迷子の警察音楽隊
10時45分より『迷子の警察音楽隊』鑑賞。もうDVDが出ると思うが、新潟は今頃の公開だよ!んで、観たわけなんだけども…
素晴しい!こういう映画を若者が観なきゃダメ!
っていうか、くっだらない映画を観るくらいなら絶対にこれを観ろ!
エジプトの警察音楽隊がアラブ文化センターで演奏するためにイスラエルにやってくる。ところが隊長がほんの1文字だけ地名を間違えた事で、何も娯楽がない田舎町に迷い込んでしまう。そこで一晩過ごさなければならなくなった音楽隊と現地のイスラエル人との1日を描いたのがこの作品。
とにかく全編にわたって完璧にすべてが表現された作品で、全編笑いに包まれてるが根底にあるものは、人と人とは決して分かり合えない。分かり合えたと思っても分かり合えずに出会って、そして別れていくというテーマ。1番この作品にテイストが近いのはジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』だろう。説明的な描写は1nanoもなく、間とセリフとキャラクターのちょっとした仕草を細かく積み重ね、それぞれの心情などを的確にこちら側に伝える能力に監督は長けてる。
かつて井筒監督は『息子のまなざし』を観て『人間てな、そんなに喋らへんねん』っていう名言を残したが、その通り、実は人間ってそこまで喋らない。自分の事も心の奥にしまってる事も、人を好きだという事も憎いという事も、だから、それらの事を思ってたとしたら、自分の心情はナレーションで説明してしまう。でも、それは映画的な演出とはほど遠く、単なる説明であり、演出ではない。『迷子の警察音楽隊』は主人公達が気まずかったり、惹かれたりしても、それを口に出さず、全部何気ない仕草から汲み取れるように完璧に演出している。かつて、こんなに繊細な映画があっただろうか。
ロングショットで間を持たせるという演出は北野武や黒沢清に似てる気もするが、この独特な笑いはやはり根底にイスラエルとエジプトの関係があるからだと思う。平和だけれども、本当はあまりいいように思ってないそういう嫌な部分を笑い飛ばしてやれ!みたいな精神すら感じる。
キーポイントは音楽。いい音楽は国境を、人種を越えて響く。何かを変える力がある。自分の国の言葉ではないカタコトな英語を使ってコニュミケーションを取る主人公達だが、何よりもお互いが通じ合うのは音楽なんだなぁという事。
とにかくあまり内容や細部について言及出来ないが、評判通りの傑作。絶対に観ろ!
つーわけで、いい映画すぎたので、仕事に行く気がまったくおきまへん。あういぇ。