オカルト?気のせい??ビートルズリマスターの世界

99年に発売されたそのアルバムは衝撃的だった。

録音されてるのは60年代の音なのだが、聞こえてくるのはクリーンなパキっとした音だった。さらにコンピューターを使って当時録音されたトラックを分解し、もう一度きめ細かい設定をしなおしてステレオに振り分けた。このことで右と左にハッキリと分離されてた音像に一体感が出た。このリミックス作業には賛否両論あったが、まったく新しい音楽としてぼくの耳にすっと馴染んできたのだった。

そのアルバムとはビートルズの『イエロー・サブマリン ソングトラック』である。

その後に発売された『レット・イット・ビー…ネイキッド』も同じ手法で作られたアルバムだ。こちらは当時問題になったコピーコントロールCDでの発売だったが、ぼくはそれでもクリアでパキっとした音になってることに感動した。実際、コピーコントロールCDじゃないヤツで聴くともっともっと良い音なのかもしれないが、リミックスしたビートルズのアルバムってこんなに音がよくなるもんなんだという感動が薄れることはなく、今でも良く聞くのはこの2枚だ。実際ぼくがあまり聴いてなかったビートルズのアルバムは『イエロー・サブマリン』と『レット・イット・ビー』だったりするんだけど*1

さて、そんな中、音質を良い状態にして企画盤を出してきたビートルズがついに全アルバムをリマスターするというニュースが去年飛び込んできた。今まで培って来た技術を投入してさぞ良い物になるだろうと、とても楽しみにしていた。買おう買おうと迷っていた時に、職場の後輩から、このリマスター盤がもうレンタルまで開始されていることを聴かされたので、それでやっとこないだ6枚ほどレンタルしてきたのだった。

んで、聞いてみたのだが…

もちろん音質がぐっと上がっているのは聴いて分かる。特にボーカルのクリアな音はすごい。ジョンやポールってこんなにうまかったかとより感じられるような音だ。ベースもうなりをあげてるのがよく分かるし、それぞれの楽器が粒立ってるのは誰が聴いても明らかなところだろう。『Wild Honey Pie』なんていう小品ですら、ものすごく良い音で鳴り響いてきて、ちょっと笑ってしまったくらいである。

だが、良くはなっているのだが……期待しすぎたのか、それともリミックス盤に慣れ過ぎてしまったのか、正直な感想を書くと「ま、こんなもんかな」という感じである。今回のリマスターはCGで派手に作りなおした『スターウォーズ』や『E.T.』の特別編ではなくて、ホントに地味に修復しただけの『ブレードランナー ファイナルカット』と言えばいいだろうか。

ブックレットにも何も書いてなかったのでよく分からないのだけれど、恐らく、オリジナルアルバムというところで、ホントにテープからノイズや傷みたいなものを除去して、マスタリングしなおしただけなのだろう。何度聴き比べても、音がよく聞こえるのはやっぱりリミックスを施した『イエロー・サブマリン ソングトラック』なのだ。だからホントにホントに良い仕事をしているのだけれど、それが良い仕事をしすぎたというか…

というか、これが例のオカルト(オーディオカルト)というヤツだろうか――――いやいや、オカルトって発売されたCDにはそこまで出て来ないだろ!?!?その前に音が良く聞こえないオカルトって何だよ!?!?せめて、いやぁすげぇいい音だね!やっぱり!っていうオカルトにしてくれ!!

しかも、これまたオカルトなのか分からないけど、アルバム、いや、曲によって良く聞こえたり聞こえなかったりするのがハッキリしている。これもリマスターしたおかげでその差が分かるようになったのだろうか――――『アビイ・ロード』や『サージェント・ペパー』『リボルバー』はそこまで音がよくなってる感じじゃなかったりしたんだけどなぁ……や、やっぱり気のせいですか??

それでも、やっぱり音数の少ないアルバムはやっぱり粒立ってるのがハッキリ分かる。特に『ラバー・ソウル』は全体的にピシッと仕立て直したような音になっている。

ぶっちゃけ以前のCDを持ってるんであれば、よほどのマニアじゃない限り買わなくてもいいかもしれない…だって、普通の人ってそんなに音がいいとか悪いとか気にしてなくない?まぁぼくもそうだけど。もちろん持ってない人は圧倒的にリマスター盤を買う方をおすすめする。あういぇ。

ラバー・ソウル

ラバー・ソウル

*1:前者は映画のサントラなのでB面がインストの曲、後者はビートルズの意志と無関係に出たようなところがあるので