遅ればせながら『PLUTO』を読んだ。

遅ればせながら『PLUTO』を全巻読破した。

なぜ遅れたかというと、このマンガは絶対にブックオフで全巻105円で揃えてやる!と心に決めていたためである。ガソリン代やその他もろもろを考えればとっくに350円のコーナーで買いそろえてもよかったのだが、もはやマンガを一冊105円で揃えるというのは趣味の領域になっているので、その探してるという行為そのものが楽しかったりするのである。

PLUTO』は『鉄腕アトム』のワンエピソードである『地上最大のロボット』を浦沢直樹がリメイクした作品であるというのはかなり有名な話なので手短にいうと、人間とロボットが共存するようになった時代に世界各地で超セレブ(セレブというのは本来セレブリティの略であって、有名人の意味である)な高性能ロボットが殺害されるところから話は始まる。その不可解な事件に何かを感じ取った高性能刑事ロボットのゲジヒトが事件を追うのだが、そのゲジヒトをあざ笑うかのように次から次へと世界各地のロボが殺されていく……

派手さのない暗澹とした世界観とその展開から連想するのはずばり『ウォッチメン』である。超高性能ロボットがさらに高性能な何かに殺されてるというところから、もしかしたら地球を揺るがす何かが起こってるのかもしれないと少しだけ思わせといて、メインプロットは超高性能ロボット一体/一体のバックボーンに焦点を当てドラマを紡ぎ出していく。この辺も『ウォッチメン』にかなり近いものがある。ラスト、とある事情で世界に終わりが訪れてしまうっ!………なんてところも『ウォッチメン』に近い。ロボットの物語なのにかなり残虐的な描写も多く、不気味な怖さもあって、確かに『鉄腕アトム』が原作だとはいわれない限り気付かないだろう。ミステリー仕立てにしたのも大正解で、視点を変えるとこんなにもおもしろくなるのかと改めてリメイクのおもしろさにも気付かされた。特に一巻の能密度がハンパじゃなく、このテンションで全巻進んでいったら『MONSTER』を越えていくかもなぁと思った。


以下、ネタバレ含む。


だが、ハッキリと「おもしろい!」と言えるのは6巻までで、やはりメインキャラクターであるゲジヒトが殺されてからはかなり単調になる。それもそのはずで、原作でゲジヒトが殺されてるのは分かり切っているため、残り二巻は普通の『鉄腕アトム』になるのである。

しかも本来ならば一巻ですべてが終わる物語なのに、終わりに二巻もかけているのだ。誰がどう読んでも引き延ばしにかかってるのは明らかである。特に8巻がすごくて、アトムが壊れかけたロボットに会うのに一話まるまる使ったり、ゲジヒトの奥さんに会って話をするだけで一話使ったり、とにかく長く長く感じてしまうのだ。

あと現代を反映させてるという意味でイラク戦争を下敷きにしているというのはよく分かるのだが、それが果たして正解だったのか!?とも思った。

人間が作り出してしまった大量破壊兵器に「憎しみ」という感情がインプットされたことによって発動し世界の終わりをまねくというのは分かるのだが、そのスケールのでかさみたいなものが仇になったような気もする。原作のラストでキモとなる「ロボットの本来あるべき姿」というのが前半のドラマパート(特にノース2号のくだり)で出尽くしてしまっているために、原作にあった、プルートウが最後に見せるロボットの本来あるべき姿が『PLUTO』では完全になくなってしまったのだ。原作ではそれにくわえて軽いドンデン返しもあって皮肉めいた終わり方もするのだが、その辺のオチが決まってないのは致命的とも言えるのではないだろうか。というかあの回想とかいるのか!?ホントにいるのか!?

ただ、やはり6巻までだったら他とは一線を画す優れたマンガであるのは間違いない。6巻まで読んだら最後の最後は『鉄腕アトム』に切り替えることをおすすめしたい。それほど手塚先生が提示したラストは完璧だったと思いますよ、あういぇ。

PLUTO (プルートウ) 全8巻完結セット (ビッグコミックス)

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PLUTO 1 (1) 【豪華版】 ビッグコミックススペシャル

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↑原作がセットになってるヤツ。おすすめ。