映画ってのは基本的に好き/嫌いだけで語られることがしばしばあって、それは論じてるわけではなく、ただの感想なのだけれど、映画はそこに映ってるものがすべてであって、基本的に自分の感性とは違う部分が出たとしても、そこも含めてこの映画はどうだったか?と語るのがとても重要なのだとぼくは思っている。
だからぼくは他の人の映画のブログなんかを読み終わったあとに「この映画がどういう映画かは分かった。んで、結局のところこれを書いた人はこの映画のことがおもしろかったんだろうか?」という風に感じる文章が非常に好みだ。ぼくもなるべくならそういう風にして映画のことをしゃべくりたいと思っているし、映画に関してはなるべく情報をシャットアウトしてから観たいというのがあるので、ネタバレなしで、これはこういう映画なんだよというふうに書くのがぼくのこのブログでのスタンスである。
だから、ぼくは――――あくまでぼくはなんだけど、「予告編と違うからこの映画はダメ」とか、「この登場人物に感情移入出来ないからこの映画はダメ」とか、「主人公が魅力的じゃないからダメ」という風に映画を切り捨てることが基本的には出来ない。
もちろん、料理と一緒でお客さんの前に出したら、その料理はお客さんのものなので、おいしいかまずいかはお客さんが判断して構わないと思うし、全然アリなんだけど、ぼくにはそれが出来ないというだけの話だ。だからラーメンなんか食べたとしても、「おいしいとは思うけど、オレ自身は魚貝系のスープが苦手だから、それが好きだったら、食べてみてもいいんじゃない?」みたいなフワッとした感想になってしまう。ただ、うまいかまずいかというのは人によって違うわけだから、そういう感想だとしてもいいじゃないかとひらきなおったりもしているのだ。実際、うまいかまずいかをハッキリ言うブログの方が圧倒的に多かったりするし。
さて、そんなことをふまえた上で『借りぐらしのアリエッティ』
オレ、この映画嫌い!
他者、というよりも、生物学的にまるで違う者同士が種族を越えて繋がり合うというのは宮崎駿らしいテーマであるし、いかにも田舎の方にある昔ながらのお屋敷が出て来るところや、おいしそうな喰い物が出て来るというところも、森の描写も、もっと言えば主人公アリエッティのキャラクターや造形など、いたるところに宮崎駿の刻印が押されている物語であると思う。
実際、初めて“借り”に行くシーンは楽しく観たし、緑を基調に、アリエッティの服を赤くするなど、一枚一枚の絵はハッキリ言って悪くはない。確かに冒頭にクライマックスが来てしまうことで、そこからインパクトはなくなるし、後半にフワっとした冒険があるくらいで、盛り上がりには一切欠けるが、これはこれで映画としてはアリなのだと思う。そこにケチをつけるつもりはまったくない。
ただ、これ一言で映画を説明すると「汚れを知らない純粋無垢なガキ二人が親のいうことも聞かずに身勝手な行動をして、それが元となって様々なトラブルが巻き起こる」というストーリーで、ぼくはその主人公二人の行動に終始イライラしてしまった。さらにアリエッティは物語の中で決定的な反省を一回しかしておらず、「自分たちがこんな目にあったのはあんたが余計なことをしたからよ!」と逆ギレまでしだす始末――――ゆ、ゆるせねぇ。
つまり、これどういうことかというと、最終的に観終わって思うのは「子供は親の言うことをしっかり聞かないと、ホントにホントにヒドい目にあう時があるんだよ」っていう教訓だけであって、逆に言うと子供の潜在意識の中にそれを植え付けるにはピッタリの物語なわけだ。
年々子供を虐待する親が増えているこの昨今で、相談件数はなんと四万件を越えている。相談件数だけでこの数なのだから、実際の数はもっともっとあるだろう。基本的に虐待をしてしまうのは、子供がいうことを聞いてくれないことにイライラしてしまうことが原因だと言われている。というか、スッキリでその筋の専門家が言ってた。
というわけで、親のいうことを素直に聞いてくれない子供に対して、説教ではなく、映画を通してそれを教えることが出来ればこれほど良いことはない。そういう観点からいけば『借りぐらしのアリエッティ』は、いうことを聞かない子供に、いうことを聞かないとどうなるかを教えるには最適な映画だと言える。「アリエッティの家族みたいになっちゃうぞー」なんていうのもいいんじゃないだろうか、正直、映画としては退屈なところもあるし、あまり好きではないのだが、子供のいる家族にはホントにおすすめだ!
ただ、オレは嫌いだけどな!!!あういぇ。

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