リンダ リンダ リンダ

リンダリンダリンダ [DVD]

リンダリンダリンダ [DVD]

7時に起きて、朝飯をしっかりと喰らい、8時から『リンダ リンダ リンダ』鑑賞。

すげぇよかった!感動させようとしてないのに、感動した。

リンダ リンダ リンダ』は設定こそ『スウィングガールズ』になんとなく似ているが、それとは真逆な作品で、それこそ映画的な興奮、感動は一切ないが、映画を観終わる頃になると深い感動に包まれる。恐らく『スウィングガールズ』が公開された事で、あれとは方向性を変える事にしたんだろう。「女子高生がブルーハーツ!?ボーカルは韓国からの留学生!?」というキャッチーコピーから、想像したのはドタバタしたバンド結成のコメディだが、実際に作品を観ると、学校内で起こる日常を拡張したものに過ぎず、演出も映像もものすごく淡々としている。和製『エレファント』と呼んでもいいくらいリアルだ。

リンダ リンダ リンダ』には説明的なセリフなどが一切ない。この登場人物には何があったのか?一体、どういう過去があったのか?恋人は居るのか?仲がいいのか?という事が全く説明されずに進む。だが、さりげない演出と、細かいディテールで、それを次第に明らかにしていく。普通私たちも人間と初めて接する時はそんなもんだ。それを山下監督は映画の中で見事にやってのける。

まず、山下監督はセリフを喋らせる演出が恐ろしく上手い。実際、どこまでがアドリブで、どこまでが演出なのか不明。女優達のさりげないしぐさや言葉の言い回しまで、こちらが日常で体験してるものに近い。大谷健太郎なんかもそうだが、セリフを喋らす事がごく自然に演出出来るならば、このような日常を描いた作品は絶対的に勝利する事が出来る。電話が来て『電話だよー』って呼び出されるシーンや、子供部屋が狭いので、そこで練習したりするシーンなんかは、恐ろしくリアルで、居間で電話を取るシーンなんかは、携帯に電話したれや!って思いながらも、ちょっとニヤニヤしながら、こっぱずかしい感じで観てしまう。

演出は全体的に淡々としており、シリアスなシーンもなければ、過剰に笑わせたりする事もなく、全てが一直線に進んで行く。長回しを多様しているものの、冒頭の横移動以外、カメラは固定されていたりして、奇を衒う事が一切ない上に映画的なカメラワークは皆無。

映画の最後の方で映画的なプロットになり、女優達のバンド演奏で映画はクライマックスを迎える。圧巻なのは『リンダリンダ』の演奏シーンよりも、『終わらない歌』のイントロ一発である。あのカタルシスはなんなのだろうか?この辺はさすがブルーハーツと言ったところだろう。残念ながらこのシーンは学校の風景のモンタージュになってしまったが、ここも演奏シーンで突っ切ってほしかった。

調べてみたら、なんと山下監督は『天然コケッコー』の監督。観たかったが、見逃してしまった作品なので、観てみようと思った。あういぇ。