秋の夜長にアメコミを読もう!


10月10日にいよいよ、アラン・ムーアの代表作の一つである『フロム・ヘル』が発売される。もちろん1-Click購入をした。

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 下

フロム・ヘル 下

アメコミを読み始めてからもうすぐで一年が経つ。ぼくは英語もまったく分からないし、コレクターでも無いので、専門的な知識はまったく無いのだが、そんなぼくでもアメコミはすごくおもしろいと思うし、日本のマンガよりも読後の満足感は高い。それと真逆の感覚がアメリカやフランスでMANGAとして受け入れられ、アメコミはアメリカでは売れてないらしい。

この一年で日本のアメコミを取り巻く環境は大きく変わった。数々の名作がどんどん発売され、ぼくが読み始めたときよりも傑作と呼ばれるものがどんどん手に入りやすくなっている。いまだに絶版になってるのも多いし、数は少ないが、これはすごくありがたいことだ。もちろん本屋に置かれることは皆無なのだが、それでもこれだけたくさん出たということはAmazonを利用して買う人が増えたのかもしれない。

アメコミに興味があるんだけど、読むまでに至らないというのは、やはり値段だと思う。アメコミは一冊2500円から3000円は当たり前、ハードカバーの本や、いえば映画の評論本よりも高い。全二巻ともなれば、5000円以上する場合もある。

確かにアメコミは高い。それは認めよう。だが、中身のことを考えると、その値段は日本であれば打倒なラインだと思う。何故ならアメコミは1ページに詰め込まれてる情報量が最近の日本のマンガより遥かに多く、読むのに時間をかけざるを得ない作りになっているからで、さらに背景とセリフとキャラの心情がヒトコマの中に幾重にも重なり、伏線もさりげなく貼られているために、読み終わって結末を知ったうえでもう一度読むと、また新鮮な気持ちで読むことが出来たりして、いえばお得感が高い。

ウィークエンドシャッフルで町山智浩さんが『20世紀少年』に対し「5巻で終わることを20巻もダラダラと続けるのは水で薄めてるようなもの」とおっしゃってたが、日本のマンガを水割りだとするならば、アメコミは味わい深いウイスキーをロックでチビチビ時間をかけて楽しむようなものなのだ。

アメコミは高いからなぁと言ってる人も多いが、でも、よく考えて欲しい。『20世紀少年』を今から全部読もうと思った場合、一冊は500円と安いが、全部新品で買うとなると、12000円もする。ブックオフで一冊350円で見つけても、全巻揃えるには8400円なのだ。一つの物語を体験するのに最低でも8400円というのはなかなか高額だ。同じく日本を代表するマンガ『バガボンド』は31巻でしかも一冊の値段が今は560円。今から31巻揃えるとなると、17360円だ。実は意外とマンガ本というのは高いものなのである。

それを考えれば、400ページがマンガの30巻分くらいの濃度であるアメコミはそこまで高いとは思えない。特に今、売られているアメコミは有名なものばかりで、コミックでなければならない表現に満ちていて、心の底からおすすめ出来る。ただし、日本のマンガと違って気軽に読めないのも弱点だったりするが。

ということで、傑作、名作が復刊されたり発売されてる今のタイミングだからこそ、ぼくはアメコミを読むことをおすすめしたい。とりあえず、今すぐに手に入るもので、これから読んどけ!的なものを紹介したいと思う。


DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト(ケース付) (SHO-PRO BOOKS)

DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト(ケース付) (SHO-PRO BOOKS)

9月に復刊したばかりの『ダークナイト』と『ウォッチメン』は、アメコミの歴史を大きく変えたと言われている86年に発表された傑作だが。これは両方共ホントにお買い得。もし今買うなら、この二冊をダントツでおすすめしたい。

ダークナイト』はフランク・ミラーの『ダークナイト・リターンズ』と『ダークナイト・ストライクスアゲイン』が両方収録されて、3990円。前者は97年に絶版、後者はAmazonで一万円のプレミアが付いているので、まさに今買っとけという感じ。個人的に『ダークナイト・リターンズ』は一番好きで、何度も何度も読んでいる。ちなみに映画『ダークナイト』の原作ではない。

ウォッチメン』はコミックという形を最大限に生かしていて、コミックというよりも、読み物というか、新たな文学というか、形容する言葉が見つからないくらい衝撃的。こちらはホントに読むのに時間がかかるので、それこそ読み終わった後は、『20世紀少年』を読破したくらいの達成感があり、それを越える満足感も待っている。



バットマン : ロング・ハロウィーン ♯1

バットマン : ロング・ハロウィーン ♯1

バットマン : ロング・ハロウィーン ♯2

バットマン : ロング・ハロウィーン ♯2

Batman: The Long Halloween

Batman: The Long Halloween

『ロング・ハロウィーン』はクリストファー・ノーランが『ダークナイト』を撮る決め手になったと公言しているコミックで、フランク・ミラーの『バットマン:イヤーワン』の続編的な作品。祝日や記念日に殺人を犯すことからホリデイと名付けられた連続殺人犯をバットマンが追う。

ぼくが読んだ中だったら、これが一番日本のコミックに近い表現方法だと思う。大きいコマを使ったり、決め絵もバシバシあって、アクションも多い。ミステリーの要素が強く。絵だけの伏線も多いため、これまたじっくりと読み込みたいところ。しかも犯人を知った後で読むと、さらに楽しめること必至。セリフが少ないので英語が得意な人であれば、一冊にまとまっててお得な洋書をおすすめしたい。



マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

マウスII アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

マウスII アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

86年のアメコミルネッサンスと呼ばれた中でもオルタナコミックと呼ばれるだけあって、異質なアート・スピーゲルマンの『マウス』も『ウォッチメン』同様に、コミックでしか出来ない表現方法で読ませる。第二次世界大戦ホロコーストをテーマにしており、一ページに詰め込まれた情報はかなり多い。徹底したリアリズムと絵本を思わせるコマ割りで一番取っ付きやすいかもしれないが、こちらは読み終わるのにかなり時間がかかると思われる。もちろんおすすめ。



ヒストリー・オブ・バイオレンス

ヒストリー・オブ・バイオレンス

ヒストリー・オブ・バイオレンス』は1260円と安くて、映画以上の暴力とハラハラさせるストーリーテリングで読みごたえがあっておすすめ。特に最後のマフィアの拷問の描写はすごくて、ホントにマフィアに捕まって拷問されるくらいなら死んだ方がマシだなと思わされる。




本当は映画以上に素晴らしい『Vフォー・ヴェンデッタ』もおすすめしたかったのだが、なんともうプレミアが付いてて、9800円になっていた。こんなことにならないためにも今すぐ買うことをおすすめしたい。そして、『イヤーワン』と『キリング・ジョーク』はお願いだから復刊してください。もっともっとオレはアメコミの話がしたいんだよぉ!

HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!あういぇ。