『エスター』を観た……恐っ!!!


評判がやたら良い『エスター』がとても観たくて、むしろ観ようと思ってた矢先に古泉智浩さんから「カトキチさん!『エスター』観ましょうよ!」とお誘いいただいたので、一緒に観て来た。

映画好きの人にとって、「とりあえずこれは観ておかないと」というようなラインの作品って結構あると思う。人によってはセガール主演の映画だったり、ジェット・リーだったり、ふんちゃらオブデッドという名前のホラーだったりするんだろうが、ぼくにとってダークキャッスル制作の映画がそれにあたる。

ダークキャッスルとはジョエル・シルバーロバート・ゼメキスが設立したホラー映画専門の制作会社で、ぼくはここから製作された映画は全部ではないが結構観ている。どれも人生に残るような傑作ではないし、『エクソシスト』や『シャイニング』のような重厚さもないが、かと言って、そこまで外れることもなく、『ゴースト・シップ』や『TATARI』『13ゴースト』など、ビール片手に観るには最適の良質なポップコーンムービーがずらりと並ぶ。新潟で上映されることもほぼないのだが、ビデオ屋に行って、「あ、これおもしろそう」と思うのは大概ダークキャッスル制作だったり、さらに『蝋人形の館』というA級ちょい前くらいの秀作もあったりして、見逃せない。

さて、そんなダークキャッスルから放たれた新作『エスター』だったが、ダークキャッスル制作の中ではトップクラスのおもしろさだった。

ぼくは幽霊がどーん!とか、得体の知れない殺人鬼がぬあー!とか、悪魔に取り憑かれてギャー!とかよりも、一見人が良さそうに見えるヤツが実はとち狂っているっていうのが一番怖い。だから今まで観た中でも『ミザリー』や『シャイニング』が一番怖かったのだが、『エスター』も言えばその系譜で、個人的には『ミザリー』と『キャリー』を足したような印象がある。

そもそも、ホラー映画は音や気味の悪い映像を見せることに躍起になってるモノも多かったりするが、『エスター』はそう言ったホラー映画の定番は一切出て来ない。「ああ!ここで出る!出るぞ!!」とあおれば何も出ず、ドキっとするような音が鳴っても、そこでは何も起こってなかったりする。その代わり、人間の内面が狂ってるような描写や頭の良さを武器に執拗に追いつめていくジワジワとした怖さの演出は特出しており、それがひょいと出て来たり、引っ込んだり、息を潜めて待ってたりしてとにかく怖い。怖いの一言しか出ない。それだけでなく、後半のたたみかけと伏線の回収はあまりに見事で、見終わってもここはどうなの?という疑問より、良く出来てたねぇ!おい!という感想しか出て来ない。

そして、その怖さを一手に担っているのがエスターを演じたイザベル・ファーマン。なんと12歳。ポスターを観てもらえば分かるが、『シャイニング』の双子の女の子がスクリーンから出て来たようなビジュアルで、よく考えたら、『シャイニング』に出て来る双子の女の子ってただ立ってるだけだったのに怖かったじゃん!!!ビジュアルだけでも怖いのに、バツグンの存在感と圧倒的な表現力。彼女抜きでは『エスター』は考えられない。もちろん妹役もお母さんも全員よかったが、彼女の『エスター』だったら観たいので、エピソードワンなども作って欲しいと思った。

小道具の一つ一つやちょっとしたセリフ、エスターの行動、タイトルの出し方からエンドクレジットに至るまでぜーんぶうまいこと伏線になってるので、再見にもバッチシ耐えられる上質のホラー映画。あまり内容について書けないのが残念だが、観て損は絶対にないので、ホラー映画好きは間違いなく必見。ただし新潟は今日で終わりだった……『くもりときどきミートボール』の時と同じように、また終わる映画を紹介してしまったなぁ…

終わってステーキワンで飯を喰らった。古泉さん曰く、エスターのような女は実際に居るそうだ。だからゾッとするらしい。やたらと人を対立させ、ウソを平気でつき、会う人によって演じ分けてネコをかぶる……女って怖いよー!!あういぇ。

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