フリーの教科書 生き延びるための読書

昨日の昼

フリーの教科書―生き延びるための読書

フリーの教科書―生き延びるための読書

『フリーの教科書 生き延びるための読書』を読む。ぶっちゃけ、最近本をなかなか読めない。読んでるそばから、別な事を考えてて、内容が入ってなかったり、文体によっては、全然読む気にならなかったりで、「きっと、読み終わるまでに時間かかるんだろうなぁ、感想を言うまで時間かかるよぉ、岸川さん」とか思ってたのだが、これがどうして、一気に読んだ。

昨日の夜
仕事の休憩時間が1時間あったので、それを利用して『フリーの教科書』を読み終わる。『フリーの教科書』は『フリーという生き方』の続編というか、姉妹編で、フリーランスで働く岸川さんが問題にぶち当たったり、人に裏切られたりするたびに読んで来た本を思い出し、それを紹介するという形式の読書録。作中でも「私的読書録」という表現をしているが、もちろんそれだけでなく、自身の体験、自身の想いなどを組み込み、しかもちゃんと読ませる文章になっていて、それが『フリーという生き方』と結びつくようでおもしろい。おもしろいというか、大分苦労して書き上げたんじゃないかなぁと思ったりも(笑)

チャンドラーやロス・マクドナルド、ハメット、スタークから小悪党になる事を学び、ブレヒトの『ガリレオの生涯』からマイノリティでいる事を学び、『坊っちゃん』では無鉄砲な生き方をなぞったりもする。

『フリーの教科書』で好きなところは、『フリーという生き方』がホントに読ませるだけに特化した文章だとすると、『フリーの教科書』はかなり岸川さん自身がむき出しになっている。小悪党的な生き方をしたいと思う一方で正しく生きたいと思い、いけないと思いつつも人の悪口を言ったり、ある章では「僕はひがみっぽい人間です〜中略〜なんと根性腐れなことでしょう」と宣言してしまう。自分はこういう人間で、こういう生活をしていて、それで本に救われてきましたという感じの、本にしにくいような題材をきっちり読ませる事に昇華しているのは驚く。

あと、『フリーの教科書』で共感するのは、なんか考えてる事がすげぇ似てて、読んでるそばからドキドキした事。「死は生活の裏庭に隠れている大男のようなもの」「頭の良さをアピールするよりもバカで憎めない方が徳」「個性の尊重なんて神話。権威の一言、威勢のいい意見、時の趨勢(すうせい)だけが議論を決める」などなど、読んでて、うおー!と拳をあげたくなるフレーズが連発された事だった。

冒頭、岸川さんはこういう。

「本は人間の心に、人生に、けっこう役に立ちます」

石田衣良トップランナーに出演した時、こんな事を言っていた。

「よく人の人生は生きなおせないっていうけど、本の中だったら生きなおせるんですよ、想像力を持ってその中に入って行けば、その人の人生がどんな形であれギュッと凝縮したものですからね、だから出版界の回し者じゃないけど、本を読んで欲しいですねぇ」

私はよく、若い人に「とりあえず、若いときは本を読んどけ」とおっさんめいた事を言うが、それはホントに人生に役に立つからであって、別におっさん特有のメンタリティをひけらかしてるつもりは毛頭ない。岸川真さんの『フリーの教科書』はこの100年に一度の不況の中、ちょっとでも生き方のヒントになるような本を軽妙な文章で紹介している。あえて、もう一度みんなに言いたい。「とりあえず本は読んどけ」『フリーの教科書』はそんな私を後押ししてくれるような良書だった。必読。でも、在庫ないらしいけど。あういぇ。

PS.そういう自分があまり本を読んでなかったりもする。最近の若い人のどん欲さと勢いには頭が下がるぜ。