思い出はプライスレス『トイ・ストーリー3』

トイ・ストーリー3』を2Dの吹替版という、一番よろしくないと思われてる方法で鑑賞。

熱狂的なファンを持つ作品なので、早くも感想が出尽くしてる感が漂いまくってるのだが、それにしても、強力な完成度を持った作品である。極端な破綻が見当たらない。映画のおもしろさを五角形のグラフにしたら、見事に均等な五角形を描くのではないだろうか。ウイスキーで言ったら、クセがほとんどないホワイト&マッカイのような完璧さである。故に『ボルト』のように、「これだ!」という飛び抜けたところがないのも事実だが、それは好みの問題なので、ここまでの品質保持にはやはり恐れ入る。有名な映画サイトRotten Tomatoesで満足度99%という異常な数値も納得の傑作だと思う。

作品で主人公が成長すると共に作品自体も成長しているし、それぞれのキャラクターがどういう特技/設定を持っていたか?というのをちゃんとストーリーに組み込んでハラハラさせるし、何よりも不可抗力によって、家から遠く離れてしまったおもちゃたちが家まで戻る「だけ」という話なのに、ここまで人を深く感動させることがすごい。さらに一難さってまた一難という見せ場の数、最後の最後に待ち構えるミッションインポッシブルな脱出劇、そしてほんの少ししか登場しないキャラクターたちにも様々なドラマがあり、絶対にこちらを飽きさせてはくれない。


特にぼくが『トイ・ストーリー3』で好きなのはロッツオというキャラクターだ。

序盤、成長した主人公に必要とされてないことを悟ったおもちゃ達が新たに遊んでもらうための場所として、サニーサイド保育園を選ぶのだが、ロッツォはこの保育園のおもちゃ達を仕切っている村長のようなキャラクターで、見た目も非常にかわいらしく、優しさの塊のような良い人として登場する。

特に序盤、バズがとある理由でピンチになった時も、ロッツォはその立ち振る舞いで、作品に一瞬の緩和をもたらしてくれる。そう一瞬の……

ネタバレになるので詳しくは書かないが、ぼくはこういうロッツォのようなキャラクターが非常に好きである。映画の中では悪いこともしているが、自分なりの筋の通し方みたいなものをきっちり持っており、これは『もののけ姫』でタタラ場を仕切ってるエボシ御前を彷彿とさせる。彼女がそうであったように、最後の最後まで、ぼくにとってロッツォはどうも憎めないキャラクターなのだ。

特にロッツォの過去を語るシーンでは涙が止まらず……

というか基本的に後半のほとんどは、涙腺が破壊されて前が見えませぬ!!おもちゃで人を泣かすんじゃない!ばかやどー!

子供は成長し、いつまでもおもちゃで遊んではくれない。新しいおもちゃが出たら迷わず買い、飽きたら遊ばない。ただ、そのおもちゃで遊んだことはふとした時に思い出として記憶に残る。まさに思い出はプライスレスなのだ。そういう物語への決着のつけ方にもしびれた。必見だ!あういぇ。