メル・ギブソンに先駆けたキューブリックの演出
- 作者: 共同訳聖書実行委員会
- 出版社/メーカー: 日本聖書協会
- 発売日: 2005/12
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
私が聖書に惹かれたのは、やっぱり血みどろのバイオレンスと、文学的な要素を排除したセックス、嫉妬による殺人や欲望、誘惑、ダマし合い、拷問、陵辱、強姦、男色、近親相姦など、タブーや人間の薄汚さが、ありとあらゆるところに詰め込まれてるからでしょう。人体破壊もあって、頭がカチ割られたりするし、さらに世界の終わりのビジョン。たまーに神がブチ切れて、村燃やしたり、洪水起こしたりして、その度に崩壊寸前まで行くので、ディストピアな世界がガンガン出てきます。あーすげーかっけー。
んで、なんとなーく聖書を読んでから『パッション』を見たんですけど、キリストの受難だけを描くんだったら、やっぱり2時間は長いっすよ。だって、拷問まで52分、さらにそこから1時間の拷問でしょ。間の裁判のくだりがいらない気がするんだが、オレだけなのかなぁ。他の細かいエピソードを見せるのは好きだし、実際キリストが逮捕されるまでは聖書に忠実に描いてるから聖書読んでると、「おおっ!こういう風に映像化したのか!」という感動もありますし。ちゃんと弟子達逮捕される夜に居眠りしてるし、ユダはキリストに接吻するし、自殺もするし、ただ、ホントに良くわからないシーンもあるんですよね。キリストが十字架にかけられた後、地震が起こるじゃないっすか?あれなんすか?
それにしても、十字架を背負ったキリストが延々歩き続けるシーンは好きだ。別に何が起こるわけでもないけど好きだ。十字架に磔にされるシーンも結構好きだったりする。あとムチでしばかれるのも。それにしても、映画的なリアルさを史実の中にぶちこんだのメル・ギブソンの手腕は評価しなくてはならないだろう。そもそも、これキリストじゃなかったら成立しない話である。だって、ただ拷問され続けるだけなんだもん。
『パッション』は絵として美しくなるように配置されたシーンがたくさんあり、中でも十字架を背負うシーンでは、ホントに十字架を背負っていて、非常に1枚の絵としてかっこいい。本当は十字架の横の部分だけを持つのに、ちゃんと十字架を背負っているのである。まぁ、棒だけ持ってたってしょうがないしね。
んで、驚くのが『時計じかけのオレンジ』でアレックスがキリストの受難を妄想するシーン。そのシーンでキリストは十字架じゃなくて、ちゃんと棒だけを持っている。これには驚いた。完璧主義者で、『バリーリンドン』でも当時の暮らしの絵に近づけようと、自然光とロウソクの明かりだけで撮影したのは有名なエピソードだが、ほんの数十秒だけのシーンでも、しっかり史実に基づいた映像を作り上げたのは拍手もんだ。しかも聖書には十字架の横の部分だけを持ったって書いてないのに!どこで調べたんだ?実は横の棒だけを持ってたって有名な話なのかも。あういぇ。