今日からアメリカの子供はジャケットを脱ぐ『ベスト・キッド』
『ベスト・キッド』鑑賞。お盆も過ぎて、平日だというのにすさまじく人が入っていて驚いた。
映画が終わってロビーに行ったら、ヒルクライムもどきのにーちゃんが電話してて「今、ジャッキーの映画観てた。やべぇっしょ、アレ観ないとやべぇっしょ」と言ってたが、まぁこの一言に尽きると思う。
ヒット作のリメイクという下地があったにしても、東洋人と黒人のコンビで作られた『ラッシュアワー』以降の「白人が主演してない王道ハリウッド映画」では飛び切りの快作として素直に賛辞を送りたい。ましてや今回は舞台が北京であり、いじめられるジェイデンくんがカンフーを覚えて戦うというアメリカっぽさがまったく見当たらない作品である。それなのにも関わらずこれが大ヒットになったということは、カンフー修行映画という特殊なジャンルと役者ジャッキー・チェンが本格的に認められた証拠だろう。ウィル・スミスの親ばかから始まった企画だと思うのだが、それが起こしたミラクルはぼくらの想像を越えた。まずその事実に目が潤む。
さらにジャッキー・チェンは元々ブルース・リーとは正反対のコミカルな演技でブレイクした次世代のカンフースターだ。『ラッシュアワー』でもそのキャラクターを踏襲し、ハリウッドでも絶対的な地位を築いた。そのジャッキーがジャッキーらしさを捨て、わけありの師匠ハンをシリアスに演じたのだが「ジャッキーが師匠役?まだちょっとだけ早いんじゃないの?しかも笑わせる要素もなしで」と懐疑的になっていたあの時のぼくを全力で殴りたい。なぜならあのハンという役に見事な説得力を与えたのは彼の圧倒的な演技力に他ならないからだ。
ほぼオリジナルの『ベスト・キッド』に忠実だが映画は驚くほどカンフーしている。そもそもカンフーを精神論から学ばせ、ジャケットを脱ぐという日常の動作がその基本になっているというシーンを驚くほど執拗に描いたことは圧倒的に正しい。それら細かい修行シーンのおかげで映画は140分という長尺になったが、ジェイデン&ジャッキーの師弟コンビの妙と中国人ヒロインとのやりとりが楽しく、まったく飽きさせない。
そして、ジャッキー本人が『蛇拳』や『酔拳』でやってきた“師匠の教えを弟子が発展させ、それで最大の敵を倒す”というお決まりごとが本作では大ラストに意外な形で登場する。オリジナルでは「鶴の型」として出て来る例のあのシーンである。とある有名な映画評論家は「ここにガッカリした」と書いていたが、ぼくはまったく真逆で、元々カポエイラを習っていて、さらにダンスが得意だという伏線と師匠ハンの「水はおだやかで鏡のようになる」という教えと過去のカンフー修行映画のそれが見事に結びついた名シーンだという風に感じた。
確かに演出は仰々しく、音楽の使い方ももうちょっとなんとかならんかったかと思わなくもないが、映画は王道中の王道なのでこれはこれでいいだろう。いじめられっこに囲まれたジェイデンを助けるシーンから「気ってフォース?じゃあ、ハンがヨーダで、ぼくはジェダイだね!」というやりとり、そして白い例の服を渡された時の「すごい!ブルース・リーみたいだ!」など、カンフー映画好きには号泣必至シーンの連打で前が見えない。さいこー!ちょーさいこー!100点満点中、500点。文句無しにおもしろい!必見だ!あういぇ。
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