スピルバーグの土人大虐殺

アミスタッド [DVD]

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TOMO-YAさんからスピルバーグの『アミスタッド』について言われたので鑑賞。ああ、観てなかったさ!

スペイン籍の船でアフリカ人の奴隷たちが反乱を起こし、アメリカ海軍に逮捕され、裁判にかけられ、自由の身になったアミスタッド号事件を元にしたスピルバーグの作品。ヒットはしておらず、そんな映画もあったなぁくらいのポジションだったのだが、個人的には楽しめた。『シンドラーのリスト』をもう一度という事で制作された感は否めないものの、映像は、キューブリックの『バリーリンドン』の境地に達しており、凝った美術や衣装を、緩やかな移動撮影やコミックのようなキメ絵を駆使して、一気にグイグイ見せていく。

さて、スピルバーグの殺戮描写だが、『アミスタッド』でも容赦ない。時間にすると短いが、そのインパクトはもしかしたら『シンドラーのリスト』以上かも。冒頭の奴隷による反乱シーンは、大嵐の中、血が吹き飛び、その血が雨によって流されるという画面構築で、これはツイ・ハークの『ブレード/刀』のように荒々しく、残虐で、かなり類似しているが、意識していたかどうかは不明。中盤のアフリカ人を拉致して、拷問するシーンが凄まじく、ちんこ丸出しの土人が船に揺られて、ゲロを吐き、さらにムチでしばかれ、重りを着けられて海に落とされるという映像をこれでもか!と見せつける。ひゃー。後の『プライベート・ライアン』でも出てくる、ゆーっくり刀をブッ刺して、ゆーっくり抜いて行くシーンもあって、ひゃー。最高だ!

作品としてインパクトが無かったのは、法定劇だったからだろう。もちろん感動を覚えるシーンもちらほらあるが、描くべき部分と飛ばしていい部分の差が激しく、場面展開があっという間に行くところが重要なシーンだったりもして『え?なんでマコノヒーがキレてるの?』『え?なんであんなところに積み荷の記述書があるの?』『え?キレてるわりに女王がベットで跳ねてますけど?』って感じで、混乱を招く事もしばしば。ただ、後に分かるように説明は足されてるが、分からないという人も居るんじゃないだろうか。この省略する演出というのは、個人的には好きなので、もっともっとガンガン編集してもよかった気もする。なんつったって省略しても映画は2時間半もあるのでね。

それにしてもアンソニー・ホプキンスがすごかった。ホプキンスが最後の最後、最高裁奴隷制度について、長台詞を言うのだが、ワンカットじゃないにしても、迫力満点で、アル・パチーノに並ぶ演説役者になったと言っていいだろう。つーか、映画の主題はあれで終わってるというような事も(笑)

TOMO-YAさんが言ってるように聖書を引用していて、それは英語が分からないアフリカ人がキリストの一生に感動するというものなのだけれど、それは、その後アメリカの宣教師教会が出来るという事の伏線なんだろうなぁ。というのはウィキペディアの情報なんだけど。

『アミスタッド』はスピルバーグ土人大虐殺映画としても、『バリーリンドン』のような美しい歴史劇としても、法定劇としても楽しめる作品だと思う。ただ、じゃあ傑作か?と言われると難しいが。