バラバラの個性の中で光る“Surf's Up”

前回のエントリでビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』についてちらっと触れたので、今日は『サンフラワー』と『サーフズ・アップ』の話。

Sunflower / Surf's Up

Sunflower / Surf's Up

前から聴こう聴こうと思ってたんだけど、レンタルがなかったこともあって、ずっと聴きたいなぁ止まりだったんだけど、ここ最近ビーチ・ボーイズ熱が高まったうえに、iTunesでこの二枚がワンセットで売られてたのを見てしまって思わずダウンロード。お盆中ということもあって、軽く感想を書きます。

ハッキリ言ってしまうと『サンフラワー』も『サーフズ・アップ』も『ペット・サウンズ』に比べれば楽曲に統一感がまったくないが、その楽曲の統一感の無さとアレンジの一体感が見事にアルバムの個性となって光り輝いてるようなアルバムで。ビートルズで言えば『ホワイト・アルバム』を彷彿とさせた。

その理由はブライアン・ウィルソン以外のメンバーが積極的に楽曲を作り出したことにあった。実際『Tears In the Morning』や『Disney Girls (1957)』はまったくビーチ・ボーイズらしくないが、とても優れた良い曲である。

ただ、確かに他のメンバーが作った楽曲も素晴らしいが、村上春樹が『意味がなければスイングはない』で指摘しているように、ブライアン・ウィルソンの楽曲はやはりずば抜けて美しく、その方向性の違いがハッキリ見えてくる。特に『スマイル』に収録するはずだった『Surf's Up』はその中でも飛び抜けて素晴らしい。これぞブライアン、これぞ『ペット・サウンズ』からの流れという曲で、これを『サーフズ・アップ』に収録するのを渋ったというのはよく分かる。構成はプログレで、美しいコーラスワークを主体にしたアレンジは他の追随を許さない境地に達していると言ってもいいだろう。というか、この曲だけがホントに異常に浮いていて、二枚セットになったものを最初から通して聞くと、最後の最後にものすごい光を放つ楽曲に巡り会えるというような構成になっていて、この曲のために、二枚セットにして売ったのかと思ってしまうくらい素晴らしかった。

というわけで、ビーチ・ボーイズに興味がある人以外にまったく知名度がないアルバムだが、個人的に『サーフズ・アップ』はジャケットのアートワークも含め、かなり好きなアルバムだと言える。ここまで来たらとっとと『スマイル』も買って聞いてしまおうと思うのであった。あういぇ。

サーフズ・アップ

サーフズ・アップ

↑これがビーチ・ボーイズのアルバムとは誰も思わないよねぇ。