『バイオハザード5』に関するよもやま話

そういやぁ、「○○に関するよもやま話」って使い方あってるのかなぁ…「関する」ってのが、よもやま話だって気もするが…

それはおいといて発売してからだいぶ経ったが『バイオハザード5』をクリアした。

誰がなんと言おうと、『バイオハザード』の第一作目は、エポックメイクな作品だった。出発点が『スウィートホーム』のPS版だったとはいえ、操作性やゲームとしての快感は一切無視して“恐怖”の演出だけに徹底的にこだわったのが功を奏し、今までにやったことが無い作品として認知され、PS初のミリオンヒットを記録した。

特にぼくが『バイオ』で感じたのは“質感”の恐怖だった。それまでのホラーゲームは、ドット絵が主流だったこともあり、グラフィックのみで恐怖を表現するのは難しかった。それをゲームでやるとなるとSEやBGMを強調するしかなく、あとは『かまいたちの夜』や『弟切草』に代表される、サウンドノベルという特殊なジャンルになってしまう。

そこへいくと『バイオ』は、操作性こそ慣れが必要なものの、固定された俯瞰映像に当時の驚異的なグラフィックで“質感”を演出し、それによって怖さを強調した。それだけでなく、暗闇に覆われた洋館、薄汚れた外壁、一枚一枚絵が違うドア、きしむ廊下、のそのそ歩いてくるゾンビなど、生理的に嫌悪感を抱く要素もふんだんにつぎ込んだ。派手な音楽は排除して、リアルなSEを徹底させたのも、演出として正しかった。だから三上真司GCで一作目をリメイクした時、ゲーム性を変えることなく、映像で“質感”をパワーアップさせたのは正しい選択だったと言える*1

ぼくは『バイオ』が好きで、番外編以外は全部プレイしているのだけれど、どれも一作目は越えられてないと思う。ぼくの勝手な印象だが、『バイオ』シリーズはある種のスタイルを確立したものの、制作者がやりたかったことや新しい要素が新作のたびに増えたり減ったりして、質が安定しているシリーズとは言いがたい。街に飛び出したり、二人で連れ立って歩いたり、追跡者を加えたり、武器を生成したり――――などなどまだあるのだが、とにかく一つの要素を定着させることを絶対にしない*2。特に三上真司が現場に戻って、今までの『バイオ』をぶち壊した『バイオ4』はこれまで固定されてた視点を捨て、3Dによる表現でアクションゲームの様な進化を遂げた。これには賛否両論あっただろうが、『バイオ4』は圧倒的な完成度を誇り、日本ゲーム大賞で優秀賞を受賞した。

さて長々と書いてしまったが、『バイオ5』である。

『バイオ5』のビジュアルは圧倒的だ。ハリウッドのスタッフと共同で作られただけあって、箱庭感という言葉を墓場送りにしかねないほど映像の完成度は高い。画面の中にアフリカがあって、そこにキャラクターが存在してるかのような映像は今までの進化の頂点のように感じてしまった。

ただ、映像はピカイチなのだが、プレイし終わって思ったのは、じぶんが『バイオ』に何を求めていたのか?であった。これは人それぞれだと思うが、ぼくの中で『バイオ』には“恐怖”と“謎解き”と“ゾンビを撃つ”というとても重要な三元素があって、安定こそしてないと書いたが、この三元素だけはきっちり守られていたように思う。だから『バイオ4』でアクションゲームのようになったとしても、『バイオ』っぽさは残っていたのだ。むしろ、『バイオ4』に関していえばゾンビを撃つ爽快感はシリーズの中でも随一だった。

ところが『バイオ5』はこの三元素がかなり薄められている。アクションゲームに寄ったにしては、まず弾丸数が圧倒的に少ない。なので、残りの弾数を気にしながらプレイしなくてはならず、それがストレスになった。さらにやり込む要素を増やしたかったのか、一つのステージで金を得ることがまったく出来ないため、武器が次第に強くなって行くという快感もかなり薄い。

さらに謎解きが全体の数%程度しかなく、アフリカの内戦のようなところが舞台なので、恐怖の質がかなりドライになっている気もした。これは好き嫌いなので、なんとも言えないところだが、一作目がジメっとしたいやーな怖さだとすると、5の怖さはカラッとした感じで、一度見たら忘れるようなライトな感覚である。しかもボス級のキャラがインフレを起こし始め、一作目のゾンビの恐さや強さがアリンコのようになってしまったのもマイナスだと思う。

そんなわけで、グラフィックの美しさに目を奪われながらも、『バイオ』ってそもそもどういうゲームだったっけ?と思わされた『バイオ5』。なんだかんだ言いながらもおもしろかったのだが、とりあえず、あれだけのグラフィックになったのだから、PS3にも『デッドライジング』を移植してほしい。何故かって、オレはヌルいと言われているWii版しかやってないからだよ!移植してください。つーか、してくれ!しろ!あういぇ。

参考資料:ゲームクリエーター列伝/平沢たかゆき、BIOHAZARD 5th Anniversary “Weskre's Report”

バイオハザード5 - PS3

バイオハザード5 - PS3

デッドライジング ゾンビのいけにえ - Wii

デッドライジング ゾンビのいけにえ - Wii

*1:ちなみにぼくが一番好きなのは、このGCで出たリメイク版『バイオハザード』である

*2:それは任天堂の作品でも顕著に現れるんだけど、海を増やしてしまった『風のタクト』や水の表現にこだわりすぎた『マリオサンシャイン』、何故か二人乗りにした『ダブルダッシュ』なんかは、明らかに64で出た傑作群よりも完全に劣っていた。前作で出来なかったことを新しいハードでやるとバランスを欠いて失敗することが多い。だからWiiで出たそれぞれの新作は全部原点回帰になっていた