粋で悲しい『かもめ食堂』

昨日は久しぶりにアナハイマーキッチンに行き、ハヤシライスを喰らった。前回はビーフカレーを喰らって、めちゃくちゃうまかったのだけれど、ハヤシライスも完璧だった。素晴らしい。

前回同様映画の話をして、ぼくがゾンビ映画とか人体が破壊される映画が好きだと話すとマスターが

「そう言えば、そんなカトキチくんにピッタリの海外ドラマがあるよぉ」

と言いながら、おもむろにポータブルDVDプレイヤーを引っ張り出してきた。飯を喰いに来ただけなのだが、ぼくはコーヒーを飲みながら店の隅で、なんとそのドラマを見たのだった。

まだ、レンタルなど開始されてないらしく、なんかの雑誌の付録として1話だけ付いてきたものらしいのだが、これがすごくおもしろかった。まず始まりがすごい。飛行機に乗っていたら、その飛行機が乱気流かなんかに巻き込まれてしまうのだけれど、そんな中で一人の乗客がカバンから注射器を取り出し、自分の体によーわからんものを注射する。その様子を見たスチュワーデスさんが、その人を止めようと近づくと、その人の肉体がなんとドロドロに解け始めるではないか!!悲鳴をあげるスチュワーデスさんだが、今度はその男の口から得体の知れないゲロ的なものが出て来て、それが体に付着すると今度はスチュワーデスさんが解け始める!見た目は完全にインディジョーンズのあのシーンなのだけれど、そこでカットが変わって、FBIの調査シーンになる。先ほどの飛行機が着陸したのだが、様子が変だという。なんでも、その飛行機は全自動操縦で、見事着陸したのだが、捜査官が中に入ると、全員が飛行機の近くで嘔吐したのだそうだ。主人公らしき女性捜査官が飛行機に意を決して入ると……飛行機の中は解けた人間の肉片と残された骨まみれ!!パイロットから乗客の全員がただの肉の塊と骨だけになっているのである。ギャー。

という、強烈なシーンで幕を開けるドラマなのだが、制作はあのJ・J・エイブラムス。気になる終わり方でおもしろそうだなぁと思ったのだが、えーっと、そのドラマのタイトルなんだっけ……わ、忘れちゃった。てへっ。

あと『ビリーバット』の2巻を読ませてもらった。うーん、どうなるんだろう。

夜は職場の後輩を呼んで、ホントにおいしい日本酒を飲ませたりした。

昼に、後輩は帰宅し、飯を喰らいながら『かもめ食堂』鑑賞。

フィンランドにある「かもめ食堂」を舞台に、そこに集まって来る人々の悲喜こもごもを描いた日本映画だが、これが大変素晴らしい作品だった。

最近日本映画を見て思うのは、無理矢理ハリウッドに近づけようとする映画が多いなぁということだ。別に銃が出て来たり、車が爆破しなくても、劔岳という山を登るだけで充分なスペクタクルになるように、日本独自のものを突き詰めて行ってもいいと思う。

かもめ食堂』は舞台こそフィンランドだが、やはり日本映画でしかあり得ない独特の空気感と繊細さがある。ホントになんとも説明のしようがない作品だが、妙なアングルから活写される日常、何気ないセリフや行動がキッチリ伏線になっている脚本、小林聡美片桐はいりもたいまさこという絶妙なキャスティングの妙、映像と完璧にマッチした音楽、エンディングテーマの『クレイジーラブ』まで完璧で、このキャストとスタッフが再び組んだ『めがね』も見たいなぁと素直に思ってしまった。

かもめ食堂』で一番感動したのはやはり料理絡みのシーンである。日本人ならグッと来るようなセレクトで、見終わったら間違いなく豚のしょうが焼きが喰いたくなること必至だし、おにぎりを作って食べるシーンなんかは無駄なセリフが1つもないのに不思議な感動を生む。小さいエピソードが淡々と展開されていくが、そういう日常の積み重ねこそ人生であるというような雰囲気が軽妙なタッチで描かれていてよかった。

というわけで、深い感動も無いし、クスッと笑うような緩い映画だったが、非常におすすめ。これから『クレイジーラブ』を聴きながら、おまじないをかけてコーヒーでもいれようと思うのであった。もう影響されてやがるぜ、あういぇ。

かもめ食堂 [DVD]

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GOLDEN BEST

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