やっとこさ『ザ・ミッション/非情の掟』を観た

『ザ・ミッション/非情の掟』をやっとDVDにて鑑賞。

実はぼくがジョニー・トー作品を意識したのはとても遅い。いや、実は『ヒーロー・ネバー・ダイ』と『暗戦/デッド・エンド』を観ていたのだけれど、それがジョニー・トー作品と思わず、気づいたのは大分後になってからだった。

そしたら『エグザイル/絆』が新潟でも公開されるということで、そのために予習として『ブレイキング・ニュース』を観たんだけど、これがとてつもない作品だった。冒頭に長回しで大銃撃戦があって、その後もノンストップで展開していくアクションのつるべ打ちにノックアウト。食事で交流を深めるシーンもとても印象的で、個性的。ロシアやハリウッドでリメイクされるのも納得だと思った。

さらにその後に観た『エグザイル/絆』がゼロ年代を代表する大傑作だった。そのへんのことは以前書いたこちらを読んでいただければなと。

2009年のベスト1は『エグザイル/絆』で決まりだろう。 - くりごはんが嫌い

なので、よろっと『ザ・ミッション』も観なければと思って、観たのだが、これがやはり素晴らしい。低予算で80分しかないのにもかかわらず、無駄を削ぎ落として、シャープに仕上げた傑作だった。

ボスの護衛をすることになったギャングたちの緊張感に満ちた日常を描いた作品なのだが、その展開たるや、予定調和が一切なく、一体、いつ、何が起きるのかさっぱり予測が付かない。これは登場人物と同じ緊迫感を観ている観客も味わうことになる。そこに唐突な緩和が現れることで、その後の緊張を引き立たせる。つまり、これこそが黒社会の日常であり、この世界に身を置く男の宿命なのだ。

役者の持ち味を活かした演技は一級品。基本的にセリフがほぼないため、キャラクターが何を考えてるのかはすべて役者の表情や動きで全て表現される。役者の演技を信じ切ってる演出だと思われるが、クライマックスでの主要三人の演技は特筆すべきで、そのまんま彼らが『エグザイル/絆』に使われたのも作品の内容を考えると納得である。

ぼく自身、この作品でおもしろいと思ったのは、銃の存在だ。

ボスを移動中から護衛することが彼らの仕事なため、用意周到な敵に対して、こちらは拳銃一丁だけ。スナイパーで襲って来たり、大人数で待ち構えていても彼らは少ない人数と拳銃だけで戦わなければならない。この銃撃戦はジョン・ウーのように2丁拳銃で横っ飛びスローなんてことは一切ないので手に汗握ること必至。しかもその銃一つ一つが各キャラクターの個性になってるというところもおもしろい。ガンマニアならば観ただけで興奮するだろうが、もちろん銃の知識がなくてもDVDの特典でそれは解説されているので、安心である。

監督や役者は『七人の侍』をリスペクトしていると語ったが、『ザ・ミッション』に一番近い作品は『ソナチネ』だろう。突っ立ったまま唐突に始まる銃撃戦や、セリフの少なさ、ストーリーに関係ない遊びのシーンなど、類似点は多い。特に紙クズを蹴り合うシーンは、『ザ・ミッション』の中でもかなり印象的に使われており、『ソナチネ』の紙相撲や花火のシーンを彷彿とさせる。

個人的には『エグザイル/絆』の方が芸術性と娯楽性を共存させて、さらに映画記憶を逆行させるという部分において優れていると思うが、『ザ・ミッション』も観れる環境ならば、絶対に観て損はない作品だった。やっぱり『フルタイム・キラー』とかもちゃんと観ておかないとなぁ、あういぇ。

エグザイル/絆 プレミアム・エディション [DVD]

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