隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS


10時30分より『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』鑑賞。

オリジナル版は黒澤明の中でも最高峰の大傑作で、まさに“ミッション・イン・ポッシブル”な状況を、あの手この手で突破し、そこにアクションとユーモアとスリルとサスペンスを混ぜ込んだ娯楽映画の見本のような作品。当然、オリジナル版で完成されてしまってるので、これをリメイクするとなると、ホントに隅から隅まで完コピするか、ガラッと変えるしかないと思っていたが、樋口監督は後者を選んだ。

前半はほとんど一緒。1番最初に小悪党2人が脱出するところでひと盛り上がり見せ、金を見つけるくだりから、その後の関所のところまではだいたい同じ。もちろん細部は全然違う。後半になると、全く完全オリジナルな作品となり、ド派手な見せ場で構築する最近の時代劇になってる。血しぶきはあるし、体は真っ二つになるし、ここまでガラッと変わると、オリジナルを知ってる人は逆に「どうなっていくんだろう?」と別なおもしろさを味わえる事だろう。

実際、私もそうで、証言回しの扱いになってる松本潤宮川大輔の2人に姫が自分の正体を早々明かすところには驚いた。もちろん、真壁のキャラクターも力でねじ伏せるだけのキャラになっていて、それを姫様が止めたりするシーンがあり、森田版の『椿三十郎』でも、三船敏郎が若者の意見に耳を貸すという風に変わってる事から、ああいう「オレについてこい!」みたいなキャラは今の時代にあってないという解釈にもなってる。

カメラワークがおもしろくて、森を走り抜けるシーンは足下を猛スピードで映してるし、オリジナルではワイプだった場面転換が、リメイク版では「筆で画面を塗りつぶしたら、次のシークエンスになってる」ような加工がされている。ぶっきらぼうで我が強かった姫を長澤まさみに演じさせたのは大正解だ。阿部寛宮川大輔も非常に良い仕事をしており、こういうところはリメイク版の面白味がある。松本潤のキャラクターはどうでもいいが、若い客層を集めるためにはアリっちゃアリだと思われ。

個人的な感想を言わせてもらえるならば、真壁六郎太が自己紹介するところはもっとユニークにしてほしかったし、せっかく宮川大輔というキャラがいるのに、お笑いに転化出来なかったところも不満っちゃ不満。何よりも松本潤とは年齢が離れすぎていて、あまり相棒な感じも出てなかった。しいて言えばそれくらいで、時代劇エンターテインメントとしてはなかなかの仕上がり。この手の時代劇だったら『あずみ』以来の作品かもしれない。しかし、純愛がどうのこうの流行ってる中で日本の文化である時代劇が未だに作られてるのは奇跡なのかもしれん。90年代に香港が武侠映画に原点回帰したように、日本も時代劇をもう1回見つめなおすというのもいいのかも。あういぇ。