休みだったので、パク・チャヌクの復讐三部作を一気に観た。『ほえる犬は噛まない』が思いのほかよかったのと、『オールド・ボーイ』が死ぬほど好きだというのもあって、借りてみた。あと、『靖国』を借りようと思ったのだけれど、その隣にあったイッセー尾形の『太陽』に惹かれて、なんとなくそっちを借りてしまった。
パク・チャヌク リベンジ・トリロジー (初回限定生産) [DVD]
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: DVD
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Twitterでもレスをいただいたのだが、ホントに人でなしー!というか、パク・チャヌクの復讐三部作って全部娘を持つ親の話で、ホントに娘を持つ親としてはたまらないものがあるんじゃないだろうか。しかも聞けば、パク・チャヌクにも娘がいるそうじゃないか。なんてことだ!
未見だった『復讐者に憐れみを』は凄まじかった。胸の奥の奥をえぐられてズタズタにされた気分だ。前半で犯人側の心情や行動などを丹念に描いているせいか、誘拐された娘を殺されてしまったソン・ガンホ側から描く後編でも気分爽快な復讐劇にならない。
いきなり顔を殴られた人を見せて、その後に対峙した人を見せるなど、殴られた部分を見せずに経過を観る側に理解させるといった簡略化されたカット割りが大変素晴らしい。さらに正面からキャラクター達の表情を捉えたカットを数秒映すところなんかは北野武を彷彿とさせる。
目をそむけたくなるほどの残虐描写は吐き気を催すほどなのだが、それよりも復讐に駆られた人間の方が醜く恐ろしく痛々しかった。日本映画完全に負けてるなぁ。
『親切なクムジャさん』はまずタイトルがいい。「親切な」という部分に様々な意味を持たせている。『ザ・ワールド・イズ・マイン』を読んでたせいか、一番衝撃的なシーンにはそこまで感銘を受けなかったのだが、容赦無い演出のせいで、落ち着いてみてられなかった。その後にみんなでケーキを喰うシーンでさえも吐き気を催したほどだ。
こうやって全部見ると『オールド・ボーイ』が一番娯楽に寄ってるというか、万人受けするようなネタだと思った。マンガが原作というのもあるが、これだけがハリウッドでリメイクされることになったのはちょっと分かる気がする。
ズタズタになったので、これまた重そうな『太陽』を観たらホントに具合悪くなるかもと思いながら、ここまで来たらルドヴィコ療法だ!と、はぁっとため息をついてDVDを入れた。ぶっちゃけ題材が題材なだけに眠くなるかなぁと思ったのだが、いやぁこれがまったく予想外というか、2時間があっと言う間で派手なシーンは一切ないのにもかかわらず、全てのシーンがエモーショナルで大感動!言えば『太陽』は神と呼ばれた男が徐々に人間になっていく様を繊細かつユーモラスに、そしてチャーミングに描いた大傑作だった。
『太陽』はソクーロフというロシアの監督が制作した、昭和天皇を主人公にした映画である。
昭和天皇を演じるのはイッセー尾形だが、映画の中にも出て来るように、チャップリンを観てるようで、歩いたり、喋ってる姿を見るだけで幸せな気持ちになること必至。絶妙な間とタイミングでニヤニヤさせてくれるし、ホロリとさせられる。役者の演技をしっかり捉えれば、撮影技術に凝らなくても映画は成立するんだという良い見本だ。実際にサイレント映画のように、音楽はほぼ鳴らない。もっと言ってしまえば部屋の中を右往左往するイッセー尾形だけを観る映画とも言える。ラスト数分だけ登場する桃井かおりもバツグンの存在感と表情で観た者に強烈なインパクトを残している。
御前会議から人間宣言までの昭和天皇を描いているのだが、現人神という言葉はどこへやら、イッセー天皇は、泣いて、笑って、憤る、ぼくらとまったく変わらない人間だった。だから、ラストまで観ると、なんかほのぼのとした気持ちになってしまうのだなぁ。
ぼくの大好きなカンフーは出ないし、銃も撃たないし、おっぱいも出ないし、ゾンビも出て来ないし、血も出ないが、DVD買ってもいいかもと思うくらい心に深く響いた。ズタズタになったぼくを充分に癒してくれたぞ!ゼロ年代でも重要な作品だと断言していい!全ての人におすすめだ!あういぇ。
- 出版社/メーカー: クロックワークス
- 発売日: 2007/03/23
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