やはり世界はジャッキー的なアクションを待っている

『アルティメット』の1と2をDVDにて鑑賞。

リュック・ベッソン制作・脚本の映画には何度も苦渋を飲まされてきたし、そのクレジットを見るだけで訝しげな目になってしまうが、『アルティメット』はジャッキー好きにはたまらないド級のアクション映画だった。

実はベッソンという男は『AKIRA』や『攻殻機動隊』などの日本製アニメが大好きだし、カンフー映画にも目がない。それを彼なりに表現したのが『フィフス・エレメント』だったわけだが、今回、カンフー映画への想いと『AKIRA』っぽさみたいなものが絶妙にブレンドされた作品を観た気がした。

『アルティメット』ではカンフーだけでなく、さらにパルクールアクション*1にも挑戦している。教えてくれた人が「『YAMAKASHI』のストーリーがある版」と言ってたが、確かにそれも納得。バンリュー13という犯罪者だけを隔離したスラム街を舞台に、そこで暮らす男とデカが大暴れするというストーリーだが、その設定だからこそ、今回のアクションは活きてるような気がした。それこそジャッキー映画のフォロワーというか、世界は未だにジャッキーを求めているという具合に、走って飛んだり跳ねたりを繰り返す。特に2では『プロジェクトA』の自転車チェイスを自転車無しバージョンでやってるような楽しい追っかけっこを見せてくれる。

ダニー・ザ・ドッグ』や『トランスポーター』なんかは香港映画のショーケースになってたが、それはあくまで香港のスタッフや役者を呼び寄せてのこと。確かにチャカチャカしたカット割りやモーションがギュインギュインなるタイトルは一回りしてダサい気もするし、もういい加減ヒップホップやデジロックが鳴る中での格闘はやめようぜーと言いたくなるが、フランス人だけで固めたこの手のアクションは観たことがなかったので、とても感動を覚えた。タイ映画にも負けてないじゃないか!

それでも、やはり気になるのは脚本である。特に1のストーリーはなかなか酷い。バンリュー13に潜入するため、犯罪者を装って、デカが脱獄するんだけど、いきなり主人公にあっさりと見破られる。極秘に潜入するはずだったのだが、デカが主人公に身分と今起こってる事態を説明すると、主人公は極秘潜入する相手にいきなり電話をかける。「なんでだ!?」と主人公に詰め寄るデカだが、その理由が「ヤツの得意なカードで勝負した方がいい」とのこと。ということは、最初から主人公を釈放して、状況を説明し、主人公に協力してもらうようにしてから電話すればよかったのであって、つまり、この映画はのっけから無駄なシーンだらけなのである。

その取引も無茶苦茶で、ボスは明らかにヤリ手じゃない感じだ。なんせ、ボスが取引をしくじっただけで、あっさりと部下に裏切られて殺されてしまうのである。

そこからは思ってもない展開になっていく――――いや、思ってもない展開でもない。結構予想出来てしまう範囲だ。

2になるとヒネリが効いてて、まだマシになるのだが、それでも、ずさんなところはずさんで、それが無ければオールドな風格と真新しさが融合したとんでもない傑作になるはずだった…

それでも、90分以内でこのおもしろさは認めるところ。もうCGまみれのヌルいアクションはダサくなる。ジャッキーが作り上げた芸術的なパルクールアクションが帰って来るぞ!あういぇ!

*1:ジャッキーみたいに飛んだり跳ねたり、壁をよじ登ったりするヤツ、そうやって書くと長いし、パルクールの方がかっちょよいので、便宜上そう書かせていただく