マイ・ブルーベリー・ナイツ
10時15分に『マイ・ブルーベリー・ナイツ』鑑賞。待望のウォン・カーウァイ監督の新作。全編英語、音楽にはあのライ・クーダー、そしてハリウッドの豪華スターを起用してるので、今までの監督作の中で1番のメジャー作かもしれない。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』はさすが1番のメジャー作だけあって、ほぼ、ウォン・カーウァイのショーケースだ。ウォン・カーウァイが得意としてたが、評論家に指摘されて一時期封印した手法も全部復活。そしてプロットも設定も完全にウォン・カーウァイの世界。どこを切ってもウォン・カーウァイ印。だからそれまでにウォン・カーウァイの作品が嫌いだった人は『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を好きになるはずもないし、逆に『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を好きになったら、今までのすべてのウォン・カーウァイ作品をオススメ出来るというわけだ。
だから『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を観て「退屈だ」とか「ヌルい」とか言ってるヤツの意見は無視して結構。むしろ、嫌いならそれ以上の事を言うな!○○○○とかいうクソ自称評論家のバカ*1は死ね!
さて、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』はずばり失恋がテーマである。そして、その失恋を忘れるため、主人公はジュード・ロウが経営してる店のブルーベリーパイを喰いまくる、んで、自分自身を変えるために旅をして、様々な人に出会い、再び店に戻って来るというなんのひねりもない話。これを聞いて真っ先に思い出すのは『恋する惑星』だ。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は、『恋する惑星』の登場人物の行動と性格を全部足して、足りない部分を拡張させたような作品なのである。
『恋する惑星』の金城武は失恋をする。彼女の家の前をウロウロしたり、いじいじしたりしている。んで、失恋してから彼女の誕生日が賞味期限のパインの缶詰を買いまくって、喰いまくる。ファーストフードの店に入り浸り、元カノの事が延々忘れられない。忘れるためにいろんなところに電話しまくるのだが、結局誰もつかまらずに、バーで飲んだくれる。さらにフェイ・ウォンは唐突に旅をして、唐突に帰ってくる。だがフェイ・ウォンがどういう旅をして、どういう人と出会ったのかはまったく描かれない。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』では、その旅が映画の中心となる。主人公はありとあらゆるところに行き、バイトをして、人と出会い、さらに別な場所に行き、バイトをして…というのを繰り返す。失恋は時間が解決してくれるというが、まさにそういう映画だ。
ウォン・カーウァイの作品で特徴的な演出はモノローグの多様、時計のクローズアップ、風景の早回し、アンドリュー・ラウが考案したとも言われているコマ落としなどがあるが、それも全部随所に出て来る。一時期封印してたが、原点に還ったのか、全部てんこ盛りにさせている。
ウォン・カーウァイの作品は飛び切りポップな作品と艶がある作品の2つに分かれていて、前者には『恋する惑星』『天使の涙』『いますぐ抱きしめたい』があり、後者には『欲望の翼』『花様年華』『ブエノスアイレス』などがある。個人的に『天使の涙』以降、飛び切りポップな作品を作ってなかったので、そういった意味でもウォン・カーウァイは原点に戻って来た感じがある。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は女の子向きの映画だと思われてるかもしれないが、これは間違いなく男が観るべき映画だ。何故かと言うと、
私が前に経験して、こういう風になればいいなぁと思ってた事が映画の中で全部実現するからだ。
相手がロクでもない男を作って、何故か捨てられて、まぁ忘れられなくなって、んで、その男の事ぶっ殺すまで行かないけど、殴ってやるくらいの事は思うわけで、でも出来なくて、どうにかして復讐してやろうかくらいの事は思ってて、まぁそれも出来なくて、そんな事がありましてねぇ、あの時はホントに死んでくれやって心底思ってたんですけど、
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』はそれを全部やってのける!ストーリーに触れるから言わないけど、
「お前は薄情な女だ!よくあいつが惚れたもんだよ!」
と、知人に言わせるくらいの事をやってのけるんですよ!これにはマジで感動したし、興奮した!これは辛い失恋した事ない人や相手の事殺したくなるくらいの恋愛をした事ない人には絶対に分からん!だから○○○○っつー自称評論家のバカ*2はわかんねーんだよ!
っつーわけでそんな個人的な思い出も詰まった『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は
本気の恋愛をして、飛び切り辛い失恋をした男が観に行くべき映画だ!
オレは泣いたぞ!心底泣いた!うおー!!!!!進歩してないとかいう意見も出て来るかもしれんが、これは『恋する惑星』に並ぶ、ウォン・カーウァイの最高峰だ!
もう艶がある映画はいらないんで、こういうかわゆすな映画を作り続けてくださす。あういぇ。