『ミスター味っ子2』の5巻がすごすぎる!

妹が『ミスター味っ子2』の5巻を買って来た。

ミスター味っ子2(5) (イブニングKC)

ミスター味っ子2(5) (イブニングKC)

いやぁ、片時も忘れることなく待ち続けた二年半――――と書きたいところなのだが、すっかりそのことなど忘れていて、実際、妹が「買って来た」と言ったときも、ブックオフかなんかで前のヤツを見つけたのかなくらいに思っていて、まさか新刊だとは想像もしてなかった。

ぼくは『ミスター味っ子』という作品が大好きで、好きなところは「それ、ホントにうまいのか?」と疑いたくなる料理のアイデアと、料理を食った後に「うーまーいーぞぉぉぉぉ!!!!」と叫びながら、ビームが出たりする過剰な演出に尽きる*1。近年の続編ブームに乗って、『ミスター味っ子II』が出た時は「待ってました!」という感じで『美味しんぼ』のように若干説教臭くなったきらいはあるが、やはりおもしろい。だから富樫なにがしの新刊*2を待つヒマあったら、その間に、これ読んだほうがいいと思う。あと、アメコミも。

本題に入るが、二年半待っただけあって、『ミスター味っ子II』の5巻はすごい進化を遂げていた。二年半の間に作者は狂気をため込んだのだろうか、5巻は今までのバランスを破壊しかねないほどに狂っていて、それはあの「うーまーいーぞぉぉぉぉ!!!!」を忘れてしまうほどであった。

まず、ぼくが驚いたのは、マンガの帯である。

無重力ハンバーグにマグロの店舗破壊焼き――――

なんというインパクトのある帯だろうか、出版社も作者もどーゆーのを読者が求めているか熟知してるようだ。

細かいあらすじは読んでいただくとして、マンガは主人公の陽太が、月に一度1500万円の食事をする金持ちのためにディナーを作ることになったところから始まる。

試行錯誤して陽太はある料理を完成させるわけだが、ここからの展開がすさまじい。


まず、金持ちを何も無い原っぱに呼びつけて、その原っぱの真ん中にポツンと置いてあるテーブルに座らせる。当然金持ちは「こんなところに呼びつけてどーするつもりやぁ!」と激怒。友人であるウエイターは「ただいま、シェフは調理中です」と説明するが、何も無いところなので説得力が無い、当然金持ちの怒りは収まらない。

すると――――その原っぱに――――


いきなりジャンボジェットが現れる!!!


自分の想像を越えた風景に思わず腰抜かす金持ち――――

「お待たせしましたっ!!」ジャンボジェットの中から威勢良く現れたのはディナーを持った陽太であった。そう、ここはなんと飛行場だったのだ。

「何とも驚きいった趣向やで」と驚く金持ちの前に皿が出される。ふたを空けると、そこにはハンバーグが。

見た目は普通のハンバーグで、ソースも味見されただけで材料が当てられてしまうほどのシンプルなもの、ところが、肉を口に入れた瞬間、その金持ちは飛行機以上の驚きに遭遇する事となる。

そのハンバーグは舌触りがシルクのようになめらかで、通常よりも肉汁が溢れ出て来るものだった、何かの食材を入れたわけでも、特別な工夫をしたわけでもないハンバーグにグルメな金持ちも舌をまいた。


「どういう事や!教えてくれ!」


焦る金持ちを前に陽太はハンバーグのうまさについて説明しはじめる。ハンバーグの肉汁とは水溶性のタンパク質と脂が混ざったもので、これが均一になればなるほど、舌触りが滑らかになり、旨さが生まれるというのだ。ところが、水と脂は文字通り混ざらない。普段は肉の旨味と脂がバラバラになった状態のものを口にしてるという事になる。これをうまく混ぜる事が出来れば、今までに食べた事のないハンバーグが作れると陽太はにらんだ。


では、混ざらない水と脂をどうやって陽太は混ぜたのか?


答えは先ほど登場したジャンボジェットにあった――――そう、陽太は飛行機を飛ばして、落下させ、無重力状態を作り出し、その中でハンバーグを作成していたのである。

これが帯にも書いてある「無重力ハンバーグ」の正体である。確かに『ミスター味っ子』は、みそ汁の中にトマトを入れたり、ケーキを牛肉で巻いてみたり、ハンバーグを大量の黒こしょうで覆ったりと、無茶苦茶やるのだが、それはまだギリギリ許せる範囲であった。ところが調理の段階から狂っている今回の「無重力ハンバーグ」には恐れ入った。もうツッコミを入れるとかいうレベルを超越している。いい意味で空いた口が塞がらなかった。

無重力ハンバーグ」で驚いていられない。「マグロの店舗破壊焼き」は「無重力ハンバーグ」を遥かに越える狂ったアイデアで、妹も「マジでバカ過ぎる!」と大絶賛していた。さすがにこれを書いたら長くなってしまうので、興味のある方は買っていただけたらと思う。

最近、長期休載して、さらに連載を再開しても一向に話が進まないマンガがあったりするが、『無重力ハンバーグ』と『マグロの店舗破壊焼き』の狂ったアイデアだけで二年半は取り戻したと言っていいだろう。また休載するのかどーかは分からないが、こういう素晴らしいアイデアを体感するために、ぼくはこれからも『ミスター味っ子II』を読み続けるんだと思う。

最後に帯の後ろに書いてあったもうひとつのコピーを引用して終わろうと思う。

ミスター味っ子の発想と工夫に常識は通用しない」

ここまで来ると、行き切った感があるが、次はどーなるのだろう、楽しみだ、あういぇ。

*1:あ、それはアニメの方だった

*2:別に非難してるわけではないのであしからず