『感染列島』を観ました(ネタバレあり)


感染列島 - くりごはんが嫌い


↑以前、新潟でロケをするということでエキストラ募集してたという記事を書いたので、ここは観なきゃだろと思い『感染列島』鑑賞。旧市民病院でロケが行われたとあって、かなり応援してあげたいところだが――――

これはひどい!ひどすぎる!

たしかに旧市民病院をまるまるつかっただけあって、出てくる出てくる、あ!あそこ入り口!あ、あの通路!などなど。外観から内装までそのまんまであり、そこに通って入院してた身としては、ノスタルジーな気分にもなったりした。したのだが――――

というか、最近の悪しき風潮として、映画が長すぎる!それになぜ気づかない!

『感染列島』で言いたいことはずばりこれだ。「やっぱり、人って助け合わなきゃダメよね、どんなに絶望の淵に立たされても希望は捨てちゃダメよね」その一点なのに!なぜあそこまで回りくどく、説明もないまま、ご都合主義ですすんでいくのだろう。

そもそも、この作品は何がしたかったのだろうか?

感染の恐怖を描きたいのであれば、徐々に感染していって、それで絶望を見せて、さらに人々が発狂する様子がなければダメなのに、まずこの映画にはそれがない。じゃあ、感染者にたいして、病院が、医者が頑張ってる様子を描きたいのか?それもちがう。ほとんどの医者は外部から来たおエラいさんに憤りを感じ、これ見よがしなイヤミを言い、さらに投げ出したり、泣き出したりする医者も多く、患者と戦ってる様があまり感じられない。じゃあ、都市が感染者によって崩壊して行く様を描いているのかと言われるとそれもちがう。なぜかというと、もうすでに都市が崩壊してしまっているからだ。かと思えば『アウトブレイク』のように感染源を探し出す映画になり、映画のトーン、テンポも急激に変わり、あまりそのシーンに必然性も感じず、カンニング竹山演じる細菌研究者のくだりも絶対にいらない。もしかしたらこの映画、ホントはもっともっと長かったんじゃないのか?明らかにシーンシーンの繋がりのなさと、パーツの描き足りなさが露呈されてるような気が……

物語がラストに向かって行くまでの伏線やプロットがすべて中途半端なうえに、ひとつひとつにエピソードがないため、「こんなにたくさん盛り込んでる!」という感動など1nanoもない。中途半端なラブストーリーに中途半端なマスコミ批判に中途半端なディストピア映像に中途半端なミステリーが延々つづくだけ、しかもそれが2時間以上――――

そして、すべての部分においての破綻が激しすぎる。感動にもっていくためのご都合主義にしか感じない。まず、空気感染しない脅威のウイルスだが、空気感染しないわりに東京の人口分死んでるって、おかしくないか?妻夫木聡は何故、あんなに延々患者と触れ合い、感染源にまで行ってるのに、ピンピンしてるんだ?

妻夫木はウイルスを探し出すためにどっかのアジアンチックな島に行くんだけど、妻夫木は下っ端の医師なんだから、責任者の許可なくウイルス探しに出かけたらダメだろ!!仮に許可取ったとしても、そのくだりは絶対に必要だろ!んで、帰って来てから、まだ認知されてない医療法を試そうとする時は、自分の上司に報告するって、お前のその常識の計り方はなんなんだ!

しかもすべての交通機関が壊滅して、さらに都市全体がスラム化してるんだったら、ガソリンはどうやって供給してるんだよ!んで、妻夫木最後に死にそうな檀れいに会いに長野県だったかどっかに車で突っ走って行ったけど、途中でガス欠になる――――――――ガソリンの残量くらい見とけ!

そして次のカットであっさり間に合ってるんで、間に合うならそんな要素を脚本に入れるな!壇れいの様子がカットバックされないもんだから、ハラハラなんて全然しないぞ!その前に間に合わないだろ!

おい!国仲涼子!病院で携帯をONにして、さらにそれを握ったまま治療するってどういう事だ!治す方も邪魔だな!って言って、どっかにどけろ!佐藤浩市が死ぬ時は家族入れられたのに、なぜ爆笑問題の田中は奥さんを看取れないんだよ!

まぁ、他にもいろいろいいたいことはある。どこからどこまで都市が都市として機能してるのか描かれてないし(その辺、『トゥモロー・ワールド』はエラかった)、暴動が起きてるようで、全然起きてなかったし、スラム化した街がわずか半年で復活してるし、もう無茶苦茶。

唯一よかったのはウイルスにやられて死んでいく様と、東京が廃墟と化したディストピアな映像だけど、その風景に雪が降って来て、ばーっと積もっていって、それを美しい音楽で見せるところがいいなぁと思ってたら――――これ『12モンキーズ』じゃねぇか!

ということで、感動する部分も多少あるが、基本的にそこに行き着くまで長いし意味不明だしいるのかどうかも分からない要素ばっかりだった『感染列島』はあまりおすすめ出来ません。いや、でも監督と役者たちはすげぇ頑張ってました。カメラも緊迫感あるような地を這うものが多かったし、カンニング竹山と爆笑の田中がホントにいい感じの仕事をしていた。ただ脚本が、脚本が悪いだけなんだよぉ。あういぇ。