ウルヴァリン:X-MEN ZERO

12日の19時に『しんぼる』を観た後に、古泉さんと待ち合わせて、一緒にレイトの『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』鑑賞。古泉さんは東京に行かれていたようで、なんかお忙しいとこ申し訳なかった。

映画が始まると、コミックの『ウルヴァリン:オリジン』をそのまま映像にしたような場面になる。後で知ったのだが、このコミックが今回の映画化の元になってるらしい。そりゃそーだよな。

X-MEN ウルヴァリン:オリジン (SHO-PRO BOOKS)

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んで、なんやかんやあると、とてつもなくかっけータイトルバックが始まる。南北戦争から、第二次世界大戦、さらにベトナム戦争と、アメリカの歴史的な戦争にウルヴァリンが絡んでいたというもので、CGによる絶妙なモーション感覚と第二次世界大戦の場面は『プライベートライアン』を見事に再現してたりして、おおっ!!という感じなのだが、タイトルバックのみならず、かつてのヒーロー(この場合は雇われたミュータント達なのだが)が暗殺されていくというプロットも含めて、『ウォッチメン』を下敷きにしているのは間違いない。やはりグラノベ映画化にあたって『ウォッチメン』は一つのエポックメイクになってるようだ*1

じゃあ今回の『ウルヴァリン』は『ウォッチメン』のような傑作になってるのか?と言われると、そんな事は無い。

ウルヴァリンは元々銃も効かなければ、寿命もないようなキャラクターなのに、そこにアダマンタイトという特殊な合金を身体に流し込まれ、さらに強靭なミュータントになる。そのせいで、強さのインフレがハンパじゃなく、最終的にウルヴァリンに襲いかかるヤツは『ドラゴンボール』のセルみたいに、すべてのミュータントの能力を兼ね備えたキャラで、「いやいや、そんなに強かったら絶対に勝てなくね?」状態。

敵の計画もずさんだ。正直、何がしたいのかよく分からなかった。自分の妻を殺されたウルヴァリンに復讐のチャンスを与えると言って、身体中にアダマンタイトを流したはいいのだけれど、その後に「あいつの記憶を消してしまえ」と口にした瞬間。ウルヴァリンに聞かれてしまって、ウルヴァリンは記憶を消されないためにその場を逃げ出す。「しまった!聞かれたぞ!」と、慌てふためく研究者達だが、お前らはバカなのか?

触れただけで催眠術を使えるキャラクターが出て来るのだけれど、そいつがボンクラで、ハッキリ言って、その催眠術を最初から使えば、すべて解決出来ただろ!というシーンがクライマックスに出て来たり、正直、お話だけだったら――――うーん――――

だが『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』はその強さのインフレを楽しむという意味において、スクリーンで観る価値はあるかもしれない。とにかくやりたい放題で、昨今のCG技術をつぎ込むと、映像化する事に不可能はないんだなとホントに思ってしまう。

てなわけで、敵の行動に「?」がつきまとうので、何も考えずに楽しむ事は不可能だが、ポップコーンムービーとしてはやはり最高だ。展開も早くていいが、間違っても1800円で観るなよ!という事だけは声を大にして言っておきたいのであった。あういぇ。

――――それにしても、最近、アメコミに興味を持ってる人が多いのかなぁ。『ウルヴァリン』もすげぇ客入ってたし、『ロング・ハロウィーン』とか『トップ10』とか『フロムヘル』とか翻訳されるし。後は『キリング・ジョーク』と『イヤーワン』の復刊を待つばかりですな。

【追記】『ウルヴァリン』に限って言えば、「オリジン」よりも『マーヴルクロスNo.8』に収録されている、バリー・スミスという作家が書いた『Uncanny X-MEN#205』がおすすめだ。絵が荒木飛呂彦にすごく似ていて、もしかしたら影響を与えたのではと思わせてくれる。

*1:そういやぁ、『ウォッチメン』のDVDが出たんだった。買わなくては。