝祭なのでアパートの管理人も実家に帰っていない!さらにみんな感謝祭に向けてオーブンを使ってるので、誰もオーブンを貸してくれない!もう少しで家族が来てしまう!どうしよう!という風にただ七面鳥を焼くだけの話なのに、ちゃんとハラハラしたし、ラストまで気が抜けないように作ってある。

撮影はデジカメ。狭いアパートの中でありとあらゆるカメラワークをするためには機動性充分のデジカメがいい。照明もゼロ。だから逆光も平気であるし、何しろ部屋の中が暗いとホントに暗い(笑)だが、これは恐らくヌーベルバーグとアメリカンニューシネマの影響だろう。ラストに写真のスライドショーで物語を紡いでいるが、これは『明日に向って撃て!』でもやってたし。

エイプリルの七面鳥』はいっさい説明がない。どうしてエイプリルと家族は仲違いしたのか?なんであんなに母親はイカれてるのか?なんで七面鳥を作る事にこんなに必至なのか?エイプリルの彼氏は一体何なのか?『エイプリルの七面鳥』は日常を覗き見したような映画だ、だからこれらを説明してしまうと、映画のマジックが消えてしまう。デジカメを使って、リアルに撮ってるのに、それが全部嘘くさく感じてしまう。だからと言って説明もせずに映画が進んだら消化不良でイライラしてしまうだろう。

ところが、ところがである。『エイプリルの七面鳥』はその説明不足の部分をものすごくリアルな演出で説明しているため、物語に嘘くささを感じないし、ちょっとした伏線が徐々に回収されていくので、画面上で物語的に何も起こらないのに、グイグイ引き込まれていく。1つ例を出すと、この様な伏線がある。

・エイプリルのお母さんはイカれてる。
・何かの病気になったらしいのだが、その病気が何か分からない。
・ただ先は長くないようだ(だから仲違いしてるけど、もう会えないかもしれないから感謝祭を口実に呼び出した)

なんでイカレてるのか?何の病気なのか?という、家族の中だけで分かってるような裏設定は画面を観ている観客には大凡分からない事だが、それを全部丸ごと説明してしまうと、とたんに映画を観ている事を意識してしまって、リアルでも冷めてしまう事が多々ある。

エイプリルの七面鳥』はその病気がなんなのか?というのをあるアイテムを使ってさらっと説明するのだが、それがリアルで、無理矢理感動させようとしておらず、伏線までも回収して観ている方を納得させてくれる。

もちろん回収されない伏線もあるし、明らかに時間を伸ばすためのシーンもあるし、こういう映画だからラストも無理矢理な感じがあるが、どういう人に見せるのか?という事も意識しているし、200億近く金かけて、クズみたいな映画が出来上がってる事を考えると、『エイプリルの七面鳥』は実に好感が持てる映画になっている。

調べてみたら監督が『ギルバート・グレイプ』の脚本家だと知って納得。あ、そう言えば、今こうダラダラ書いた事ってのは、表層評論ってヤツなのかな?まぁ、これは評論ではないから表層感想ってヤツ?まぁ、それはどうでもいいとして(笑)

エイプリルの七面鳥』は意外と評価が高い。確かにけなす要素があんまりない。そもそも「これは映画じゃない」って言い出したら、じゃあ映画って何なの?っていう方向に行くし。

ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を観て「これは映画じゃない」っていうヤツも居るようだけど、「これは映画じゃない」っていうんだったら、じゃあ、あんたらはこれ作れんのか?って話でしょ。あんたはカメラと数人のスタッフだけを従えて、150億稼げますか?って話だもん。宣伝のうまさがどーのこーの言われてるけど『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』恐かったもん。だから「あれは恐くなかった」って人は、それ止まりな人なわけで、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の事はどーのこーの言わないで欲しいよ、まったく。

話がそれたが『エイプリルの七面鳥』は『イン・ディス・ワールド』とか『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』とか、好きな人にはオススメ。女の子にファンが多いみたいだから、男には『イン・ディス・ワールド』をオススメするけど。あういぇ。