今すぐエメリッヒは『妖星ゴラス』のリメイクを作るべき

『2012』が驚異的な大ヒットを記録している。

同時期に公開された『イングロリアス・バスターズ』の3倍の動員を稼ぎ出し、目下その人数が衰えることはない。

それにしても、なぜ人々はこのように地球が破壊される大規模なデストロイムービーに惹かれるのだろうか。世界的な不況や地球温暖化による終末的な世相が関係しているのかどうか分からないが、最近のハリウッド映画の傑作は暗いか、終末的かでしかないと言い切っても良いくらいだ。いっそのことぶち壊してしまえよというような願望もどっかにあるのかもしれない。いずれにせよ、潜在的に人間には破壊願望があるのは間違いない。じゃなかったら、『2012』がここまで特大ヒットになるはずもない。

てなわけで、『2012』を観て来た。監督は『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』『デイ・アフター・トゥモロー』と何度も何度も地球を破壊しまくっている破壊の神、ローランド・エメリッヒ

それにしても『2012』はすごい。もしかしたらこれ以上のデストロイ映像はお目にかかれないかもしれない。よくいろんなところで“驚異の映像”という言葉を目にするし、ぼくもこのブログでさんざん書いてきたのだが、すまん、今度こそホントのホントに驚異的な映像だ。こんな映像観たことないし(というよりもスケールがデカすぎて誰もやらなかった)、ホントに「すげー」と声に出して観てしまったくらい衝撃的だった。ここまでやったら拍手しか出ませんよ、ぼかぁ。

これ観ちゃうと、今までのディザスタームービーが全部墓石送りにされてしまう。それくらいの破壊描写が観られる。ウディ・ハレルソン演じるラジオのDJがその破壊を観ながら「美しい……」と口にするのだけれど、映画を観ていた人もまったく同じ気持ちだったのではないだろうか。

『2012』ではありとあらゆる天変地異が地球を襲うんだけど、今までの50倍くらいのスケールのデカさで、文字通り地球が我々の想像を遥かに越える力で破壊されつくされる。地球の表面がパックリ割れまくり、地面の上にあるものはすべてぶち壊されるシーンから、核爆破の50倍はデカい火山の噴火のせいでハワイはマグマだけになり、『ディープ・インパクト』を記憶から消し去るほどの超巨大な津波が最終的に襲って来る。

このデストロイなシーンを作成するにあたり、エメリッヒはCG作成会社に「笑っちゃうくらいあり得ない破壊を見せてくれ」と注文した。その言葉に賛同したスタッフは、物理学者やNASAの科学者を集め、物理的にどういう風に壊れるのかというのを徹底的にシュミレートしたうえで、時間をかけ、丁寧に地球が壊れていく様を作り上げた。建物がどのように建っているのか?道路に生えてる樹は一体どのように揺れるのか?というのも一つ一つ完璧に作り上げた。その全てを認識することはわずか数秒のシーンでは不可能だが、そういう細かい部分が積み重なってあれだけのリアリティが生まれるわけなのだ。

ただ、地球が壊れる様だけにスポットを当てたせいで、地球が無くなってしまうと聞いた人々の恐怖や行動が一切映らなくなってしまったのは個人的にマイナスだと思った。妻と別れて、子供に愛されない主人公(しかも息子に愛されておらず、娘はそこそこなついてる)と、設定はかなりスピルバーグ版の『宇宙戦争』に近いのだが、いかんせん主人公家族の行動に狂った悪人がちっともからんでこないため、地球が壊れる様は出て来ても、それによって、地球では何が起こっているのか?というのは描かれない。

ただ、これはあくまでも見せないようにした演出でもあるわけで、とにかく『2012』はエメリッヒというデストロイヤーが狂った感性を全面に押し出した秀作であり、それ以上でもそれ以下でもない。潜在的に眠ってる破壊願望を根底から覆すこと必至なので(あまりにすごすぎて引くくらいなのだ)、是非スクリーンで体感しよーぜ。

あ、そうそう、エメリッヒは次回『ミクロの決死圏』をリメイクするらしいんだが、『2012』を観て、本多猪四郎の大傑作である『妖星ゴラス』をリメイクしてもらいたいと思った。『妖星ゴラス』は地球に隕石が降って来て……という設定の元祖で、方舟作って何万人を助けるだとか、落ちて来る隕石に爆弾を仕掛けてドーンとかちゃちいことは言わない。なんと隕石が巨大すぎるので、地球を動かしてかわそうと計画するとんでもないスケールの作品である。もちろん地球を動かしたことで起こる天変地異によって、結局地球は滅亡寸前までいくわけだが、あれだけスケールのでかいデストロイ映像を作れるのだから、それに見合ったスケールのでかい話にしてもらいたいもんだ。

妖星ゴラス [DVD]

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『2012』を観たあとにビデオ1に行ったら古泉智浩さんが居た。ここでも会うなんて!どんだけー!

ぼくは『ミラクルカンフー阿修羅』を借りた。観たくて観たくてたまらなかったのだが、赤道のビデオ1にあるという情報を聞きつけて、借りようと思って、やっと借りれた。今だったら絶対に作れないカンフー映画で、話を聞いただけでトッド・ブラウニングの『フリークス』か!とツッコミを入れたくなるが、いやぁ楽しみだ。あういぇ。