もうオレ人間嫌い!エビになりたい!『第9地区』

第9地区』鑑賞。

すごい!ぶったまげた!おもしろかった!最高だ!もうオレ人間嫌い!エビでいいよ!エビになりたい!あの腕とエイリアン銃くれ!すぐにくれ!

これは全世界の不安を凝縮した『トゥモロー・ワールド』や、9.11と怪獣映画を結びつけた『クローバー・フィールド』に並ぶ傑作と言って差し支えないかもしれない。というか、映画を4つくらいのブロックに分けたら同じところに入るだろう。

アパルトヘイトの問題をエイリアンと地球人の関係に置き換えて、それをフェイクドキュメンタリーで簡単に説明する出だしからSFの体裁を借りた現実的な物語であることが分かる。しかもここは主人公を演じたシャールト・コプリーの軽妙な演技もあいまって、かなり笑わせてくれる。ボンクラそうな風貌の職員を集めたことも評価すべきだろう。巧みな編集も相まって、前半はドキュメンタリーとして、とてもおもしろいモノに仕上がってる。というか、かつて立ち退きを命じられるエイリアンの姿を映し出すSF映画があっただろうか。エイリアンといえば、人間を襲う強いものというイメージがあるが、ここでは虐げられてスラム化した場所に押し込められているマイノリティなのである。

醜い姿形をした「エビ」と呼ばれるエイリアンだが、その姿以上の行為でさらに嫌悪感を増幅させる。いきなりカメラの前でゲロ吐いたり、小便したりとやりたい放題。しまいにゃ、主人公もカメラの前でゲーゲー吐きまくったりして、それを執拗に写したりと、一体何が始まるんだ!?と思ってしまう。

フェイクドキュメンタリーなのに、何で当事者にしか分からない視点が出て来るの?とか、防犯カメラの視点はドキュメンタリーの一部なの?何なの?とか、よく分からないところも無くはないが*1、説明不足の部分も含め、基本的にマクガフィンを使ったプロットはオーソドックス。

ただ『第9地区』は、あれよあれよと映画のトーンが変わり、最終的には人間花火が乱れ飛ぶ、大殺戮グランギニョールへと変貌する。肉片がビチャーン!腕がすっ飛んでドーン!大砲がボガーン!宇宙船がズガガガーン!

しかも、ラブストーリーでもあるし、家族愛もあるし、バディムービーでもあるし、ここぞってところでアイアンマンみたいになるし、まぁ、一本の映画の中に様々な要素がギッシリ詰まっていて、これだけでお腹いっぱいになることは必至だ。

というわけで『第9地区』をこれから観ようと思ってる方はなるべくあらすじなどを知らない状態で行った方がいい。後半の激しすぎる展開で前半のリアリティは消し飛ぶが、もう映画的体験とはこういうことだよな!ということの見本みたいで、最高にアガる!『ターミネーター4』や『トランスフォーマー/リベンジ』を観て、もうちょっとなんだよなぁと思った方!とにかくおすすめ。おすすめ以外の何者でもない。あういぇ。

*1:というか、これってもしかしたら、主人公の人生を実際の映像と再現VTRで構成した番組っていうていなのか?