暴力に取り憑かれたイカレヤローが死体を妄想しまくる『シャッターアイランド』

第9地区』の興奮覚めやらない中、今日は朝の9時半から『シャッターアイランド』鑑賞。

精神を病んだ凶悪な犯罪者だけが収容される孤島の刑務所にディカプリオ演じる連邦保安官がやってくる。なんとここから一人の女性が跡形もなく消えたというのだ。彼は戦争で理不尽な人殺しを経験し、放火で妻を亡くしたアル中で、その妻を殺した犯人を探すという名目もあって、この失踪事件の捜査に志願するというのがあらすじ。

周りは崖っぷちで島を出る手段は定期的に出るフェリーのみ、出て来る登場人物は全員いかがわしく、さらに事件に関わってる人間も精神を病んだ犯罪者とハナから狂いに狂っており、さらにディカプリオの精神状態がその狂った現実と重なっていき、ストーリーはあれよあれよと自分が予測する方に進んで行く。オチも途中からだんだんと見えて来て(というか、そういう風に演出している)、結局、劇中にヒントが隠されていますとかいうイントロダクションはちっとも意味がなく、謎がどうのこうのというのもまったく関係がなかったので、その方面を期待してる人は完全に肩すかしを喰らったことだろう。

ところが、この『シャッターアイランド』はダメなのかと言われるとそんなことはまったくなく、むしろ傑作で、スコセッシは『グッドフェローズ』以降ちっとも老けてはいないことを証明してくれる。円熟味がプラスされ、若々しさと味わい深さが同居していて『カジノ』以降のスコセッシ作品だったら、恐らく最高傑作と言ってもいいだろう。

シャッターアイランド』は一言でいうと『シャイニング』を『グッドフェローズ』のテンションで撮影してしまったというような作品で、カメラは絶えず動き続け、止まったかと思うとアングルに凝り、さらにカット割りがものすごく早くリズミカルで、映画がちっとも立ち止まってくれない。しかも、凝りに凝った衣装と美術が画面を見事なまでに構築し、風格も漂う。

しかも、『シャッターアイランド』は亡き妻のことを妄想して抱きしめると、その妻から血が溢れてきたり、兵隊を一列に並ばせて銃で大虐殺したり、顔面の皮がビロビロに剥がれてそこから血がドロドロ流れたり、凍った死体が急に話しかけてきたり、血まみれの女の子が湖に浮かべられていたりと、死体と血しぶきの一大グランギニョールで、「神は暴力を好み、それに応える人間は暴力をふるうのだ」みたいなちょーかっちょいいセリフまで出て来て、謎が謎をまったく呼ばないオチを補って余りある魅力に溢れている。

ディカプリオをはじめ、役者は全員テンションが高い演技でファック!ファック!と言いまくっていて、精神病院側の人間は常に静かだけども、内に何かを秘めてるようなイヤな目つきをしてたりと、まともな人間が一人も出て来ない!

というわけで、暴力に取り憑かれたイカレヤローが死体を妄想しまくる『シャッターアイランド』はスコセッシらしさに溢れていておすすめ。特に『ディパーテッド』が最高だ!という方には間違いなく傑作になり得ると思われる。あういぇ。

そういやぁ、戸田奈津子が翻訳していて、「ゾンビ」って単語が出て来たんだけど、よく聞いてたら「ゾンビ」って言ってなくない?

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