周りの色に馴染めない出来損ないのカメレオン

Please Mr.Lostman

Please Mr.Lostman

『さんま&マッキーの世界に1つだけの歌2』という番組を鑑賞。芸能人の人生を変えた1曲を紹介する番組らしい。前にやったヤツはちなみに観ていない。私は曲に人生を変えられた事は無いが、救われた曲を選べと言われたら、

スピッツの『フェイクファー』になるだろうなぁ。私が好きになった人に対しての気持ちは全部この歌に込められてるし、正直、誰かを好きになった時はこの曲の歌詞のフレーズ全てが、私の全てであって、これ以下でも、これ以上でもないのだけれど、

『唇をすり抜けるくすぐったい言葉のたとえ全てがウソであってもそれでいいと』

というフレーズは、ホントに相手を好きになったら、騙されても、どうなってもいいという感情がどっかにあり、まぁ、実際騙されたら死ぬほど傷つくんだけど、もうそれでもいいやという心境になってしまう。このフレーズには「傷つけられても良いや」とか「騙されても、それでも好きだから許せてしまう」とか、聞き手の感性によって、フレーズが膨らんで行って、受け取る側で2倍にも3倍にも膨らむ。

私は基本的に歌詞がいいなぁと思うアーティストは極端に少ない。B'zやMr.Childrenの歌詞はすごいと思うけど、じゃあ、感銘を受けるかというと、まったく皆無である。

それは何故かというと、今、日本で売れてるアーティストの歌詞のほとんどが、

そこに書かれてる事、そのままだからだ。

今、説明したようにスピッツの歌詞のほとんどが、そのフレーズの中に3つくらいの感情があったりして、それを1つの言葉に集約させる。


Mr.Children/Worlds end

Mr.Childrenの『Worlds end』という曲は最近のMr.Childrenの中でもダントツに好きな曲だが、2番のサビの比喩(自動販売機のくだり)に関して言うと、何小節にも渡って長いし、1つの答えしかないし、それはもっと短い言葉でも伝えられるんじゃないか?って思ってしまう。「捨てるのにとって置いたケーキ」のくだりは非常に好きなんだが。それでもやっぱり長い。それは桜井和寿がそういう比喩が好きだからそうしてるのだろうけど。

1つのフレーズに色とりどりの様々な感情や情景を浮かばせ、それを聞き手に委ね、様々な解釈を生ませるというのは、非常に難しく、それを日本でやってのけてるアーティストは少ない。



the pillows/ストレンジカメレオン

the pillowsの『ストレンジカメレオン』の歌詞。この曲はある人にとってはラブソングにも受け取れるだろうが、実は違う。インタビューなどで分かる事だが、この曲は自分達の音楽が売れない苛立ちと、自分がやってる音楽への違和感、さらに売れなくてもいいから、自分のやりたい音楽をやり、それを聞いてくれているファンが居る事の喜びという、非常に説明しにくい、ものすごい複雑な感情の歌詞になっている。もちろん、そういう事をストレートに書いたところで歌詞としてはまったくおもしろくない。

だから『ストレンジカメレオン』には様々な比喩があり、それによって、上記の感情をぶち込んでいる。

『優しい歌を唄いたい 拍手は1人分でいいのさ それは君の事だよ』

というのは「自分の音楽が売れなくても、聞いてくれるファンが居てくれれば充分」という風に解釈出来る。山中さわおが込めたのは、恐らくそういう想いだろうが、それとは別にもちろんラブソングとしても充分通じるフレーズにだって成り得る。解釈や様々な感情があるというのはそういう事なのだ。まぁ、全部の歌詞を説明してもいいのだが、そうするとトンでもない長さになるのでやめる。

「歴史には価値のない化石の1つになるのさ 君と出会えてよかったな」というのもそういう事になる。「売れなければ歴史には残らないだろう、それでも、僕の音楽を聞いてくれてるファンに出会えて良かった」というのが、恐らく正しい感情のはずだ。

『ストレンジカメレオン』どころか、この曲が収録されたアルバム『Please Mr. Lostman』には、太宰治の『人間失格』に匹敵するほど、絶望と孤独へのフレーズがてんこ盛りで、

タイトル曲のフレーズ。『やっと間に合う高さの安らぎに』というのは個人的に、首つり自殺とか飛び降り自殺を彷彿とさせる。ただ、それはあくまで私の解釈であり、他の人だったら、他の人の経験や感性によって、別な情景や感情になっていくはずである。

私が好きな歌詞というのは1つのフレーズに複雑な感情や様々な想いが重なった歌詞があり、実際、そういう事をしているアーティストというのは数えるくらいで、さらに、そういう複雑な歌詞を付けると伝わらず、分かりやすい歌詞しか受け入れられないという悪循環に繋がっている。もちろんストレートに言葉をぶつけてくるのもいいのだが、なんかさ、そんなアーティスト多いじゃん?だから、もっと文学的な歌詞を書く人が居てもいいと思う。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとかACIDMANとか藍坊主とかが最近だといい歌詞書くかな。

だからさ、

辛い時辛いと言えたら良いのにな 僕たちは強がって笑う弱虫だ

とか、誰にでも唄える事唄ってんじゃねぇよ!辛いときは辛いって言うだろ!号泣してるヤツだっているだろうし、強がるどころか、そんなもん屁とも思ってないヤツだっているんだよ!「辛い」にも種類があって、重さも鋭さもあるだろうが!それをちゃんと掘り下げて唄え!

僕だけじゃないはずさ 行き場の無いこの気持ちを 居場所のないこの孤独を抱えているのは…

「行き場の無いこの気持ち」だとか「居場所のないこの孤独」だと?

お前は中学生か!ちゃんと『ストレンジカメレオン』を聞いてから出直せ!

Mr.Childrenもカバーしてるお(^ω^)