やっぱりハワードが好き!

映画の歴史は愚作ではなく失敗作でつくられます。ハワードは愚作ではない。ティム・ロビンスに汗をかかせたなら、立派。グライダーの可笑しさ、トンプソンの可愛さだけでもつまらない話じゃない。ならば「ハリポタ」はどうか? 映画史的には無能だ。
――――作家、フリー編集者:岸川真さん/『詐欺師の倅 岸川真:空庖日記』http://d.hatena.ne.jp/kshinshin/

ハワード・ザ・ダック」私も大好きです。ラブホテルの掃除してるところで興奮したりしました。「恋に落ちたジョージルーカス」にて、最後のオチに使われていたのが忘れられません。
――――マクガイヤーさん/『冒険野郎マクガイヤー@はてなhttp://d.hatena.ne.jp/macgyer/

おいらも好きよハワード・ザ・ダック。吹き替えは所ジョージだったっけか(アルフにしか聞こえなかったが)。女性版ダックが出てきて妙にエロかったのを覚えてます。
――――QT鈴木さん/『シャバゾウblog』http://blog.livedoor.jp/konoyarou6464/

個人的には大好きなボンクラ映画なので、不当な評価……あー、えと、正当な評価をえてクソ呼ばわりされていた本作がDVD化されて非常に嬉しい次第。
――――1953ColdSummerさん/『DrasticDramatic』http://d1953coldsummer.blog64.fc2.com/

ハワード・ザ・ダックはなんでルーカス作品の中であんなに酷評なんでしょうね、僕は子供の頃に見て以来好きなんですが。ちなみについ最近でも関東ではテレビ東京で昼間に放送してました。
――――IDharuさん/『ディアブロ・・・グ、完結編』http://d.hatena.ne.jp/haruID/

ハワード・ザ・ダックのDVD購入を考えてる酔狂な方、買うのであればコレクターズエディションを推します。特典のドキュメンタリーが泣けるので。
――――tada_woさん/『指名手配日和』http://d.hatena.ne.jp/tada-wo/

と、『ハワード・ザ・ダック』に関することをいろんなところで書いたら、コメントがボコボコ出て来ました。引用させていただきました、ありがとうございます。

ただ、歴代のラズベリー賞を見てみてみると、確かに「これはちょっと……」という作品ばかりだった。それでも、ぼくはラズベリー賞を受賞した『ランボー/怒りの脱出』とか『ショーガール』とかはマジで大好きなので、『ハワード・ザ・ダック』も同じように、ホントにごくごく一部の間でのみ愛される映画ということになるんだろう。

子供向け作品という部分で批判された『ハワード・ザ・ダック』だが、ぼくが観た印象だと、子供向けの作品ではない。おっぱいは出て来るし、セックスするシーンも出て来るし、コンドームやエロ本など、明らかにアダルトなシーンがたくさんだ。ハワードもビールをこよなく愛し、葉巻を吸い、さらに口は悪いキャラクターで子供には愛されにくいだろう。世間的には子供向けと思われたようだが、企画段階から制作者たちはバカバカしいコメディを狙った。出演者たちもその笑いの要素を充分に理解したうえで出演し演じている。特にリー・トンプソンに至っては「私は他の人と笑いのセンスがずれているの」とドキュメンタリーで語ってるくらいだ。

着ぐるみとは思えない精巧なハワードの造形は、当初パペットでやるつもりだったが、度重なる故障により、着ぐるみになり、顔の表情は機械で動かした。中に入ったのは『チャイルド・プレイ』のチャッキーで有名な小人俳優のエド・ゲイル。当初、オーディションで12歳の子供が選ばれたのだが、大人っぽい仕草をさせるには限界があった。さらに子役を拘束する時間も少なかったため、結局エド・ゲイルがほとんどの動きを担当した。

ジョージ・ルーカス制作ということもあり、スタッフも一流どころが集結した。グライダーのシーンをまるまる演出したのはジョー・ジョンストン、暗黒魔王の声を担当したのはR2-D2WALL・Eでもおなじみのベン・バート、テーマソングを作曲したのは『007』のジョン・バリー、さらにストップモーションアニメを担当したのはフィル・ティペットという、そうそうたるメンバーである。

スタッフ、キャスト共に仕事に手応えはあったものの、公開後には酷評された。タイミング的には『スター・ウォーズ』の後に『インディ・ジョーンズ』を手がけたのでそのぶんの期待を上回れなかったのではないかと推測されるが、侍師父にいただいたコメントと「無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦」というブログによると、やはり原作のアダルティな雰囲気と映画のドタバタ感の差異が原因の一つであるようだ。

原作コミックのアイロニカルな部分が無くなって、子供アドベンチャーものになっていたショックなんじゃないかなぁ?>ハワード・ザ・ダック酷評の理由。
――――侍功夫さん/『ゾンビ、カンフー、ロックンロール』http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/

問題点を挙げるなら、原作がそもそも子供向けではないことです。映画冒頭の様々なパロディ、音楽雑誌『ローリングストーン』ならぬ『ローリングエッグ』、『プレイボーイ』ならぬ『プレイダック』。主人公ハワードはビールをぐびぐび飲みながらぼんやりテレビを眺める独身男。これらは、子供向けのキャラクターなら絶対やらないことをやってみせていたわけです。

冒頭で観客はこの映画が子供向けでないことを知らされます。しかし、話が進むと映画の展開が「異世界に迷い込んだ主人公が周囲と打ち解けるまで」を描いた愛と友情のファンタジーへと変貌していきます。つまり、ストーリーが進めば進むほど対象年齢が下がっていくのです。
――――tokuni_imiha_naiさん/『無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦』http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/20320393.html

ところが、あれだけ叩かれた映画にも関わらず、監督には次回作の依頼が舞い込んできた。ジョージ・ルーカスも「25年後にこの作品は再評価される。時代がこの映画に追いつくだろう」と監督に言ったが、その言葉通り、公開されてから「実は隠れファンだったんだよ」という声が監督自身に届き始めた、公開されてから20年以上経ってDVD化を望むファンサイトも現れた。メル・ブルックスエド・ゲイルに「過去の出演作は何だ?」と聞き、「ハワードを演じた」と答えると「あの映画の出演者なら大歓迎だ」とエド・ゲイルを映画に起用した。酷評され続けた映画なのに、カルト的な人気を徐々に確立し、エド・ゲイルの元には「あなたの仕事で最高なのはハワードだ」という手紙がいまだに来るという。

さて、欠陥が見つかったとかで、DVDが発売延期になったが、やっと届いた。もしあの頃の気持ちを忘れてつまらなかったらどうしよう…と危惧していたが、今観ても非常に楽しい作品で、2時間があっという間。極上のエンターテインメントであった。

確かにガチャガチャしてて子供っぽい部分もあるが、ぼくの感覚では『ハワード・ザ・ダック』が『デビルマン』や『どろろ』、『少林少女』、『GOEMON』、『キラー・ヴァージンロード』よりも下とは思えない。だから当時酷評した人で近年の駄作を映画館で体験した人は、ホントに今一度よく考え直してほしい、手塚治虫の傑作を改悪した『どろろ』や見せかけだけのブルース・リー魂だった『少林少女』で感じた怒りと、『ハワード・ザ・ダック』に感じた怒りはどちらの方が上であったかをだ。

確かにあり得ないほど酷評されたかもしれないが、ぼくは声を大にして言う。「『ハワード・ザ・ダック』……おもしろいじゃん!やっぱり好きだわ!」と、あういぇ。

参考資料:DVDコレクターズエディション特典「ハワード・ザ・ダックを振り返って」「リリーシング・ザ・ダック」