UNICORN再結成?

ユニコーン15年ぶり再結成!全国ツアーへ
http://www.sanspo.com/geino/news/090101/gnj0901010503003-n1.htm

この文字を見て、待ってました!と言った人がこの日本に何人居たのだろうか。今まで幾度となく再結成して欲しいバンドのアンケートの上位に名があがっていたUNICORNが満を持して再結成する。。。のか、どうかはまだ分からないが、それでも、5人が揃ったこの動画はファンにとって衝撃的だったんじゃないだろうか。http://www.uc2009.jp/

伝説のバンドと言われれば、日本語ロックの黎明期に登場したはっぴいえんどやジャックス、ブリティッシュロックを持ち込んだ矢沢永吉のキャロル、ハードロックとファンクを自在に操ったサディスティック・ミカ・バンド佐久間正英が在籍していたプログレバンドの四人囃子、分かりやすいところで言えば、その後のフォロワーの多さからブルーハーツBOØWYなんかもそうだろうし、フリッパーズ・ギターフィッシュマンズサニーデイ・サービス、ジュディ・アンド・マリーなんかも伝説のバンドなんだと思う。ただ、個人的に言わせてもらうと、日本語ロックの黎明期に現れたバンド以外で、ホントに伝説のバンドと呼べるのはUNICORNであった。

UNICORNの何が伝説なのかと言われれば、フォロワーが居ないところだ。ジュンスカもどきやブルハもどき、ミスチルもどきなどは散々その後に現れてるが、UNICORNにがっつし影響を受けたバンドはハッキリ言って居ない。しいて言えばバカっぽい事を大真面目にやるウルフルズがそうなのだろうが、ブラックミュージックをバックグラウンドに置くウルフルズビートルズをバックグラウンドに置くUNICORNでは根底が違うため、やはり正当なフォロワーとは呼べない。UNICORNの音楽はいい意味でのバカっぽさの中にかっこよさが共存していたところにあり、さらに曲によってスタイルがころころ変わり、これこそがUNICORNだ!という焼き印がなかった。そういった意味ではくるりが似たスタイルなのかもしれない。

私はブルーハーツBOØWYジュンスカも心の底から好き!とは言えないが、それはUNICORNが好きすぎたという事もある。もちろんリアルタイムではなかったので、後追いになったが、私の中でUNICORNはバンドブームの中では抜きん出ていた存在になった。フロントマンを置かないスタイル、ビートルズの実験精神を受け継いだアレンジ、メンバーの個性がそれぞれに出た歌詞世界、5人でCDと変わらないクオリティを再現する演奏力、今、聞いても決して古さを感じないし、若い人が聞いても単純にかっこいいと思うんじゃないだろうか。

今回のニュースはビートルズが『リアル・ラブ』を発表するようなもんだろうが、それにしても新曲は気になるし、ツアーをするという事は当然DVDも発売されるわけで、今から楽しみなのだが、ここで、個人的に、今、UNICORNで好きな曲を挙げてみる事にする。いろんな音楽を通過してきてから聞くと、やはりとんでもないバンドだった事が分かったからだ。


ケダモノの嵐

ロックが世界的にダメになってしまった80年代を通過してから、90年に発表したUNICORNの傑作。この曲の衝撃は当時、どのように受け入れられたのだろうか。U2以降に多用されてしまったリバーブの効いた甘っちょろい音質を打破するように、UNICORNはこの曲を作り、70年代のロックこそ、本物であると宣言してしまった。ビートルズやクリームのように右にドラムとベースとエレキとアコギを入れ、左にボーカルとキーボードを入れるというある意味で斬新な事を当時していて、これはイヤホンで片方ずつ聞くと分かるが、音質だけでなく、ミックスまで60年代〜70年代のままにしてしまうというスタイルは絶対的に異質だったと言える。しかも徹底したアコギによるタテノリ、テンション系のコードを混ぜ、ファンキーにも聞こえるこの曲はとにかく今聞いても鳥肌が立つほどかっこいい。ライブでもかなり演奏され、CDもライブビデオにも収録されているが、youtubeにはこのどうしようもない音質のヤツしかなかったのが残念である。西川による言語感覚の素晴らしさはこの曲でも抜きん出ていて、「鳩尾に喰い込んだ 真昼の別れ話」やサビ終わりの「一天にわかにかき曇る」などは、どの作詞家でも生み出せない名フレーズだ。

車も電話もないけれど
後期UNICORNには名曲が数多いが、中でもこの曲は飛び抜け。サビメロのクオリティの高さたるやハンパじゃなく。ロックから外れようとするアレンジも相まって、一度聞くと印象に深く残るだろう。歌詞がおもしろくて、時代設定も状況も良くわからないけれど、「大きな黒船に乗って来た」と出てくる事から、まだまだ文明が進んで居なかった日本にペリーが来たという設定とも取れる。

エレジー
宮粼勤事件そのまんまの生々しい歌詞が素晴らしいが、気の抜けたようなサウンド渡辺満里奈の囁きがさらにその怖さを引き立てる。サウンドが気が抜けてて、歌詞が殺人鬼って、もしかしたらビートルズの『Maxwell's Silver Hammer』が元ネタかもしれないが真意は不明。オタクという言葉がねじ曲がってしまった時期に発表されただけに今聞くと怖さよりもおもしろさが目立つ。


すばらしい日々

実質UNICORNのレクイエムになったシングルにして、未だにCMでも使われたりし続ける名曲中の名曲。イントロのリッケンによるフレーズがビートルズのそれを思わせるが、サビでの半音を多用したメロと複雑きわまりないコード進行がUNICORNらしい。なのにもかかわらず一度聞いたら忘れられないくらいキャッチーで、この辺は奥田民生の作曲能力の高さを伺い知る事が出来る。

与える男

後期UNICORNの中でも、奥田民生の方向性が垣間見える楽曲。『服部』から流れるハードロック指向が、ラストアルバムの一曲目にして大爆発。パワーコードによるロックンロールのクリシェ、徹底したダウンピッキング。あげちん男の不思議な力を真っ正面から歌いきってるのもUNICORNらしい。民生の伸びやかなボーカルもあいまってサビメロはかなり力強く。カラオケでこれを歌うとキーの高さに驚く。ユニコーントリビュートでは吉井和哉がカバーしたが、あまりに完成度が高かったためか、完コピになってしまっている。


ニッポンへ行くの巻

外国人が見る日本の不思議というテーマは奥田民生のソロ曲『BEEF』でも出てくるが、こちらはサウンドもチャンキーで、歌詞や音も多国籍の雰囲気がある。GLAYのJIROがこの曲をお気に入りと公言していて、人生の中で好きなアルバムとして、この曲が収録されている『ヒゲとボイン』を挙げていた。ユニコーントリビュートではグレイプバインがカバーしているが、こちらはグレイプバインらしさが出過ぎてるために、原曲のスピリットは消え失せてしまった。

いかんともしがたい男
バイトをずる休みするために会社に電話をするというくだけにくだけた歌詞とビートルズの『I Am The Walrus』をパスティーシュしたようなサウンドが魅力。ストリングスがマヌケで全体がけだるいが傑作。