ハッキリ言おう!オレは『サヨナライツカ』が大嫌いだ!!


『サヨナライツカ』鑑賞。

自分の働いてる会社に好青年というあだ名をつけられ、野球をさせればホームランをぶちかまし、仕事させれば難しい契約をいとも簡単に取り付けてくるようなスーパーマンが居たとする。当然会社にいる女の子には絵に書いたようにキャーキャー言われ、さらに男たちからも尊敬される。それだけじゃない、彼には誰もが羨む美人の奥さんもいて、結婚式は間近だ。彼が発する言葉は少なく、おもしろいことなど一つも言わないのに、たちまち人気者になり、今までいろんな男をふってきた百戦錬磨の女ですら、彼の虜になってしまう。

恐らく彼は誰からも嫌われないだろう、彼の悪口を言うだけで逆に非難を浴びそうだ。ところがあいにくぼくという人間はこういうヤツが大嫌いなのである。

というわけでハッキリ言わせてもらおう、オレ『サヨナライツカ』大嫌い!良い悪いとか別にしても、嫌い!とにかく嫌いだ!

今言ったように人間としてまったく魅力的でない男の不倫の話で、始まって10分くらいして、「あ、オレこの映画大嫌いだわ」と思ったが、その印象はずーっと拭えず、むしろ嫌い度は増すばかりであった。世間から好青年と言われる男だと!?そんなもん、裏表がありそうで逆にイヤだわ!!ボケ!つーか、実際に裏表があって、その男は異様に性欲旺盛という奇妙な設定なのである!貞操を守る奥さん役の石田ひかりとヤリたくてしょうがないシーンとかあって、そんな時に「好青年だと思ったのに全然違うじゃない!」とか言われる始末だ。

そんな性欲旺盛で美人な奥さんもいる男がタイに赴任することになった。そこにセックスの匂いがムンムンの女が現れて、何も言わなくても「私とヤラない?」オーラを出しまくる。そりゃ浮気もするわなという感じ。なので、基本的にやってることは大したことじゃないんだけど、登場人物がまるでポエムを朗読するかのごとく、反吐が出そうな言葉を呟くので、なんかこう、不倫を大恋愛というか、美しいものとして描いてやがんの!!それが気持ち悪くてねぇ!!もう観ちゃおれんよ!まったく!!

いろいろ言いたいことはあるが、まず、主人公の奥さん。何してる人なのか、まーったく説明がない。冒頭で家がデカイということは出て来るし、貞操を守ってるようなので、金持ちのお嬢様であることは間違いないんだけど、誰なのかホントに分からない。お前は誰なんだ!!

中山美穂も超が付くほどの大金持ちであることはある程度分かる、なんつってもスイートルームを我が家のようにしてるのだから、ところが25年後にそのホテルに行くと、中山美穂はそこで働いているのである。えー!!

西島秀俊はマギーと中学からの付き合いらしい。マギーは「今までこいつにオレの女を取られて来たんだよ」と紹介する。もちろんオレの女というのは冗談で、いわゆる学校のマドンナ的な女はこいつがかっさらうという意味合いで言ったんだと思うが、ごめん、オレはそんなヤツとは仲良くなりたくないんだよ!!

西島秀俊には後に息子が2人出来るのだが、1人は学年トップを取るような優等生で、もう1人はバンドをやってミュージシャンを目指している。その息子は親父と仲違いして家を出たらしいのだが、定期的に母親には連絡を入れているようだ。かつて息子が居た部屋にはピンクフロイドやボブマーリーなど、ロックバンドのポスターが壁一面に貼られている、ベタっすねー。そして、息子は小さなライブハウスでライブをするのだが、そこに母親ともう1人の息子が来ていて、しかもステージ上から母親にアイコンタクトまでする始末。結局仲良し家族ー!!!しかもそこで演奏されるのは、ボブマーリーばりのレゲエ!!ボブマーリー伏線だった!!&レゲエって!!

しかも中山美穂西島秀俊は一度別れるのだけれど、その理由がすごい。「キミは濡れなくなったし、ボクは勃たなくなった、ただの肉の塊にしか思えない」うそーん!!

別れてから25年後になると、本人が老け役になってるだけなので、メイクなどで老けさせても声がめちゃくちゃ若く、そのメイクも良く出来てないために、同年代の人が横に並ぶと嘘くささ丸出し。というか、25年後のシーンはホントに酷過ぎるのだが、もうここに書ききれないわ!

『サヨナライツカ』の最大の問題点は主人公に試練が訪れないというところだ。不倫が同僚にバレてもまったく問題無し、奥さんが日本からタイに乗り込んで来て、中山美穂と直接対決するのだが(つーか何処で居場所とか調べたんだよ!)、ここもさらっと話し合うだけで、中山美穂は全然その奥さんと張り合おうとしない。中山美穂との情事に溺れて、会社を休みがちになるのだが、それもあまり問題視されてない感じだ。社会的な制裁もないまま彼らは不倫を楽しみ、ちょっとした思い出みたいになるのはどういうことだ!?!?

文句は尽きないが、西島秀俊のいつもの感情の振り幅が見えない演技は『ニンゲン合格』以来ハマってたように思う。こう見えてもぼくは西島秀俊が好きなのだ。そして中山美穂はさすがの演技と存在感でブランクをまったく感じさせない。主人公の親友役のマギーも芸達者で、西島秀俊よりも演技のうまさを見せつけてくれる。

というわけで、他にもいろいろあった気はするが、あまりに酷過ぎるので思い出したくない。ただ、お客さんはめちゃくちゃ入ってた。な、なぜだー!なぜなんだー!!やっぱり辻仁成って、人気あるんだよ、オレみたいな人間が嫌いって言ったところで、オレがブーブー文句言われるだけなのさ……

ただ、何十年にも渡ってすれ違い続ける恋愛大河ドラマならば、こっちよりも香港映画の『ラブソング』をおすすめしたい、あっちの方が何倍も泣けるわ!あういぇ。