三池×天願の狂ったフレーバーもたっぷり!『十三人の刺客』

十三人の刺客』鑑賞。

オリジナルはかなり前に観ていて、最近再見したので、あらすじは割愛させていただいて。

十三人のしかーく! - くりごはんが嫌い


監督三池崇史、脚本天願大介の『オーディション』コンビだったので、ある程度出来は予測していたのだが、いやぁその予想以上の作品に仕上がっていた。三池監督は『オーディション』の時も「脚本に書かれてる通り忠実に撮った」と言っていたが、今作もそうだと思われる。何故かというと、いつもの三池監督らしい暴走は極力抑えめになっており、かなり手堅く演出されていたからだ。例えるならサム・ライミが『シンプル・プラン』を撮りあげた印象がある。

まず映像の重厚さに驚く。照明は最低限で室内の映像でも顔に影が出来るくらい暗い。当然夜のシーンはロウソクの灯りに照らされるだけと徹底している。最近の時代劇の画面の明るさに嫌気がさしているところだったので、この映像の時点でかなりの好感を持った。

映像は重厚で手堅い演出と書いたが、それでもにじみ出るオリジナリティがある。それはやはり残虐描写だ。特に松平斉韶絡みのシーンはオリジナルにはまったくなかった描写を多々加えることで、「もうこいつ殺すしかないだろう」ということを思わせるのが強くなっている。手足を切り落とされた女は『オーディション』での大杉蓮を彷彿とさせたし、首に刀が突き刺さったり、切腹のシーンを執拗に見せつけたり、生首がゴロゴロ転がり、血がブシュブシュ出てるところなんかは天願大介と三池監督のタッチが見事に融合していて、古き良き時代のスプラッター時代劇を彷彿とさせる。

それだけじゃなく、おかまを掘るシーンと、最終的にずっこけるようなオチが待ってるのだが、この二つに関しては三池監督の唯一の面目躍如といったところだろう。

オリジナルでは30分におよぶクライマックスシーンだが、今回は仕掛けも派手になっており、人を斬る量も見せ場も増えた。故に時間は2時間20分という長尺だが、一つも飽きるシーンがない。クライマックスでのカオスっぷりはなくなり、一人一人にスポットを当てるような描き方をしていたが、それはそれでよかった。

役者達も非常にいい味を出していて、役所広司はさすがだと思ったり、エキセントリックな伊勢谷友介これまでで一番よかったし、稲垣吾郎はこのままこういう無表情の極悪人を演じて欲しいと思った。特に松方弘樹がホントに素晴らしい。眼力と殺陣の切れ味は十三人の中で一番だったかもしれない。

というわけで、なんやよーわからん時代劇が量産されていたが、もう『GOEMON』とか『TAJOMARU』とか撮ったバカにこれを観せたい。今年は『必死剣鳥刺し』なんていう傑作もあったが、『サムライ・シネマ・キャンペーン』ということで他の時代劇はどんな仕上がりになってるのか楽しみである。あういぇ。