ダークナイト


9時15分より『ダークナイト』鑑賞。

参った!痺れた!この完成度に、このメッセージ性!今までのヒーローもんはウソだ!ニセモノだ!『ダークナイト』恐るべし!間違いなくクリストファー・ノーランの最高傑作!そして『バットマン』シリーズで言っても『リターンズ』のレベルにまで到達している傑作!

私はクリストファー・ノーランという監督が好きなのかどうか分からなかった。『フォロウィング』と『メメント』は個人的に大好きなのだが、その後の作品が全部駄作扱いで特に『プレステージ』には怒りすら沸いた。

バットマンビギンズ』も同様で、どうしてもクリストファー・ノーランが撮る意味が見出せなかった。だが『ダークナイト』を観て分かった。ノーランは『ダークナイト』を作るために『ビギンズ』を撮ったんだと。

つまり、説明的な描写、、というか説明と設定をズラズラ並ばせただけの『ビギンズ』は、『ダークナイト』にも必要不可欠な要素だったはずだ。ところが『ダークナイト』は2時間30分の間、その説明的なシーンが一切無い。何故ならば『ビギンズ』で説明的なシーンを使い切ったからである。だから2時間30分の間、息も吐かせぬ展開で観る者をグイグイ引っ張って行くという驚異的な娯楽映画になった。

それだけじゃない。脚本、完璧。セリフの1つ1つが何かのお告げというか、神の言葉というか、いちいちグッときた。まず登場人物が物語の中でこれほどまでに完璧に機能してる映画を私は他に知らない。さらに脚本だけで完成している物語をちゃんと映画にする意味があるように撮っている。ヒース・レジャーが注目されているが、それ以外も極限の演技を見せてる。

ノーランお得意の光と影の使い方は恐らく頂点にまで達し、極端なCGメインの映像ではなく、役者の演技を中心に据えているので、CG使えば何でも出来るよーという作品には決してなっていない。

これを観てしまうとホントに今までのヒーロー物がバカに思えて来る。何故かと言うと、今回の『ダークナイト』は悪も正義も欠点と良いところがあり、表裏一体でそれは人間の中にどっちも必ずあるという事がきっちり描かれているからだ。

スターウォーズ』の何が素晴しいかって、人間は正義よりも悪に惹かれるという事がしっかり描かれているからで、そういう映画を撮る監督というのは非常に好感が持てるのだが、『メメント』にもあった「1度悪に染まってしまい、そうする事でしか生きられない人間」という部分が、『ダークナイト』では鋭さを増し、強烈なメッセージをもってる。

それを体現したのがヒース・レジャー。恐らくものすごい数の人がこれを言ってるだろうが、『ブラックレイン』の松田優作みたいな、主役を喰うくらいの強烈な個性で、金のためにとか、世の中に対するとか、そういうの関係無く、単純に悪として生まれた男を100%以上の力で演じきった。『ドラゴンボール』のベジータですら情を見せたりしたのに、こちらはそんなの無し。

「正義やモラルを口にする人間こそ偽善だ」というセリフに感動を覚えたが、彼の言ってる事に説得力がありすぎるため、ちゃんとバランスを取るために、フェリーのくだり(観てない人もいるためにどういうシーンかは伏せます)を印象的なシーンにしたり、上手過ぎる。

だって、今回のバットマン、、、かっこ悪くね?好きな女取られて、軽く嫉妬してたり、彼のせいで犯罪率は増加してるとか出てるし、新人検事に美味しいところ持ってかれてるし、手紙の内容見ないで勘違いとかしちゃってるし、

いや、これはけなしてるんじゃなくて、非常に良い事だと思うのよ。基本的に正義の塊っていう人間はこの世にはいない。だからバットマンだって、嫉妬したり、人を憎んだり、疲れたり、弱音吐いたりしてんだもん。それが人間だもん。光と闇があって、それは決して混ざり合わない。両極端なものは決して混ざらない。んで、それはコインの表と裏のように表裏一体で、どっちが表に来るだけなんだよ。人間ってのは。

正直、今年に入って『クローバーフィールド』の次に「もう1回観たい!」と素直に思った。『ミスト』『ノーカントリー』『ランボー最後の戦場』『シューテム・アップ』『インディ・ジョーンズ』そして『ダークナイト』とついに出揃ってきた感がありますなぁ。

とにかく映画の完成度だけとったら頭1つ抜けて今年のベスト1個人的な嗜好や衝撃度から行くと『クローバーフィールド』と『ミスト』という事になるんでしょうなぁ。