隠し砦のファンボーイズ

結構前にハイビジョンで放送された『ファンボーイズ』をやっとこさ鑑賞。

スター・ウォーズ エピソード1』の公開を半年後に控えた98年が舞台。筋金入りのスター・ウォーズファンであるライナスは末期ガンにより余命3ヶ月を宣告されていた。彼の仲間達は封切り前のスター・ウォーズを見せようと、ライナスを連れ、映画を製作しているスカイウォーカーランチに潜入しようと旅に出る。果たして彼らは無事にライナスにスター・ウォーズを見せることが出来るのか!という話。

行き過ぎたファンの暴走が起こす奇跡ということでゼメキスの『抱きしめたい』を彷彿とさせる作品だが、誰それを引き連れながら、次から次に襲って来る難関をあの手この手で突破するという意味で実は『ファンボーイズ』は『隠し砦の三悪人』と似ている(と言っても全員がボンクラなのでかなり運に助けられてるところも)。タランティーノよろしくのオタ話をふんだんに取り入れ、いちげんさんお断りの空気を醸し出すが、そこに余命いくばくもない男と仲違いした友人、ラブストーリー、一期一会の出会いなどが重なりあって、コメディながらも実に深みのある味わいに。そのせいか、ふかくにもクライマックスで大泣きしてしまった。

特に余命いくばくもないという、日本で大流行中の難病モノ的設定を使いながらも、泣かせようとする演出は1nanoも見当たらないところがホントに素晴らしい。もうすぐ死ぬヤツがここにいるとは到底思えない底抜けの明るさがある。もしこの話を日本でやると、必ず病床にふせるシーンなんかが出て来て、仰々しく泣きのメロディが流れてきて、うんざりおなかいぱーい!となるところなのだが、それをやるのはアホらしいと言わんばかりに真逆のことをやる。逆に底抜けに明るいからこそ、こいつのためになんとかしてやろうという友人達の心意気が際立ち、泣かせる演出をしなくても泣けるのである。個人的にあのクライマックスは『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストに匹敵する屈指の名シーンになった。

それにしても、日本人の泣きたい病みたいのはどこから来るのだろう。そんなに映画を観て泣きたいのだろうか。ただ、映画で泣けるというのは、演出によってではなく、物語や登場人物の心情などをこちらが読み取ったり、それにシンクロして泣けるのであって、近年よく見受けられる「ここ泣くところですよぉ」演出は個人的にどうも好きではない。実はそれは映画に泣いてるのではなく、演出で泣かされてるだけのことなのである。

ファンボーイズ』を見るとホントに日本とアメリカの映画に対するスタンスが違うんだなぁと思い知らされる。むしろ日本の難病モノに対して中指をおっ立ててる感じがして小気味良い。アメリカ人はなんでも笑い飛ばせや!みたいな精神がどこかにあるのかもしれない。

最後の最後で待ってるオチに全世界の『スター・ウォーズ』ファンは身につまされることになるだろう。その内容から飛び道具と思われがちだろうが、ホントに細部までしっかり練られて作られてる上出来の娯楽作。『スター・ウォーズ』全作品観てる人は絶対に必見である。あういぇ。