新潟では一週間限定上映!『バッド・ルーテナント』

バッド・ルーテナント』鑑賞。新潟では一週間限定上映。

っていうか、一週間限定上映ってナメてんだろ、完全に。ツタヤのレンタルかってんだ!バカヤロー!マザファカ!おかげで同じ一週間限定のアンジェイ・ワイダ監督『カティンの森』観れないじゃんかよ!ちなみにぼくの中でアンジェイ・ワイダはもう死んだ人になってたのだ。だから、新作がやってくると聞いて、ま、まだ生きてたのか!?とそっちで驚いてしまったのである。ごめんなさい。ホントにごめんなさい。ケツ喰らいます。

んで、なんだったっけ?あ、そうそう『バッド・ルーテナント

マリファナ所持の女二人に対し、「逮捕するぞ」と脅して、「見逃してやるかわりに、おい、そっちのお前、ケツを出せ、早く出せ」とケツを出させ、もう一人に「お前はフェラする時のマネをしろ!違う!もっと本気でやれ!」と強要し、本人はそれを見ながらオナニーをするという強烈なシーンがあったりするハーベイ・カイテル主演の『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』のリメイク作。

オリジナルは悪と赦しについてのお話で、ハーベイ・カイテル演じる刑事はやりたい放題のとてつもなく悪いヤツなのだが、やりたい放題やってる間に、尼さんが教会で若者数人にレイプされるという衝撃的な事件が起きる。カソリックである彼はどうしてもその犯人を許すことが出来ず、事件を追う。ラストの展開が観客の予想を裏切り、唐突なエンディングも相まって、今観ても、その衝撃性みたいなものは色あせることはない。

このレイプの現場の絵の作り方なんてさいこーだ。

今書いたように、刑事が悪いことをしまくる映画なのだが、リメイク版では、麻薬でラリってる刑事以外共通点はあまりなく、ニコラス・ケイジのハイテンションなラリラリ演技がとにかく素晴らしい。それだけでも見る価値は充分にある。

証拠品で持って来た麻薬をそのままもらって、ガンガン吸って、売人を取っ捕まえてはヤクを奪って、ガンガン吸って、マリファナを楽しんでるカップルを捕まえては、マリファナをその場で吸いながら、女とガンガンやって――――とやりたい放題。ギャンブルに手を出し、借金を作って、今度は返済のために自分が追ってた殺人事件の容疑者と手を組んでドラッグの取引までする。自ら手を出すことはないが、人が死んでも、屁とも思ってない節すらある*1

ただ『バッド・ルーテナント』がおもしろいのは、主人公には「これくらいは別にそこまで悪いことじゃなくね?」という妙な線引きがあるというところ。基本的には善行も率先してする男で、善悪の線引きは個人個人で全然違うもんなんだなというのを思い知らされる。

というより、そのグレーゾーンの間で右往左往するのが我々であって、これは実はとてもリアルな作品でもあるのだ。そのリアルな人物描写は徹底的なオーバーアクトによるものであって、この辺の演出もとてもおもしろい。

ニコラス・ケイジは当然のごとく、破滅に向かってまっしぐらなのだが、徹底的に悪いこともしているヤツなのに、反して良いこともしているため、ピンチを迎えると、観客はどういうわけか「頑張れ」と彼を応援してしまう。これはハーベイ・カイテルの『バッド・ルーテナント』でも同様な描写があった。カイテルはセックスに狂ってて、3Pもするのに、とても家族想いなのである。

しかも『バッド・ルーテナント』はとにかくオチがすごい!!ある意味でこちらを裏切る展開になっていき、クライマックスがとんでもなく、ある意味でハリウッド的な終わり方なんだけど、それ自体が、アンチハリウッドな構造になってるというとても鋭い批評性に満ちた作品で、このオチにぼくはアルトマンの『ザ・プレイヤー』をみた。

というわけで、なんで限定一週間上映なんだよ!と憤慨しているのだが、ニコラス・ケイジが出てるんでしょってナメた態度で構えてる方には是非おすすめしたい大傑作。舞台設定も共演者も最低だから輝いてる映画となっております。あういぇ。

*1:これは麻薬でラリってるからかもしれないが